近年増加傾向にある「警察をかたる詐欺電話」
被害の拡大に伴い警戒が高まる中、より複雑で巧妙な手口が登場、各地で被害が相次いでいます。

370万円の被害に遭った女性(30代): 
あ、何した私?本当に催眠術だったとしか思えない。
200万円と170万円、振り込みさせられました(2回の振り込みは)向こうからの指定でした。

「サン!シャイン」の取材に対してそう話すのは、実際に現金370万円をだまし取られたという女性。巧妙な手口で心理的に追い詰められたといいます。

女性がだまされた「劇場型詐欺」の登場人物は、警視庁と岐阜県警の警察官、そして検察官の3人。逮捕された詐欺事件の容疑者が、女性のカードを保持しているというストーリーでした。

370万円の被害にあった女性(30代):
「大きな事件で一部の人間しか知らない情報なので、秘密保持契約をしていただきます」と言われました。

代わる代わる人を変え、電話を続ける詐欺グループ。そのやりとりは、女性が最初に電話を取ってから一度も電話を切ることなく、約5時間半も続いたといいます。

370万円の被害に遭った女性(30代):
電話を取ってしまったら最後、洗脳されてしまうんだなと思いました。
「自分だけは大丈夫」と言う考えは、私もそう思っていましたが…、そういう考えをせずに気をつけてほしいなと思います。

警察庁によると、2025年1月から3月までの特殊詐欺の被害額は276億円にのぼり、そのうちの6割以上(被害額 約172億円)を、警察官をかたる詐欺が占めています。

なぜ「警察官」と名乗られると信じてしまうのか。明星大学心理学部の藤井靖教授は、その理由をこう話します。

明星大学心理学部 藤井靖教授:
いわゆる「アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)っていう、言葉があるんですけど、公務員とか警察官とか、行政の人だとかそういうふうなことをかたることによって、内容に何か無意識に信憑性が伴っているかのように思ってしまうっていう。

新たな3つの手口「誰でもだまされるという意識」

次々と変化する“ニセ警察官”による詐欺の手口。新しく発覚したものをいくつがご紹介します。

▼ニセ警察官詐欺 だましの手

これまでにもあったLINEなどのビデオ通話に誘導され、ニセの警察官がニセの警察手帳を出す手口や、ニセの逮捕状を出したりする行為に加えて、新たに「守秘義務誓約書」などの実在しない書類を見せられる手口があるといいます。

――全く存在しない書類でも、見せられたら信じてしまうのですか?
詐欺・悪徳商法ジャーナリスト 多田文明氏:

今までですと、電話で“耳でだます”ということが主流で、特に高齢者がだまされやすかったんですが、今はLINEなどを通じビデオ通話で書類なんかを見せて、だましてくるので信じてしまうと。これにより、詐欺に遭う人がより低年齢化していると。
LINEに誘導するときはわざと遠いところの警察官が電話をかけてきて、来られないならLINEでと誘導してきます。

▼スマホを送りつけられる

4月、高知市に住む80代の女性の家に、警視庁職員を名乗る男から、「あなたの名前が犯罪に利用されている」と電話が。
その後、連絡手段として女性の自宅にスマートフォンをが届き、そのスマホを使ったビデオ通話によるやり取りで、男は80代女性が証券会社に預けていた資産を解約し、銀行口座に移動させるよう指示したといいます。

このケースでは、証券会社の担当者が詐欺であることに気づき警察へ通報、未遂に終わりました。

詐欺・悪徳商法ジャーナリスト 多田文明氏:
基本的に(詐欺グループは)マニュアルに沿ってやっているので。
LINEのビデオ通話を通じてだますのと成功率が高いのですが、高齢者はスマホを持っていないので、じゃあどうするかということで、LINEが入ったスマホを送ってだますと。一手間かかっているように思えますが、このようなケースが今後増えてくるかなと。
(スマホまで)送られてきているから、これは自分の無実を証明しなくてはいけないと。よりだまされやすくなる可能性はあります。

▼「紙袋を置け」と指示

4月上旬、宮城県大河原町に住む70代の女性に、総務省職員を名乗る男から、「あなたの個人情報が漏れ、不正に携帯電話が契約されている」などと連絡がありました。

その後、警察官を名乗る男から電話があり、「詐欺グループが押収した物に女性名義の通帳が大量にあった。預金が犯罪収益か識別が必要」だと言って、紙袋に現金を入れて自宅敷地内の物置に入れておくよう指示します。
女性は指示に従い、4月24日、現金1400万円入りの「紙袋」を物置に置いたところ、何者かが持ち去ってしまいました。さらに、5月15日にも現金1700万円入りの「紙袋」を持ち去られたということです。

――お金を見て犯罪収益かの識別なんてできないですよね?
詐欺・悪徳商法ジャーナリスト 多田文明氏:

分からないですね。
なぜ指示に従ってしまうのか? 相手は警察だと思い込んでパニック状態に陥っていて、恐怖心も抱え、必死に無実を証明しようとしている。言われたことは冷静に考えればおかしいのですが、その辺が判断できないと。

スペシャルキャスター カズレーザー:
こういう手口に「我々ならだまされるわけない」というスタンスで報道をしてしまうと、もし巻き込まれた人がいたとして、笑いものになるのが嫌だから泣き寝入りする可能性が高くなるので、「本当に誰でもだまされる」と伝えた方がいいと思います。自分は(だまされるわけないと)みんなそう思うけど、そうではないと。

詐欺に遭わないために

では、詐欺被害に遭わないためにはどうしたらいいのか、警察庁によると以下のことに注意してください。

「本物の警察官」は…

・電話で「あなたは捜査対象です」とは伝えない
・メッセージアプリで連絡しない
・警察手帳や逮捕状の画像を送らない
・個人のスマートフォンに突然ビデオ電話しない

もし連絡があったらすぐに電話を切って、対面で最寄りの警察署に相談。もしくは、警察専用電話「#9110」に相談してください。

(『サン!シャイン』 2025年5月23日放送より)