現在、富士山はすべての登山道が冬季閉鎖中。しかし、2025年末に2件の滑落事故が発生するなど、登山者からの救助要請が相次いでいます。
とりわけ今、問題になっているのは、海外からの強行登山者の存在です。

中国のSNSで強行登山の指南動画も

先週、静岡県警が公開したのは、閉山中の富士山で活動する山岳遭難救助隊の映像。

強風が吹き荒れる暗闇の中、ライトを照らしながら凍結した雪の上を慎重に登っていきます。

救助を要請したのは、中国籍の20代の男性。1月18日、富士宮口・八合目付近の登山道を下っていた際に転倒したというのです。

翌日の搬送時には、担架に乗せられた男性を隊員らが引っ張り、凍結した斜面をゆっくり下山。まさに命懸けの現場です。

2025年4月には、山頂付近で体調不良になったなどの理由で中国人の大学生が救助を要請。防災ヘリで救助されましたが…、そのわずか4日後、置き忘れた携帯電話を取りに行くため再び入山。高山病で倒れ、再び救助隊が出動する事態に。

彼らはどこで情報を得ているのか?中国のSNSを見ると、閉山している冬の富士山に登る動画や写真が数多く投稿されていました。

〈中国のSNSより〉
「1月3日 富士山へ」
「富士山なんて楽勝だった」

中には、閉山中の富士山へ強行登山する方法をレクチャーする動画も…。

〈中国のSNSより〉
「積雪期のため立ち入り禁止の看板があります。無視してそのまま進みます。
その先は金属板で塞がれていますが、無視して左の脇道を進みます」

解説しながら、禁止されている登山道へと進入していきます。
閉山期間のため、山小屋は営業しておらず、山頂に近づくと、登山道も雪に覆われています。動画では、途中で滑落しそうになったことや、暗い中、道なき道を下山したなどの体験も語っています。

富士山などで山岳遭難救助を行っている団体は…。

山岳遭難捜索ネットワーク 三笘育さん:
実際に歩いてみると、ふかふかの雪がたくさん積もってるんじゃなくて、ガチンガチンに凍りついた雪がこう付着してるみたいなイメージなんで、想像できるのは、簡単に人間が空を飛ぶぐらいの風が普通に吹きます。(風速)20(m/s)は超えますね。

命の危険がある冬の危険な登山。減らすために、どのような対策が必要なのでしょうか?日本山岳ガイド協会の武川俊二理事長に聞きました。

閉山中の富士山「登山をするための条例規制」なし

――夏と冬、今の富士山の状況は?
日本山岳ガイド協会 武川俊二理事長:

夏は少し体力があればどなたでも登れる。非常に親しみのある国民の山だし、江戸時代からずっと登られていたという山なんですが、冬は様相が一変して、おそらく日本でも最も難しい山に位置する。ですから、冬の穂高岳、剱岳、そして富士山というのがトップ3の難しい山です。

閉山中の富士山(五合目~山頂の登山道)は道路法第46条に基づき、「通行禁止」となっています。違反した場合は6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
一方で、群馬県、富山県では、登山届の提出などを義務付ける条例があります。

群馬谷川岳遭難防止条例…違反した場合は3万円以下の罰金
富山県登山届出条例…違反した場合は5万円以下の罰金または科料

谷原章介キャスター:
きちんと登山計画を出さないで、なおかつ道交法に違反するような、登山道を通らず勝手に登った場合、法的に何も罰せられない可能性もあるということですか?

日本山岳ガイド協会 武川俊二理事長:
今の場合は法的に規制されていません。
富山県の剱岳の条例は、冬山はとても危険であるから「12月1日から5月15日まで入る登山者は届出を出しなさい。許可を受けたら入っていいですよ」ということなんです。それに違反したら罰則がありますという条例なんです。
富士山の場合はまだそういった「登山をするための条例規制」というのはないんですよね。

――問題になっている中で条例化されないのはなぜ?
夏場においては条例を作って入山料4000円というのを山梨県、静岡県と合わせて作ることができて、これをするにも10年ぐらいかかっているんですよ。
それを考えると、冬の閉山期どうやって登山をするかといったときに、じゃあ誰が登るのかというところの制限が非常に難しくなってきています。
ですから、登山届をきちんと出しましょうという条例を作ることからスタートしていけば、そこから次のステップに踏める。

登山家もひと目見て「無理」冬の富士山

武川理事長によると、訪日外国人は冬の富士山の怖さを知らずに登山をしてしまっていて、登山の経験がない人が多い。対策には危険な山だと周知することが重要だといいます。

日本山岳ガイド協会 武川俊二理事長:
実際に富士山の現場に行ってみると、なんとなく手が届くような感じに見えるんですよ。素人目で行くと。真っ白な富士山が見えて輝いていて「行けそうじゃん」という感じで行ってしまう。
私はかつて、カザフスタンの外国人3人を招いたことがあります。冬のエベレストを登るようなすごい登山家たちで、どうしても「富士山登りたい」って言うから、五合目まで行って富士山を見せたら「お、無理、デンジャー、帰ろう」って。
ひと目見て富士山は簡単に登れる山じゃないということが分かる。彼らは過酷な登山をずっとやっているからそれが分かるんですよね。富士山はテカテカに光っていて輝いていて、そこに竜巻みたいな渦巻きがいっぱいある。ということは、風が強いということがすぐ分かるわけです。こんなところ登れるわけないということ。

救助有料化の必要性

静岡・富士宮市の須藤秀忠市長は「救助に行く費用は莫大なもの。個人負担にするべきで自己責任」と閉山期の救助については有料化の必要性を訴えています。

山の救助費用は現在、日本では個人負担なし(警察・消防が救助)ですが、過去には1時間70万円以上の個人負担がありました(民間ヘリが救助)。
海外では、90万~100万円の個人負担となっています。

日本山岳ガイド協会 武川俊二理事長:
今、法律では保険の適用をしろというふうにはなってませんけれども、登山者は保険に入って万が一の場合、費用負担が発生したような場合は行政とともにその保険から負担できるという形を取ることによって、行政の負担も減るのではないのかなと思ってます。これは多分、法律なり条例なりを改正しないとできないようなことになってきます。
今、登山計画書は紙に書いて出す昔と違って、スマートフォンで出せますよね。スマートフォンで出して自分が保険にいくらかけていますよということも提出して山へ行く。
届出をも何もしないで行って事故に遭ったっていう場合は何らかの罰則規定を設ける。群馬県や富山県の条例では罰金が3万円、5万円となっていますが、出来上がったのが30年も40年も前の話ですから、貨幣価値が(今と)だいぶ違う。もっと高い、救助にかかった費用全額とかそういうような形にしていくことによって抑制することは可能かなと思います。

(『サン!シャイン』2026年1月27日放送より)