<増田裕次&高橋美幸&河西秀幸 コメント>
――今回の作品で、“遺品整理”を題材にした理由を教えてください。
河西:草彅剛さん主演で『銭の戦争』(2015年)、『嘘の戦争』(2017年)、『罠の戦争』(2023年)に続く新たな作品をやろうと考えたときに、草彅さんがまだやっていない役どころで、かつ草彅さんらしい役ってなんだろうと、三宅喜重監督と話し合いを重ねました。
そんなときに、たまたま遺品整理について知る機会があり、同時に、増田さんが出演されていた2020年の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)の録画が残っていることを思い出して、見直したんです。
その後、2年ほど前に増田さんに初めてお会いすることができ、直感的に、増田さんの仕事に向き合う姿勢がそのままドラマの主人公に活かせると思いました。
高橋:私は、河西さんが増田さんの話をメモした取材ノートを受け取って、そこに書かれていた、我が子を思う故人さまがよだれかけをつけたぬいぐるみを大切にしていた話や、会社が故人さまの遺品を持ち去ってしまったという話にすごくひきつけられたんです。
増田さんが、現場で作業を始める前に必ず花を供えるというエピソードもすごく印象的で、それこそが遺品整理人の心なんだと感じましたし、「死者の尊厳を守る」というテーマなら、11話のドラマを完成させられる、ぜひやってみたいと思いました。
河西:増田さんは、遺品整理をビジネスとして考える以前に、ご遺族さまに寄り添うことを信条とされてますよね。遺品整理という仕事に対してすごく誇りを持っていることが伝わってきて、それをドラマで体現したいと思いました。
とはいえ、増田さんはとてもお忙しい方なので、監修をお引き受けいただくまで、なかなか会うお時間をいただけなかったのですが(笑)。
増田:私としては、この仕事を始めてからの20年分の思いというか、遺品整理という仕事をドラマで扱ってもらうことが、はたしてご遺族さまに対していいことなのか、面白おかしく描かれてしまうんじゃないかという一抹の不安があったんです。
河西さんになかなか会わなかったのは、その自問自答の期間(笑)。結局、その後も熱心にメッセージをくださった河西さんを信じて協力しようと決めましたが、ドラマを作るにあたって1つだけ、第1話や第3話の孤独死の特殊清掃の場面で「悪臭」と「汚染」という言葉は使わないでほしいとリクエストしました。
「臭い」や「汚れ」でいいんじゃないですかって。そもそも私は「孤独死」という言葉も「自宅死」でいいと思っているんです。「孤独」という強いワードで悲壮感を煽る必要はなく、故人様は住み慣れた自宅でただ最期を迎えただけ。だから、「自宅死」だと私は思っています。
