長野県須坂市が「ふるさと納税」の返礼品としていた「シャインマスカット」。

その仕入れを依頼されていた和歌山県に本社を置く「日本グルメ市場」が、山形県産のシャインマスカットを“長野県産”と偽って表示し、送っていたことが分かりました。

農林水産省によると、産地を偽装して送られたシャインマスカットは、2019年9月からの約5年間で、約11tに上るといいます。

「日本グルメ市場」に「ふるさと納税」の返礼品の仕入れを依頼していた須坂市は、2024年の11月上旬には業者から報告を受けていたものの、2025年2月下旬までシャインマスカットを返礼品とした寄付を受け入れていました。

2025年3月25日、市によって開かれた説明会の参加者からは、「須坂市の名前を失墜させた」「これで済むと思っているなら大ばか者」と怒りの声が。

ふるさと納税を取り仕切る総務省の村上誠一郎総務相も、「ふるさと納税制度に対する信頼を損ないかねない重大な事案。指定の取り消しも含め、必要な対応を検討したい」と発言。

今回の事態を受けて、ふるさと納税の返礼品として、同じく「シャインマスカット」を出品している、須坂市のブドウ農家は…。

後藤農園 後藤文夫さん:
ブドウの産地を作るまでに何十年もかかってきたもんで、風評が広がるのは残念なことです。ただ私らより被害を受けているのは、納税者さんですので、市の方もできるだけ早く対応していただきたいと。

田中果樹園 田中久子さん:
すごい、農家をばかにしているとしか思えなくて。
それ(産地偽装)を知っていてすぐに対応しなかった市は、いったい何を考えているのかというか、農家の気持ちを全然考えてないんだなというのは、はっきり分かったので。本当に許せない。

シャインマスカット以外にも、「卵」や「ヤギの石けん」なども返礼品として出品しているという、田中果樹園。収入の3割ほどが、返礼品の出品によるものだといいます。

今回の問題を受けて、現在、返礼品が出品できない状態になってしまい、収入にも大きな影響が…。

田中果樹園 田中哲さん:
(出品できない卵を)一生懸命自分たちで食べたり、近所に配ったりしてしのいでいますけど…。

田中果樹園 田中久子さん:
もらった人は喜んでくれるからいいんですけど、収入源にならないので。
(須坂市のふるさと納税が)これから取り消しになっちゃったらどうしようっていう…、一番怖いですね。

約6割の自治体が「ガイドラインなし」

「日本グルメ市場」は市と合同の説明会で、「仕入れを行っていた青果の卸売り業者に対し、書面による発注を行っていなかったため、指定の産地が十分に伝わっていなかった」と説明。

長野県須坂市の「ふるさと納税」の寄付の中で、シャインマスカット関連の返礼品に対する寄付額は、年々右肩上がりに増加しており、2024年は約32億円2000万円。

これは、須坂市のふるさと納税寄付額の約8割に上り、今回の産地偽装問題による影響はかなり大きいとみられます。

なぜ、このような問題が起きてしまったのか。
一般社団法人自治体DX推進協議会(GDX)によると、全国290の自治体を対処としたアンケートで、返礼品の品質チェックに関するガイドラインが「ない」と回答した自治体が62.2%に上り、明確な品質管理基準が整備できていない状況が浮き彫りになっています。

今後、再発しないためにはどうしたらいいのか。ふるさと納税の仕組みに詳しい、ふるさと納税ガイドの飛田啓介編集長は…。

ふるさと納税ガイド 飛田啓介編集長:
99%の事業者、自治体はルールを守ってしっかりやっていると思っています。
しかし、一部の自治体がこういったことをやってしまうと、ふるさと納税全体の信頼の関わってくると。やはり、ルールを守るべき市が、しっかりと対策を打っていくことが大事かなと。

市は総務省に4月21日を期日として、調査報告書を提出するとしています。

(『めざまし8』 2025年3月26日放送より)