劇団の演出家・久部三成(くべ・みつなり/菅田)、ダンサーの倖田リカ(こうだ・りか/二階堂)、放送作家の蓬莱省吾(ほうらい・しょうご/神木)、そして巫女(みこ)の江頭樹里(えがしら・じゅり/浜辺)といった、4人のメインキャストは“主演級”の人気俳優が集まっています。
菅田将暉の座長ぶりは?豪華なセットを背景に豪華な俳優陣が大集合!
――菅田さんをはじめとする、メインキャスト4人のキャスティングについて教えてください。
最初に三谷さんとお会いした時に、「僕のドラマのイメージがありますので、喫茶店にお越しください」と言われ、喫茶店に行くと、とても大きなクロッキー帳を持ってきてくださいました。
その中には、今思えば物語の舞台となる「八分坂」の地図や、どこに劇場があるかなど、最終的な設定とは少し違っていたものの、11話分のタイトルや出演者の名前がすでにリスト化されていて、香盤表のように「この場面でこの人はいなくなります」「この回はこのテーマです」といったことが一目で分かるようにまとめられていました。
「菅田さんで連ドラを考えたい」という三谷さんの希望が出発点でした。その後、物語が進むにつれて、昭和の雰囲気が必要だったり、クレバーで主役を翻弄するキャラクター像が求められたりしました。また、ダンスシーンが多く登場するため、ダンスが美しく踊れる方が良いということで、二階堂さんにご相談しました。

――メインキャスト4人が演じる役柄の印象や、実際の演技を見て驚いたことを教えてください。
菅田さんが演じるクベが自分の好き勝手に色んな話をするところって、今60代〜70代の方にいらっしゃると思うんですよね。彼らが若者だったのはちょうどドラマの舞台の頃なわけで、80年代の若者を見事に演じていました。その下町感や、タバコを吸ってお酒を飲む姿がとても自然でした。
二階堂さんは、作品への造詣が深くアイデアも豊富で、髪型もご本人の発想から生まれました。パーマをかけるのに時間はかかりますが、忙しい中でじっと耐えてパーマを当てられていた姿が可愛かったです。あの特徴的な髪型がとても似合っていて素晴らしかったです。
神木さんは、クランクイン前に三谷さんから話を聞きたいと稽古場に来られ、緊張していた様子でしたが、蓬莱というキャラクターを見事に表現されていました。そのパーソナルな可愛らしさと演じる姿のギャップがとても印象的でした。

浜辺さんは、昭和の可愛い服を着こなし、お父さんとの雰囲気も良く、美しいのに自分の顔が崩れても気にせず、心から表現されている姿がとても素晴らしかったです。瞬発力やコメディのセンスもあり、これからどういう作品でまた違う表情を見せて下さるのか、楽しみです。
――現場の雰囲気はいかがでしたか?主演級のキャストが揃っている中での菅田さん座長ぶりは?
もちろん主役や看板を背負える方ばかりですが、役者というのはいろいろな役を経験してきているからこそ、主演級の方でも現場で自分の居場所をすぐに見つけていたように思います。
現場の雰囲気も、まるで劇団のようでした。現場では練習している人、ふざけている人、ご飯を食べている人、他の仕事から慌ただしく駆け込んでくる人など、さまざまな人がいて、その雰囲気も含めて、演劇と社会人の部活が混ざったような空気でした。

連続ドラマや一般的な台本だと、主役のセリフが圧倒的に多くて、2番手がそれに次ぐ、といった具合に番手とセリフ量が比例することが多いですが、三谷さんの台本は誰もがほぼ同じくらい話していて、菅田さんが出ていないシーンもありました。それが、実際の社会のようなリアルさにつながっていたのだと思います。
その場に人がいるライブ感があり、どの役者さんも「自分が言うことではない」と引っ込まず、楽屋でもみんな楽しく過ごしてくれたのではないかと思います。
菅田さんは、主役でありながらも年上の方々も多い中で、とても難しい立場だったと思います。それでも、いろいろな方に気さくに声をかけ、誰も楽屋に引きこもることがありませんでした。普通なら、ひとりになりたくて楽屋にこもる人もいるのですが、皆さんとしっかりコミュニケーションを取っていました。
私にも「前室にこういうものがあるといいんだけど」と皆の前ではなく、こっそり伝えてくれるなど、とても気配りのできる方でした。そのおかげもあって、現場はとても楽しく、和やかな雰囲気だったのだと思います。
――物語の舞台は1984年です。金城さんがまだ生まれる前、知らない時代を描いていますが、どのような印象を受けましたか?
やはり、当時はタバコをその辺で吸うことが普通で、今と比べるとモラルも少し低かったと思います。それに加えて、スマートフォンが存在しないため、声を出して呼びかけたり、直接やり取りしたりする必要があり、その様子がとてもクラシックだと感じられました。
また、舞台となる「八分坂」のネオンにも特徴があり、少し大人のワンダーランドのような雰囲気がありました。ラブホテルの光や、ビカビカしたネオンの感じは、まるで異世界に来てしまったような印象を受けました。現場見学に来た三谷さんも「これは大人のファンタジーだね」とおっしゃっていました。

――セットについても、菅田さんが「とても豪華だ」と語っていました。セットや世界観で特にこだわった部分はどこでしょうか。
オープンセットの設計図を最初に見たときには感動しました。ただ、監督や役者さんたちは「素晴らしい」と感動する一方で、プロデューサーとしては予算の面で不安になることもありましたが(笑)。
この作品は大きな意味でワンシチュエーションドラマなので、場所の変化が少ないんです。だからこそ、セットに手を抜くと飽きられてしまうのではないかと感じ、映像には多くの細かい要素を盛り込み、何度見ても飽きないように工夫しました。また、「坂」が主役のような部分もあるので、装飾にも力を入れました。美術さんにも細部までこだわってもらい、もっとアップで映してあげたかったくらい頑張ってもらったと思っています。
――ポスターには、そうそうたる24人のキャラクターが登場しています。金城さんの“推し”、あるいは、一番気になっているキャラクターは?
全員おすすめしたいのですが、特に気になっているのは、チケットもぎりの女の子・毛利里奈を演じる福井夏さんです。撮影の順番の都合でクランクインが遅れたのですが、そんな状況だと普通は、ベテランの方々に囲まれてとても緊張すると思います。しかも、毛利ちゃんは少し変わったキャラクターなので、いろいろなことにチャレンジしないと役が成立しません。監督から「もっとこうしてほしい」と言われたりしないか心配して見ていました。
しかし、福井さんは初日からしっかりキャラクターを作り上げてきて、そのお芝居に菅田さんや神木さんが自然と乗っかるかたちになり、演技の掛け合いがどんどん広がっていきました。本当に度胸のある俳優だと感じたので、ぜひ注目してご覧いただきたいです。
――最後に、物語が進む中で「注目してほしい」キャラクターを教えてください。
浜辺さん演じる樹里ちゃんですかね。実は、彼女の考え方などが少しずつ変わっていく過程が物語としっかり連動しているので、彼女を追いかけていくとドラマがまたとても楽しく見られるかなと思います。皆さん、ぜひリアルタイムでご覧ください。