――撮影の思い出や、感想を教えてください。
佐藤:クランクイン後、わりと早い段階で海に飛び出していったんですけど、最初は僕たちも、スタッフのみなさんも、チームとして集まったばかりのタイミングだから不安もあったと思うんですよね。
海上や、船内での撮影を経験している人も多くないですから、みんなでアイデア出し合って、「こうやったらよくなるかな」とか…そんな感じの撮影でした。
ちょっと手探りながらも、そのタイミングで海上での撮影という“山”を乗り越えられたことで、チームがギュッとひとつになれた気がしたので。あの経験がすごくいい影響を与えてくれてるんじゃないかなと思っています。
撮影は、デイシーンの時間も限られていて、すごく大変でした。僕たちが船に乗って、その横を、撮影カメラを乗せた船が並走して。それを何回も撮り直すこともありますし、ドローンもバンバン飛ばして撮影して。
それで、僕はシゲと違って酔いやすいタイプですし(苦笑)。

加藤:でも、酔ってないですよね?
佐藤:いや、3日連続で朝から日が暮れるまでやったとき。陸に戻ったら“ぐらんぐらん”で。丘酔いしちゃって。
加藤:降りてから揺れるんですよね。
佐藤:めちゃくちゃ揺れるんですよ。家に帰ってもずっと揺れてるんで、もう諦めて寝る。次の日になるとまた復活するんですけど。
加藤:でも、またすぐ船に乗りますからね(笑)。
佐藤:それでまた揺れるんです(苦笑)。そういった大変さもありました。
山下美月 ドラマの撮影で自ら船を操縦「事故を起こしたら…」
加藤:隆太さんが演じる碇は、アクションもあるし、かなり大変でしたね。
(暑さが厳しい)なかでも、お互いに水を飲むように気遣いあって、この夏を乗り切ろう、みたいな結束力がありました。それからなんと言っても、山下さんが…。
佐藤:いや、それよ!
加藤:(一級)船舶免許取られて。
佐藤:ちょっとびっくりしました。
山下:本当ですか?(撮影で船の操縦ができて)すごく楽しかったです。
加藤:最初は操縦するのを怖がっていたけど。
山下:こんなに有名な人たちを乗せるなんて…。
佐藤:「こんなに有名な人たち」って共演者が言うセリフかね(笑)。
山下:撮影で、実際に乗っているキャストは2、3人でも、スタッフさん含めて30人弱がいらっしゃって。船長さんが操縦するシーンも、私が操縦するシーンもありましたが、ここで事故を起こしたら、私は一生これを背負っていかなきゃいけないな、と。
広い海でも、波に飲まれてしまうということもありますから、怖かったのですが、すごく貴重な経験をさせていただいたな、と思いました。
実は私も船酔いするタイプなんですが、今回は平気でした。

佐藤:驚いたのは、基本的には船長さんが操縦してくださって、映像的に必要なときだけ山下さんが操縦するのかと思っていたら…(スタッフが)「では、山下さんお願いしまーす」みたいな感じで。
加藤:そうそう!途中からは軽い感じでしたよね(笑)。
佐藤:見事に操縦するものだから、もう当たり前のようになっちゃって。それくらい頼りがいがあります。
山下:生きて帰って来られてよかったです(笑)。
――山下さんはいつごろから船舶免許取得の準備したのですか?
山下:この作品のお話を聞いたのがクランクインの2ヵ月前で、そのとき別のお仕事をさせていただいていたので、時間がないなぁって。…気づいたら、事務所にも言わずに、近くのハーバーに電話していました。
佐藤:えー!自分で?
山下:まだスタッフさんとも顔合わせをする前だったので、何をすればいいのかわからなくて。実際に海技職員に船舶免許が必要なわけではないのですが、とにかく船の勉強をしなきゃいけない、もう免許取んなきゃと思って、すぐにネットで調べました。
佐藤:すごい行動力。誰かに言われたわけじゃないもんね。
山下:誰にも頼まれてないです。スタッフさんもびっくりされていましたし、事務所の人たちも大慌てみたいな感じで(笑)。

加藤:しかも二級でいいじゃないですか。それを一級までとっているのが!
山下:撮影(クランクイン)のときはまだ(合否)結果はわからなかったのですが。それと、先月、車の免許も取りました。
佐藤:え!同時にやっていたの?
加藤:なんならちょっと船のほうが早くない?
山下:船のほうが先です(笑)。
佐藤:珍しいタイプだよね(笑)。
――免許取得で大変だったことはありますか?
山下:(試験などが)計算なんですよ。私は文系で、あまり数字に触れて来ていなくて。
加藤:分度器持ってたよね。
山下:三角定規とコンパスと。小学生ぶりに触ったような感覚で。数字を扱うのがすごく大変でした。操縦は1日か2日くらいでわりと安定して走行できるようになったんですけど。
でも、撮影で現場に行ってみたら、自分が練習していた小型船の3倍くらい大きな船でびっくりしました。それで、急に「じゃあ、操縦お願いします!」みたいになったので、「終わった…」と思いました(笑)。
――一級船舶免許があれば、世界一周もできるそうですが、野望はありますか?
佐藤:世界行っちゃう?
山下:世界一周ですか?…でも、船を買う前に車が欲しいです(笑)。
佐藤:車を買う前に船を買ったらなかなか熱いよね(笑)。
山下:でも、海外で操縦してみたいなという思いはあります。
佐藤&加藤:いいねぇ。
――ちなみに、お2人は撮影前に準備したことはありますか?
佐藤:僕たちは免許が必要ということはありませんでしたが、普段通り原作も含めて本を読んで、自分のキャラクターを繰り返し想像していくという感じです。
加藤:今回は、(クランクイン前にキャストが集まる)本読みがありましたもんね。最近、ない現場もありますけど。

佐藤:そう、(本読みがない現場が)増えたんですよね。久しぶりだったかも。
加藤:たぶん「本読みをやりたい」と隆太さんがおっしゃったんだと思いますが、僕もやりたかった。主要キャストが集まって本読みができたのは大きかったですね。
佐藤:よかったよね。あの日で、早くもいい空気だなと思えたので。みんなと一緒にチームとしてやっていけると思えて、すごく安心しましたね。
加藤:それぞれが(過去に)共演していることはあっても、このチームとしては初めてだから、それが一つにまとまり始めるというか、挨拶もできて、というのがまずよかったし。その後、立ち稽古もやれて、みんなでチームをつくろうみたいな雰囲気がよかったですね。