二転三転した末に成立した2025年度予算。
大きな議論となったのが…「年収の壁」の見直しです。

国民民主党は所得税がかかりはじめる年収を103万円から178万円への引き上げを主張してきましたが、今回、引き上げ額は160万円で決着しました。
「年収の壁」が160円に引き上げられたことについて、街の人は…。

30代パート勤務:
どう働いていたらいいのかっていう…。
しれっと変わってるからもっと分かりやすくシンプルにしてほしいです。

30代パート勤務:
(一番気になるのは)お金。単純に多く稼げるみたいなフレーズは「おっ」ていう感じなんですけど。ただ、詳しいことがわからなくて、「ん?」みたいな。もっと分かりやすく解説してくれたらうれしいなと思います。
街の人が嘆く、「年収の壁」の複雑な仕組み。
今後は160万円まで働いて大丈夫なのか?実際、手取りは増えるのか?

『サン!シャイン』では、税制や年収の壁に詳しい、第一生命経済研究所の首席エコノミスト・熊野英生氏に解説していただきました。
年収の壁変更の影響は?
①学生アルバイト
まずは学生アルバイトに関する変更点。

これまで19歳~23歳未満の学生アルバイトは年収103万円まで親の税制優遇があり、それを超えると親の税制優遇がなくなるため学生の働き控えが起きていました。
今回変わったのはこの金額。

親の税制優遇の壁が年収103万円から150万円に。150万円を超えても、段階的に減少しますが、188万円までは親の税制優遇があるということになります。

MC 谷原章介:
103万円から壁が150万円まで動いたってことは1カ所で150万円以上働かない場合には親の扶養から外れない。ただ、複数カ所で150万円を超えたら引っかかるんですか?
学生の皆さんの働き方に結構影響出そうですかね?
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
そうですね。ただ、壁自体は上がっているのでもっと働けるようになったと。
あとは“壁”というのはそこを超えるといきなり親の方が控除を減らされていたんですけども、これが坂になっていったんですよ。だんだん下がっていく。
だから、壁を気にして働き控えというのはこれでかなり解消すると思いますね。
②パート主婦

「103万円の壁」は撤廃されましたが、パート主婦には、「106万円の壁」というものが存在します。51人以上の規模の企業で働く人は、年収106万円を超えると社会保険料の支払いが発生するためです。
熊野英生氏:
やっぱり次の壁があるので103万円を取っ払ったとしても、次の壁のところでやっぱり働き控えみたいなのが起こるんじゃないかということを警戒してしまいますね。

渡辺正行氏:
160という数字は何で出したの?
熊野英生氏:
それは税の壁で管轄が財務省なんですけども、106万円の方は厚生労働省なので、厚生労働省が新しい提案をしないと106万円の壁の方はなかなかなくならないと。
渡辺和洋アナウンサー:
106万円を意識してこれから労働時間を考えていかなければいけなくなるということですね。
熊野英生氏:
2つやっつけないと働き控えはなかなかなくならないという難敵ですね。
役所の壁が財務省と厚労省で2つあるっていうのは極めて分かりにくいので、政治の世界はそこをもっと簡素に見直しをしていく必要があると私は思いますね。

谷本有香氏:
私も今雇用する立場として、例えばパートでライターさんやフォトグラファーをやってらっしゃる方にオファーをすることが多いんです。ただ、やっぱり壁を気にしてもうこれ以上働けませんということが多い。
でも「もっと本当は働きたいのに」って皆さんおっしゃるわけですよね。
本来的にはもっと働きたい人が働けるような税制を作っていくのは絶対していかなければいけないし、人材不足の中において誰もハッピーにならないという状況を変えていかなくちゃいけない。
あとは今後マイナンバーカードもあるので、例えば自分自身の働き方でシミュレーションで分かるとか、そういった形でデータを使っていくっていうことがあると、何でもかんでも働き控えをするっていうようなことになりにくくなるのかもしれない。
そんなところも今後踏み込んでやっていってほしいなと思います。
手取りはどうなる?

国民民主党は、「最低限の生活費」という意味の金額である基礎控除を123万円まで上げ、年収の壁を178万円に上げる案を示していました。
一方、政府案では基礎控除額が年収に応じて最大95万円となり、あわせて160万円に。
国民民主党案では…

年収 200万円 増える手取額 8万6000円
300万円 11万3000円
500万円 13万2000円
600万円 15万2000円
800万円 22万8000円
1000万円 22万8000円
このように手取りが増えていく形でした。
一方、今回可決された政府案を見てみると、基礎控除額の上乗せ部分が年収が高くなるにつれ減額されるため…

年収 200万円 増える手取額 2万4000円
300万円 2万円
500万円 2万円
600万円 2万円
800万円 3万円
1000万円 2万円
幅広い年収でわずかな増額にとどまっています。

MC 谷原章介:
今回政府は57万円も壁を動かしたにもかかわらず、2万円から3万円しかどの層も変わらない。
これって額自体大きく動いたのに手取りがあまり増えない感じがすごく残念なんですけど…。
熊野英生氏:
大きく改革をやろうと思っても着地点は少ししか増えないと。あまり大盤振る舞いを政府はしないという制度改正になってしまっているんですね。
働き方が楽になるような金額ではないことは確かですね。
年収200万円以下の人は160万円なんですけどもそれより年収が上の人たちは減るので、これはいわば低所得者対策みたいな感じになっているのが実情だと思います。
(『サン!シャイン』 2025年4月7日放送より)