医療の発展や少子化などから「超高齢社会」を迎えている日本。様々な問題が取り沙汰される中、後を絶たないのは、高齢ドライバーによる事故です。

1月6日にも大阪・東大阪市で、70歳の会社員が運転する車が、コンビニエンスストアの敷地内で中学三年生の男子生徒をはね、フェンスに激突。その後、男子生徒は死亡が確認されました。

こうした事故を減らすため、現在、70歳以上のドライバーの免許更新時には「高齢者講習」が義務づけられており、教習所で実車指導などを受ける必要があります。

『サン!シャイン』は、高齢者講習の現場を取材。
見えてきたのは、危うい運転を行う高齢者たちと、免許を更新するか返納するかのはざまで揺れる“葛藤の姿”でした。

「初心にかえってもらう」真剣に講習を受ける高齢者たち

千葉県野田市にある自動車教習所。この日、高齢者講習を受けるために、教習車に乗り込んだのは、70代の女性です。

乗り慣れない教習車に戸惑いながら、ゆっくりと車を発進させます。

指導員から「真っすぐスピードが出せるときは出してください」と声をかけられますが、「アクセルに足が届かない…」と少し緊張の色が。その後も何度かミスを指摘されてしまいました。

別の80代の男性も、「講習」という慣れない場所でパニックになってしまったのか、右折の際に誤って反対車線に進入し、逆走状態に。

その後も、「止まれ」の標識を見逃し一時停止をせず走り抜けたり、赤信号を見逃して交差点に進入するなどミスを連発。

指導員から「こういうところに来ると緊張すると思いますが、十分注意してください」と指導が入ります。

野田自動車教習所 高齢者講習担当
長谷川 信一さん:

きょうのはあくまでも講習なので。アドバイスするっていう形で、合格・不合格は一切ありません。
やはり普段の“悪い癖”っていうのを直してもらう。周りの方に迷惑かけないような運転ですから、初心に返ってもらうってことですかね。

高齢者講習に加え、75歳以上が免許更新する際に必要になってくるのが、「認知機能検査」です。

提示された16個の絵の名称を覚えた後に書き出す問題や、今年は何年かを答える問題などがあります。
検査は全国一律の基準で採点され、結果が36点未満だと「認知症の恐れがある」と判定され、臨時適性検査や医師の診断が必要になります。

86歳男性:
毎日1回は(運転)している。何とかしてもう1回(免許)取りたいと思って。

そう話すのは、認知機能検査を受けに来た86歳の男性。
真剣に問題と向き合いながら、今年は何年という質問に「206年」と書いた後、慌てて「20」と「6」の間に2を書き足して、「2026年」に書き直す場面も見られました。

検査終わりに声をかけると、「全然ダメ、病院行かなきゃダメだわ…」とがっくり肩を落としていましたが、なんとか合格。免許更新に近づくことができました。

更新か返納か…手放せない理由

免許更新のために奮闘する人がいる一方で、訪れた高齢者の中には「返納」を決めた人もいました。

78歳男性:
返納して良かった、まあ不便な面もあるけどね。年寄りはやっぱり無理だよ。

83歳の夫が免許を返納した妻(74):
息子がたまに帰ってきて、お父さんの車の運転に乗ると「怖い」「乱暴になった」って。
本当に(夫が)返納してね、 ホッとした。

返納したことで気持ちが楽になったのか、どこかほっとした顔をしています。

しかし、そうした中で取材班が出会ったのは、返納を考えながらも、生活する上でどうしても免許が必要だと話す、高橋直子さん(78)です。

高橋直子さん(78):
(家族は)「もうやめたら」なんては言いますけども、まだまだ運転が大好きなものですから。(返納を考えたことは)あります。

参加した高齢者講習では、緊張のためか、アクセルとブレーキのスムーズな踏みかえが求められる「乗り上げ」の課題の際に、苦戦する様子が見られました。

運転歴は約60年。何度も返納が頭をよぎりつつも、駅から離れた場所にある、娘の美容院を手伝っている高橋さんは、駅までの客の送迎に車は欠かせないといいます。

高橋直子さん(78):
毎日、お客さまの送り迎えとか、美容室やっておりますので。免許がないと、やっぱりスーパーとかね、お買い物にもね。

しかしそんな母を見守る娘は、母の運転には不安があると言い「すごく心配で…」と本音を漏らしました。
今後、免許を返納する考えがあるのか聞いてみたところ、「あと3年~5年くらいは頑張って…」と答える高橋さん。当面、手放すことは難しいようです。

「更新」と「返納」の狭間で揺れながら、日常生活と折り合いをつけていかねばならない高齢ドライバーたち。
彼らを見守る、高齢者講習の指導員は…。

野田自動車教習所 高齢者講習担当
長谷川 信一さん:

家族で免許を持っている方、息子さんとかお孫さんがいれば、身近で一番見ている訳ですから。そういう人の意見、言葉っていうのは大事にしてほしいなって。
きちんと前向きに聞いてもらえればいいかなと思いますね。

(『サン!シャイン』 2026年1月15日放送より)