近年増加している、日本車を狙った窃盗事件。
去年2024年の1年間に全国で発生した自動車窃盗の被害は、6000件を超えています。

ここ数年、自動車業界を襲った半導体不足により世界的に新車の販売台数が減る一方、需要が高まっているのが中古車。
さらに増えているのが、日本車を盗み、海外へ違法に輸出するケースだといいます。
「ヤード」の悪用も

自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子氏:
盗難車をバラバラにすることもあるし、車体番号を張り替えて別の車として海外に送ったりもやっていますね。車の解体ってちゃんと許可を得ないとダメなんですけど、許可を得ずに解体している違法なヤードもたくさんあります。
浮かび上がってきたのは、海外輸出までの間に盗難車の保管や自動車の解体を無許可で行う“違法ヤード”の存在。

本来、ヤードは都道府県に許可を得た上で自動車の解体や保管などを行う作業場。
一部でそれが悪用されるケースが相次いでいるというのです。

『サン!シャイン』が取材したのは、盗まれた車と知りながら、保管した疑いが持たれているヤード。

8月28日、茨城・つくば市の中古車販売会社社長で、パキスタン国籍の男とその息子が逮捕されました。
実際に保管された盗難車を見ると、エンジンやタイヤが外されています。
高い塀で四方を囲まれたこのヤードについて近隣住民は…。
近隣住民:
活動していたのは夜7時くらいから深夜まで。
2カ月に1度の頻度でコンテナ車も見ました。
さらに、日本車の窃盗が後を絶たないもう一つの理由が…
“犯罪グループの組織化による手口の巧妙化”です。
巧妙化する手口

専門家によると、日本車窃盗の犯罪グループとして、トヨタの高級車を狙うグループ、旧型スポーツタイプを狙うグループ、外国人で構成されたグループなどが存在するといいます。

最近の自動車窃盗犯は、事前に現場の下見を行う調査役・実行役・運搬役・保管役・解体役・車体番号付け替えや書類の偽造などを行う偽造役・海外への流通役などの任務を細分化。
偽造役を含め、一部「ヤード」で行われるケースもあり、犯罪グループの組織化が進んでいるといいます。

車の窃盗の主な手口は…
2016年ごろ~「リレーアタック」
スマートキーから出る微弱な電波を特殊な機器で増幅させ解除する
※対策 キーに節電モードを搭載。電波を遮断するケースでキーを保管するなど
2018年ごろ~「CANインベーダー」
車に特殊な機器をつなぎ、バンパーやタイヤ付近などから制御システムに不正に侵入してドアの解錠やエンジンを始動させる
※対策 各メーカーがセキュリティーを強化

今まではバンパー部分などからシステムに進入されていましたが、対策が進んだため、今、助手席のドアに直接穴を開ける手口が急増しているといいます。
さらに、新たな手口として「キーエミュレーター(通称:ゲームボーイ)」という、車から出ている信号を利用し解除する機器を悪用するケースも出てきているといいます。
なぜ日本車が狙われているのか?加藤氏によると…

・安全性・機能性などの信頼度が高い
車検などで車の整備が行き届いていて故障が少ない。走行距離が短い
・海外からの需要が高い
中東地域など富裕層からの支持。悪路が多いアフリカでも人気で、経済制裁中のロシアからも需要が高い
・新車・中古車ともに入手が困難
半導体不足で生産が需要に追いついていない。中古車でも高騰し高値で取引も
有効な対策は?

犯人グループは、ストリートビューで事前に下見をし、盗む車を物色することも。
マンションよりも公道沿いの一軒家が狙われやすくなります。
さらに、下見の際に車を揺らして防犯ブザーが鳴るかなど、防犯システムをチェックしているといいます。
谷本有香氏:
公道沿いの一軒家は盗まれやすくもあるけれど見つかりやすくもあると思うんですよね。
監視カメラに何か不審なものが映ったら、近所も含めて警告が出るみたいなところも対策としてはありそうな気はします。
加藤久美子氏:
防犯カメラをつける方すごく多いんですけれども、下見に来てないかどうかをチェックするのに使ってほしいと私は思います。
カメラもWi-Fiタイプのものだと「ジャマー」といって妨害装置を持っている窃盗団も多いんですよね。なので、カメラがどこにあるかわからないようにつけるべきだと思います。
渡辺和洋アナウンサー:
カメラがあるからといって「盗まれない」ということではないということですね。

CANインベーダー対策としては、車の左側を狙われるということで、駐車時に左側の壁に寄せるのが有効。
セキュリティー専門店が扱う、セキュリティーアラームやハンドル・タイヤロックなど、国産防犯グッズの活用も有効な対策です。
加藤久美子氏:
ハンドルロックもすぐに切断されたり、ハンドルそのものを切断されることも多く、タイヤロックもつけたまま1回転すると破壊されるものが多いです。
なので、値段も高いですが、防盗性能の高いしっかりとしたもので対策をしていただきたいと思います。
(『サン!シャイン』2025年9月1日放送より)