2025年度、クマ被害の死者は12人に上り、過去最多だった2023年度の倍となっています。
こうした中、10月30日、政府は環境省など8省庁によるクマ対策の関係閣僚会議を初めて開催。
環境省は対策の1つとして、狩猟免許や専門的な知識を持つ自治体職員「ガバメントハンター」の育成を進めるといいます。
「ガバメントハンター」のメリット
『サン!シャイン』取材班が向かったのは、全国に先駆け「ガバメントハンター」が活動しているという長野・小諸市。
 
ガバメントハンターで、農林課職員の櫻井優祐さん(40)に同行させてもらいました。
この日は、動物に畑が踏み荒らされた地域に出動。
 
――何かの足跡?
ガバメントハンター 櫻井優祐さん:
そうですね、大型の獣の足跡なんですけども。
栗なんかも落ちていたりするので、食べに山林から出てきたり…。
足跡を確認すると、山林に分け入り、その周辺を調査。
わなを設置する免許を持つ櫻井さん。慣れた様子で設置作業を進めていきます。
 
ガバメントハンター 櫻井優祐さん:
今ハンターはご高齢の方も本業をお持ちの方も多くいらっしゃいますので、少しでも手間を省けることができればと。お役に立つことができればという形で現場等の調査もさせていただいている。
 
元々は事務職員として採用されたという櫻井さん。約10年前に狩猟免許を取得し、地元の猟友会で活動しているということで、市の野生鳥獣対策を担うことになりました。
去年、小諸市内にある生ゴミを一時保管する倉庫にクマが現れた際の映像。
 
クマを捕獲するため倉庫の横にわなを設置しましたが、わなに入る様子はありません。
そこで櫻井さんが「より大きいサイズの罠」への変更を提案。
 
すると、その13時間後…再び現れたクマがわなに入り、捕獲に成功しました。
これまでなら2日ぐらいかかっていたというわなの交換ですが、ガバメントハンターの櫻井さんがいることで猟友会との連携がスムーズになったといいます。
 
ガバメントハンター 櫻井優祐さん:
私もいち猟友会員ですし、いちハンターですので、同じ立場で仕事ができる、捕獲をお願いしていける。そういう部分のやり取り・調整・つなぎ役っていうものに関しては、大きいメリットがあるのではないかと思っています。
地元の猟友会の会長も…。
 
小諸市猟友会 市川誠会長:
対応を専門職員がして、現場視察または防護柵の設置とか。こちらが現場に出向かなくてもやってもらえるし、かなりプラスになったと思います。
 
9月から緊急銃猟制度が施行され、住宅街などにクマが出没した際に自治体の判断で発砲が可能になりましたが、その場合にもメリットが。
ガバメントハンターが現場に向かうことで、発砲が必要かどうか、スピーディーな判断が可能になり、責任の所在も明確になるといいます。
 
ガバメントハンター 櫻井優祐さん:
やはり重要になってくるのは(猟友会などの)ハンターとの連携だと思っています。ここの部分をこうした立場を持っている職員が関わることで、潤滑油のように調整を図っていけるのではないか、そういう役割があるのではないかと思っています。
秋田県へ自衛隊派遣
クマ対策として自衛隊派遣の動きもあります。
 
30日に行われた関係閣僚会議で小泉防衛相は、秋田県が要望したクマの捕獲支援に関する自衛隊の派遣について報告。自衛隊が秋田駐屯地で県や猟友会とともに箱わなに関する訓練を実施したことを明らかにしました。
谷原章介キャスター:
これまで自衛隊はクマの駆除のための派遣を想定に入れたりはしていたんですか?
 
元陸上自衛官 元防衛大臣政務官 佐藤正久氏:
ほとんどないです。過去にそういう派遣ということは1件くらいはありましたけども、訓練はしていない。
今回は、秋田県の状況が自治体の限界を超えたということだと思うんです。秋田県の鈴木健太知事は元陸上自衛官で、イラク派遣にも行った非常に優秀な方なんです。自衛隊は便利屋ではないということを十分分かった上で、今回、自衛隊の方に国に要請したってことは緊急性があると。
 
「クマ対策への本気度がうかがえる」と話題になっているのが、小泉防衛相がSNSに投稿した、自衛官が秋田県庁に訪れた様子の写真。
そこに写る自衛官は、“自衛隊約7000人の№2”青森・岩手・秋田の防衛を担当する陸上自衛隊第9師団・副師団長、“秋田駐屯地№1”司令・1等陸佐です。
佐藤正久氏:
最初の県の方との調整に秋田のトップだけではなく秋田・青森・岩手を管轄する7000人の部隊の№2の陸将補が来たり。東北6県を管轄する仙台の方からも昔で言う大佐、1等陸佐が来るという異例中の異例だと思います。
それだけ緊急性が高いという部分と、やっぱり隊員も不安ですから、隊員の命も守らなきゃいけないという部分もあって高官が行って調整をすると。加えて、秋田県だけでなく、今後、周辺の県の方にも広がる可能性がありますから、そういうことも踏まえながら高官が行ったということだと思います。
自衛隊は銃を携帯せず
 
今回、自衛隊は銃を携帯しないということですが、この理由について佐藤氏は「猟友会の銃で駆除を行う方向で調整したとみられる。銃を携帯せずに地方に派遣され支援することは自衛隊法『100条』に当てはまる」といいます。
 
谷原キャスター:
自衛隊がクマを銃で直接駆除するというのは何個もハードルがあるんですか?
佐藤正久氏:
自衛隊の一番の任務は国の守りですから。それに影響しない範囲で自衛隊が出るというときは3つの要件といわれます。「緊急性」・「公共性」・自衛隊じゃないといけない「非代替性」。これを考えたときに、今のレベルでは自衛隊じゃなくても対応できると。ただ、本当に猟友会の方々は非常に疲弊しています。わなを仕掛けるだけでも人手がいりますし、個体を輸送する部分でも重たいと。これから冬になりますから、そうなるとスノーモービルで個体を運ぶということもできますから。とりあえず側面支援と。状況が進めば、私は隊員の命を守る意味でも国民の命を守る意味でも、災害派遣という形で武器の使用という部分を検討すべきだと思います。
(『サン!シャイン』2025年10月31日放送より)

 
       
       
           
           
        
       
        
       
        
       
        
       
        
       
        
       
        
       
        
       
        
      