役者の仲代達矢さんが8日、肺炎のため亡くなったことが11日、分かりました。92歳でした。
約1年前にフジテレビで開催された、若き俳優たちに向けたワークショップ『君たちはどう演ずるか?』では「役者って商売は面白い」と、役者への熱い思いを語っていました。

仲代達矢さん 肺炎のため死去 1年前に語っていたこと

1932年に東京で生まれた仲代さんは、青春時代に俳優を志し俳優座に入所。
その後、映画『人間の條件』や黒澤明監督の『影武者』で主演を務めるなど、戦後の日本映画を代表する作品に数多く出演しました。
役者として活躍する傍ら、1975年には俳優を育成する「無名塾」を設立し、役所広司さんや、益岡徹さんら次世代を担う役者を数多く輩出しました。

1996年に紫綬褒章、2003年に旭日小綬章、そして2015年には文化勲章など数々の章を受章しています。

左から 杉田成道監督、仲代達矢さん(C)フジテレビ

これまで後進の育成に力を注いできた仲代さんは、2024年9月20日にフジテレビで開催された若き俳優たちに向けたワークショップ『君たちはどう演ずるか?』に登壇。名優たちが辿ってきた俳優としての人生、そこから得た“演技とは、何か”というテーマで、俳優業への思いを語っていました。

(C)フジテレビ

ワークショップに集まった役者を志す若者たちからは、俳優業について様々な質問が仲代さんに飛びました。

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型にはまった演技ばかりになってしまうという悩める若者に、色々な役を演じる上でどんな気持ちで新鮮な演技をしているのかをたずねられると、「(演技をするときは)役に扮していくから、自分に近い役は上手く見えないっていうのかな。でも自分に近い役こそうまくやらなきゃいけないなと最近思っていますけど、そこを踏ん張っていくのが役者の冥利。“自”、自分が、“他”、他人を演ずるっていうことにすごく興味を持った方が私はおもしろい思うんです。」とアドバイスし、「私なんかコンプレックスを材料にして生きてきた部分もあるなと。自分の中にないようなものを、映画の中で悪役をやった場合にそれができたりするんですよね」と、明かしました。

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自然な演技をしてくれという監督の要望にどう答えたらいいのかという質問には、「あなた自身の自然じゃなくて、役の自然になってくれって監督は言っているんじゃないの?」と始め、「私も(演じていると)自然にやってくれっていうのは随分言われる。緊張するあまりにどこかが固くなっていて、それを監督さんが自然にやってくれって、そういう場合もあるでしょうし、役になってくれよっていう自然さ、すーっと自然に役になっていく感じが見えてくれよって監督さんは言うんじゃないかな。役になってくれよって言ってるのかもしれないですね。それはなかなか難しいことですけどね。」と、真摯に向き合って答えていました。

足りないのは「訓練」 現代の俳優業に対する思い

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芝居の方法論について聞かれると、「自分のやり方を人に教えるということは随分ありましたよ。しかしその相手の子は俺じゃないんだよね。これは仲代達矢のやり方で、俺の真似してもいいけど、あなたは自分自身のことを考える。その辺がなかなか役者を指導するっていうのは難しいことで、あんまり教えすぎて俺より上手くなっちゃうやつもいるんで。役所広司さんなんてそうなんで。困ったなと思っていますけど。」と、名優らしいエピソードを交え、そのユーモアで会場を笑顔にしていました。

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現代の作品や役者に足りないものは?という問いに対しては、「訓練。私はそう思っています。歩き方にしても、この役やる場合にはどういう歩き方するとか、背骨はまっすぐにしてなきゃいけないとかっていうことを常に自分の中でいろいろ研究していくっていうのかな。どの役がきてもなりきるっていう訓練をしたほうがいい。いい気持ちもあるけど悪い気持ちもある。それを確認していくっていうのかな、それが役者がすべきことじゃないかなと思います。」と、真剣な表情で語りました。

「役者って商売は面白い」若者たちへ残した言葉

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若き役者たちから飛んだ1つ1つの質問に、まっすぐに答えていった仲代さん。最後には、「最近のもう90過ぎたなという思いが、少し若返ったような気がいたします。何度も言うようですけど、そろそろ引退かなと思っています。しかし、毎日テレビを見てますと100歳まで生きようとしてるご老人に対するお薬とか健康法とかがいっぱい出てきて、ふとあの薬飲んでみようかなとか・・・ともかく、もう少しやり続けるつもりです。役者って商売は面白いです。」と熱く語り、仲代さんを迎えた貴重なワークショップは幕を閉じました。