衝撃設定にもファンタジーとして成立させてしまう骨格がちゃんと残っている!

と、ここまで、どう見てもどう読んでも、興奮冷めやらぬ状態で、落ち着け!な僕ですが、実は、ホントのところ、このドラマ見てる最中はというと…「ほっこり」でしかなかったのです(結局)。

今こうして振り返って、このドラマを俯瞰(ふかん)してみれば、ツッコミトランス状態で、何から何まで引っかかりしかない、ただのうるさい興奮テレビウォッチャーでしかないのですが、ホントに、なぜだか、このドラマ、見てる最中は?っていうと、「ほっこり」でしかなく、何もかもがハートウォーミングで収まってしまう、超絶謎ドラマなのです。

そんな奇跡ともいえる不思議を実現させてしまったのは、土ドラの良心『さくらの親子丼』シリーズを手がけた、清水有生先生の筆致にほかなりません。

このドラマには、圧倒的なファンタジーと対になるように、老若男女問わない現代描写の圧倒的リアリティが存在していて、とんでもない設定が組み込まれていたとしても、「ありえない」とはならない。衝撃設定にもファンタジーとして成立させてしまう骨格がちゃんと残っているのです。で、リアリティが圧倒的な分、ファンタジーもより強調されて、いまだかつてない視聴感を味わわせてくれるのです。

そして、要介護のご老人たちが夜な夜な集まるスナック…という、ともすればとてつもなく生々しくなってしまう物語を、圧倒的な包容力でもって、これは大人のファンタジー!と、決して強引ではなく、あくまでも丸~く、包み込んでくれる、主演・宮崎美子さんという存在。そのチャーミングさで、その声色で、すべてを「ほっこり」に変換してしまう、僕らに不思議なマジックをかけてくれるのです。

見る前と、見始めて数分は、このドラマの世界観に困惑…なんだけど、中盤以降は、どう話が転ぶかわからない興味深いエピソードの数々に引き込まれてしまって、邪念どころか、その真逆の感情、ハートウォーミングに支配されていること間違いなし。

もちろん、3月の特別編を見ていなくてもちゃんとわかる安心設計(だけど、特別編も珠玉のエピソードだよ)。このドラマは、死を目の前にしたご老人たちのアイロニーやブラックジョークではなく、今をどう生きるか?という希望を、今の若い人たちにもしっかりと伝えてくれる、人生賛歌!!極めるところまできた「土ドラ」でしか成立しない、いや成立させてくれない、唯一無二のドラマ、誕生です。