中学生の国語の教科書に「朝のリレー」が掲載されるなど、世代を超えて親しまれてきた詩人・谷川俊太郎さん(92)が、2024年11月13日に老衰のため亡くなっていたことが分かりました。

1952年、20歳の時に、詩集「二十億光年の孤独」でデビューした谷川さん。

詩だけでなく、翻訳の分野でも活躍。
アメリカで権威のある児童文学賞を受賞した絵本「スイミー」や、イギリスに伝わる童謡をまとめた「マザー・グース」。スヌーピーが登場する人気漫画「ピーナッツ」の翻訳を手掛けたことでも知られています。

2011年にフジテレビの「ボクらの時代」に出演した際は、作品へのこだわりを口にしていました。

谷川俊太郎さん:
詩は全部フィクションだと思っているから、きょうは5歳の女の子の気持ちで書こうとか、この詩は80のじいさんのつもりで書こうとかそういうつもりでやっていますよ。
自分を無くすということを常に考えてるところがあるんですよね。
自分の容量を大きくしたいということなんだけど。簡単に言えば自分の器が大きくなれば他人が入ってくるだろうみたいな。そういう感じ方ですね。
恐山の巫女みたいなもんだからってよく言うんですけどね、基本的にどっかから違う言葉が降ってくる、沸いてくる、そんな感じがあるんですよね。

そんな言葉を裏付けるように、2009年に出版された、詩集「子供たちの遺言」は、様々な年代の子どもたちの一瞬の表情を捉えた写真に、谷川さんが、その人物になりきって詩をつづった作品となっています。

(写真:田淵章三)

成人式を迎えた、晴れ着姿の女性の写真、タイトルは「ありがとう」です。

お母さん ありがとう
私を生んでくれて
口に出すのは照れくさいから
一度っきりしか言わないけれど

でも誰だろう 何だろう
私に私をくれたのは?
限りない世界に向かって私は呟く
私 ありがとう」


(「子供たちの遺言」谷川俊太郎・詩 田淵章三・写真 発行:佼成出版社 より)

谷川俊太郎の“生きる”とは?

90歳を超えても、精力的に創作活動を展開。
今年4月、92歳で「生命力」や「命」をテーマにした作品「生きてるってどういうこと?」を発表した際は、今後の活動についても意欲を見せていました。

(対談|谷川俊太郎 ×宮内ヨシオ『生きてるってどういうこと?』©光文社 より)

谷川俊太郎さん:
ボクは大学にも行ってないし手に職もないし、とにかく食ってかなきゃいけなかったから、若い頃から来る仕事で自分ができそうなことは全部受けていたんですね。それが結構、自分のエネルギーになっていたんですね。

――先生はこれからの作品は?
谷川俊太郎さん:
これからってあと何年やるかわかんないのにさ、何か今まで経験したことがないことを感じられるといいなと思いますね。もう90超えてれば、ほとんど時間がないわけだけども、前からの経験じゃなくて、何か新しい90超えてたからこそ感じる何かがあると思うのね。それを何かの形で言葉にしたり表現したいと思うんだけど。
年寄りは若い人と違って全然発想が変わるんですよ。ある程度の人間になると。だから諦めてもいいとか絶望してもいいとか、そういうマイナスの価値が認められるようになってくる。

生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ

人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ

(「生きてるってどういうこと?」 ことば 谷川俊太郎 絵 宮内ヨシオ ©光文社 より)

“現代社会”に必要なものは“想像力”

MC谷原章介:
僕も十数年前にどうしても谷川さんにお会いしたくて対談したことがあるんですけども、僕みたいな若輩者に対してもあれだけの方が決して上から目線で対応するわけでもなく、かといってへりくだるわけでもなく、普通にフラットに話をしてくださったのがとてもとても印象的で、数時間の滞在で谷川さんのご自宅でお話をさせていただいたんですが、近所に住まわせてもらってスッときたみたいな距離の近さと暖かさと。

おっしゃっていたのが、「最近はデジタルで、いろんなものがはっきり分かるように一見みんな見えるけど、実はまだまだわかってないことの方が多くて、だからこそ詩の言葉の力とか、想像力みたいなものがこれからの世の中にはとても必要なんじゃないかな」みたいなことを、とりとめのない会話の中でおっしゃっていたのが、印象に残っています。

お会いすると、ちょっとやんちゃな面だったりとかも80歳前後だったと思いますけど、ちょっとエロティックなところがあったりとか、すごく魅力的な方でした。
改めて詩集を読んでみたいと思います。お悔やみ申し上げます。


(『めざまし8』 2024年11月20日放送より)