海外で働きながら、語学や文化を学ぶことができると人気の「ワーキングホリデー」制度。特に、ここ数年、円安の影響もあり、“日本よりも稼げる”として、多くの若者がこの制度を利用し海外で働き始めているといいます。
高収入を得て、休日には現地を観光しながら素敵な異文化交流…かと思いきや、現実は渡航したものの、仕事が見つからず現地で困窮する「日本の若者たち」が増えているといいます。
さらに、オーストラリアの“炊き出し”に日本人が列をなしているという話も…。一体何が起きているのか、驚きの実態を取材しました。
待っていた厳しい“現実”
「ワーキングホリデー」制度の渡航先として人気を博し、過去最多のビザ発給数となっているオーストラリア。
最低賃金は、日本の平均の2倍以上となる、時給約2300円です。
申請年齢の制限が迫る29歳で、オーストラリアで働きながら生活することを決め、今年、夫婦で海外生活をスタートしたせっきーさん。ワーキングホリデーの“理想”と“現実”のギャップについてこう話します。
ワーホリ歴7カ月 せっきーさん(31):
(仕事に就くまで)僕は2カ月ぐらいかかりましたね。130件とかは軽く応募したんじゃないかなと思うんですが、そこから面接に進んだのが3件とかだったので、非常に見つけるのが、僕は苦労したなという感じなんですけど。
ワーキングホリデーを利用して、オーストラリアで生活する23歳のおじゅんさんも、渡航者が増えている中、英語力の差で他の国から来た外国人よりも仕事を見つけるのが難しいといいます。
ワーホリ歴約1年 おじゅんさん(23):
本当に冗談抜きでオーストラリアの仕事探しは、だいぶ今厳しいですね。僕も本当にギリギリだったので、これが本当に一歩タイミングでもミスれば日本帰っていたかもしれないので。
中には、ようやく仕事に就けたものの、2時間でクビになってしまったという人も…。
ワーホリ歴1年8カ月 のこたびさん(30):
私は未経験で応募しているので、それは向こうも分かっているはずだと思うんですけど、何も教えてもらえなかったんですね。「ここではうまくやっていけないと思う」と言われてクビでした。ほんの2、3時間やっただけで「もう帰っていいよ」みたいな。
家探しも難しくて、応募しても返事が来ない。何戸も数を当たって、ゲットしにいかないといけないという感じでした。
本当に少ないものを大人数が取り合うような、最初は(1部屋)8人だったんですね。8人もいると知らないで入居したんですよ。その後どんどん人が増えていって、部屋を分割されはじめて、最終的に12人になってしまった。
今年2月時点で、オーストラリアの賃貸空室率は、わずか1%。そもそも空いている部屋自体が少ない上に、英語での契約が難しく、のこたびさんは3LDKのマンションで、他の国から来た12人と共同生活を送っていたといいます。
去年10月、“お金稼ぎ”を目的にオーストラリアにきたという北山さんは、英語がわからなくても 比較的働きやすい「ファーム」と呼ばれる農場で始めましたが…。
ワーホリ歴10カ月 北山楓太さん(23):
元々(貯金が)ゼロとか、5万もない…1万とか。帰るお金がなかったんですよ。英語力がひどくて。オーストラリアに行くって決めたのが去年の3月とか4月ぐらいで、そこから英語を勉強しようかと思っていたんですけど、やっていたのは英語の歌を聴くだけだったんですよ。
歩合制のファームだったんですよね。1日で8時間とか10時間働いても3000円とか。パスタが1ドルであるので、それと2ドルのトマトソース、それを毎日食べたりしていました。
決して高いとは言えない給料…さらに今年5月に骨折してしまい、無職に。そこで参加したのが、現地で行われていた“炊き出し”です。
ワーホリ歴10カ月 北山楓太さん(23):
最初友達に誘われた時は、「フードバンク」というか無料で渡してくれる、こういうのあるらしいから行ってみようと言われて。1時間とか2時間とか待つんですよあの列。わりと日本語とかも聞こえてきて。
ボランティア団体が、貧困者たちに無料で食料などを配布している“炊き出し”。そこにやってくる日本人が、ここ5カ月ほどで急増しているといいます。
“炊き出し”を行うボランティア団体代表 ジミーさん:
1週間に20人から40人くらいの(若い)日本人が来る。あまり英語を話せないので、(仕事に就けず)ここに来る時もあまりお金を持っていない。特に今の若い世代は、計画性がなく(オーストラリアに)来てしまうんです。
ワーキングホリデーではなく“出稼ぎ”に近い形に…
サヘル・ローズ氏:
若い時って勢いとか、なんとかなるでしょうみたいな感覚があると思うんですけど、法律だったりルールだったり、生活する環境って個人で言葉が分からないところは本当に大変なので計画性は本当に必要ですよね。下調べをしないと厳しい。
大空幸星氏:
本来の制度の趣旨と完全にずれてますよね。異文化交流、相互理解、それをやるための休暇、そのための制度であって、就労制度ではないし、就労ビザでもないんです。ただ現実的には異文化交流・相互理解のために行っている人は正直ほとんどいないと思います。要は、海外移住に、出稼ぎに近い形になっていますよね。
これは、日本の政治家がものすごく危機感を持たないといけない話で、日本から海外に抜け出そうという意図で若い人がどんどん流出しているという話なんですね。ワーキングホリデーから就労ビザに切り替えるのは難しいができなくはないんです。そこから長期滞在になって帰ってこないという人も一定数います。
それを考えると、国内で実質賃金が30年なかなか上がっていないなどの雇用の問題に目を向けていくのがアプローチの一つで、そして行く人も制度の理解をすべきですね。これは異文化交流の制度であって、そんな簡単に働けない。現地の雇用を奪って働くということですから。その理解をまずは持っていただきたいと思います。
(『めざまし8』 2024年8月20日放送より)
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