瀬戸内海に浮かぶ広島・大崎下島。

人口は1700人ほど。その7割が65歳以上という高齢化が進む島です。
名産は、温暖な気候を生かしたかんきつ類。

この島でかんきつ農家を営む上神アツカさん(88)。
権威あるマーマレードの世界大会「ダルメイン世界マーマレードアワード」で、2000点もの中からブロンズ賞を獲得しました。

このマーマレードのファンだという大女優は…。

くれ観光大使 名取裕子:
お味は本当に優しくてまろやかで。
友達にもお土産で配ったらすごくおいしかったんで。
みかんのとってもおいしいところなんで 、だからそのものが違うと思います。
丁寧なおいしい宝物です。

小さな島のおばあちゃんが、どうやって世界を魅了する味を作り上げたのでしょうか? 
『めざまし8』が取材しました。

子供の一言がきっかけで始めたマーマレード作り

16年前に夫に先立たれてからはひとり暮らし。現在88歳のアツカさんは、200本近い木が植えられた場所でかんきつ類を栽培しています。
マーマレードに使っているのは主にデコポン。

上神アツカさん:
身もしっかりしているし味もいいでしょ。だからマーマレードにしようと思って。

糖度が高く果汁も多いデコポンがマーマレード作りには最適だといいます。

そもそも、マーマレード作りを始めたのは60年前。子供の一言がきっかけでした。

アツカさん:
子供が3年生の時「お母ちゃん何かほしい」と言うので、みかんをアメにして食べさせたら「お母ちゃんおいしいねおいしいね」って。それからジャムを作ろうかねと思って、ジャムの仲間を作って。
私はね、何か思いついたらやってみる主義なんですよ。もう夢中になって何も考えずに作るんですよ。

マーマレード作りに密着

そのアツカさんのマーマレード作りに密着させてもらいました。

作業する場所は、廃校の校舎を利用したかんきつ類などの加工食品を作るための施設。
18年前にアツカさんたちが自治体にお願いして作ってもらった共用の施設です。

自作の帽子が、仕事モードへのスイッチ。
厨房に向かうと…マーマレード作りに集まったのは、アツカさんの親族など全部で8人。

アツカさん「これを切って捨てていいけんね」
仲間「こう取るだけじゃなしにや?」
アツカさん「取っただけでは…色変わっとるしね。この端気をつけて。あんまり大きいのはだめよ。これを小さく切って」

88歳のリーダー。細かな指示を仲間たちに伝えていきます。
レモンがゆであがると…。

アツカさん「もうあげてもいいよ〜。あれ、いない」

周りに人がいないことがわかると、小走りで自ら倉庫へ。
ゆでたレモンを冷やすためのおけを2つ持って釜へ急ぎます。

アツカさん:
自分が、責任があるから。みんな責任がないから責任があるものが動かないと…。

材料の下処理が終わると、釜の中にレモンの皮とデコポンの果肉、さらに砂糖を加えて約1時間、じっくり煮詰めていきます。

約1時間後…最後に、鍋にあるものを投入。これが、アツカさんのマーマレードになくてはならないものだそう。

――今何入れたんですか?
アツカさん:
ウイスキー。

味の決め手はこのウイスキー。最後に入れることで味に奥深さが出るというのです。

――鳴ってますよ!
アツカさん:
鳴ってる?鳴っててもいいんです。
途中で加減せんといけん。これはただの目安じゃけ、ここからは勘。

アツカさんの勘を頼りに煮詰めたらウイスキー入りのマーマレードが完成。

アツカさん:
限界…。

――腰ですか?
腰が痛い。

それでも作業をやめようとしないアツカさん。作業開始から3時間。ようやく腰を下ろしました。

――お姉さんはどんな人ですか?
アツカさんの妹:
お姉さんはしっかり者よ。何でも1人でやる人。

昔からしっかりものだったというアツカさん。
最後の工程まで自らの手で。1枚1枚丁寧にラベルを貼っていきます。

アツカさん:
またこれが楽しいんですよね。何枚貼れた〜思ってね。

――これが世界で3位(ブロンズ賞)になったということなんですが。
それが不思議でね。まいちゃんに誘われて、これ作ってみようかね、あれ作ってみようかね、いうことが始まりなんです。

世界大会でブロンズ賞。 そこに至るまでには偶然出会ったある夫婦とのドラマがありました。

世界で通用する味にするため…試行錯誤

10年前にこの島へ移住し、カフェを営む宮川さん夫婦。

宮川真伊さん:
大崎下島に来て(移住支援団体の)上司から「ジャムやマーマレードを作っている人がいるのでちょっとサポートしてほしい」と言われて。

フードライターをしていたという宮川さんは、偶然アツカさんのマーマレード作りを手伝う事に。
アツカさんもまた、これまでとはひと味違った奥深い味を目指したといいます。

宮川真伊さん:
ピールをしっかり使ってウイスキーを入れてくれっていうところで。

世界で通用する味にするため、これまで薄く切っていたレモンの皮を分厚く切り、さらに、マーマレードにウイスキーを入れることに。
何度も何度もベストの配合を目指して試行錯誤…。

宮川真伊さん:
試作を何回もやって…結構50、60回くらいやってもらったと思うんですけど…。

80歳を超えるアツカさんの情熱はすごかったといいます。

そして誕生したのが「Atsuka's Marmalade」。

イギリス出身の宮川さんの夫がサポートし、マーマレードの世界大会に出品。
アツカさんの運命は大きく変わりました。
味だけでなく、80歳を超える女性たちが手がけていることも評価され、出品された2000点もの中から、ブロンズ賞に選ばれたのです。

現在88歳。大好きなマーマレード作りも日に日にしんどくなってきているといいます。
それでも、アツカさんを突き動かしているものとは…。

アツカさん:
それこそ生きがいしかないですわ。他に考えるとすれば、時間のつぶし…(笑)。
それが楽しいんですよ。平生ぐたっとなっとっても加工がある思うたらね。何も作らなきゃいけん思うたら楽しくなるんですよね。

(『めざまし8』 2025年3月14日放送より)