俳優のいしだあゆみさんが、2025年3月11日に甲状腺機能低下症のため、亡くなっていたことがわかりました。76歳でした。

歌手として、俳優としても活躍

いしださんは1968年、20歳の時に発売された「ブルー・ライト・ヨコハマ」が100万枚を超える大ヒットを記録。
横浜のご当地ソングとしても知られ、京急横浜駅の発車メロディーにも使用されています。
1970年に発売された「あなたならどうする」は40万枚以上を記録し、1989年には、この曲がコーヒー用クリーミングパウダーのCMソングに使われ、再びヒットしました。
紅白歌合戦にも10回出場したいしださん。俳優としても数々の映画やドラマに出演しました。

ドラマ『北の国から』では、田中邦衛さん演じる黒板五郎の妻で純と蛍の母親を演じました。
そして1986年、習っていたスケートの経験を活かして出演した映画『時計 Adieu l'Hiver』では、フィギュアスケートのコーチ役を熱演。

この年、映画『火宅の人』にも主演し、2作品で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。さらにブルーリボン賞や、ゴールデンアロー賞なども受賞しました。

いしだあゆみさん(ブルーリボン賞受賞時 当時38):
すごくうれしいです。
ブルーリボン賞って絶対に縁がないと思っていて…でも遠くの方でとっても欲しかった賞です。
これから仕事をやっていて、もし自信がなくなった時に今日のこの日のことを思い出してこれからも頑張ってやっていきたいと思います。

2007年に出演した番組では「俳優という仕事が楽しい、スタッフを信じているからこそ、仕事は断らない」と明かしていました。

語っていた「早く70になりたい」

年を重ねながら、求められる様々な役を演じ、数々の作品に息吹を吹き込んできたいしださん。
公私ともに仲がいいという、あき竹城さん、天童よしみさんとの対談番組では「年を重ねること」について…。

〈2011年9月25日放送「ボクらの時代」〉
いしださん:
私変わってるのかしら。私老ける役好きなの。早く70になりたいんです。私多めにさば読むの。四捨五入しちゃって。今だったら63ですけど65って言いたい。

あき竹城さん:
なんでなの?

いしださん:

わかんない。一歳でも若く見られるのが嫌。

あき竹城さん:

昔から?

いしださん:

昔から。早くおばあちゃん役やりたかったの。それで早く70になりたい。

自然体で生きることを大切にし、無事に暮らせる毎日に感謝していたといういしださん。

いしださん:
寂しいって思うこと自体が余裕があるんですよ。本当に食べられなかったり寝られなかったり。寂しいとか言ってられないですよ。生きることが大変で。だから悩んだり寂しかったりすることは、とてもぜいたくなことだと思う。

雑誌のインタビューではこんな人生観も話していました。

〈「いきいき」2008年6月号 取材・文:岸田文絵〉
気障な言いかたですけど、もしかしたら私には人生そのものが旅かもしれないと思うようになりました。生まれてから死ぬまでが一つの旅なんだと。

そして…2024年に公開された「室井慎次」シリーズ2部作で柳葉敏郎さん演じる主人公・室井慎次の故郷の秋田県で商店を営む店の主人を熱演。
これがいしださんの「最後の作品」となりました。

この映画のロケ地ともなった店には、いしださんのサイン色紙や撮影で使用した市毛商店の看板が大切に飾られていました。
店の主人によると、寒い時期に行われた撮影の合間、体が冷えることを心配したスタッフがいしださんに上着を渡そうとしても受け取らず、自分の持ち場であるレジ前の椅子から動かずに役に向き合っていたといいます。
一方で、店のスタッフに「秋田のお土産は何がいいの?」とたずねるなど、気さくな一面も見せていたといいます。

甲状腺機能低下症とは?

76歳で亡くなった、いしださん。所属事務所が明らかにした病名は「甲状腺機能低下症」。

たかしま耳鼻咽喉科・内科高島雅之院長によると、「甲状腺機能低下症」とは、甲状腺の働きが低下し、甲状腺ホルモンの分泌量が少なくなる病気で、30代~40代の女性の発症が多いということです。 
主な症状は、体温・血圧の低下、心拍数の低下、疲労感、冷え性、体重の増加など。
重症化すると、心不全や免疫の低下による合併症で命に関わる可能性もある病気です。

鈴木円香氏:
甲状腺の病気、私の周りでも多くて。長く付き合わなきゃいけないんですよね。最後だんだん症状がつらくなるっていうことだと思うんですけど。いしださんの活躍を見ていると、「室井慎次」の最後の役の中でも、病気さえ栄養にして演じられている感じがして、偉大な方だったんだな、76歳、早すぎるなと思いますね。

(『めざまし8』 2025年3月18日放送より)