──印象に残っているシーンはありますか?
ヒーロー連合会の研究機関「微光実験室」が過去に墜落した宇宙船の調査に行くのですが、リトルジョニーは黙殺(CV:中村悠一)やロリ(CV:佐倉綾音)たちと調査に同行します。
その調査へと向かう合間にみんなでご飯を食べるシーンが、印象に残っていますね。ワン・ノノ(CV:古賀葵)が黙殺の娘とは知らずに、黙殺がノノに恋をしていると勘違いして、アシストをしようと奮闘するけど、空回りして…。それは純真さから来る動きで、リトルジョニーのいいところと思いつつ、ちょっとは考えようよと思っちゃいました(笑)。

あのシーンは、かなりポップなやり取りだったと思いますが、嵐の前の静けさみたいな感じがすごくよかったな、と思っています。
──皆さんと収録は一緒にできなかったと聞きましたが、息の合った掛け合いがステキでした。
もう勝手知ったる皆さんですから、ある程度、脳内再生で「こう来るだろう」ということは予想できますからね。
松岡禎丞のルーティンは?アフレコ前の“ガチッ”が大事!
──劇中、ヒーローがさまざまな能力を持って活躍していますが、松岡さんがもしヒーローだったら手にしたい能力はありますか?
悪いことには使わないという前提で、知らないうちに人の欠点を消せる能力が欲しいです。それを逆手に取ると、自分の欠点も消せるじゃないですか。そうすると、みんなの欠点がなくなって、いろいろなことが円滑に進むんじゃないかなと思っていて。その能力は、平和のために使えたらいいなと思います。

──声優としてのお話も聞かせてください。アフレコをする際のルーティンはありますか?
頭の中でスイッチのようなものを入れるというのは重要ですね。うまく言葉で言い表せないですが…(キャラクターの)感覚が憑依するというか。そのスイッチのようなものがガチッと入ると、その場にいる人たちと、自然に(物語の)世界の中にいられて、台本を持っている感じがしないんです。
結構難しいですし、それを長い時間続けていると頭が痛くなることもあるので、大変な部分もあるのですが。
──ブースに入ってから、ガチッとさせるのでしょうか?
どの現場でも、最初にだいたい音響監督さんがブース内で「今回収録するのはこういう回で…」と説明をされるのですが、「皆さん、何かありますか?」という締めの言葉くらいでスイッチが入り始めます。
そこから、音響監督さんがブースを出て、コントロールブースのほうで「各部署よろしいですか?」といった確認があって、収録が始まるまで体感では40秒くらいでしょうか。そこまでにガチッと入ればいい感じ。「じゃあ、お願いします」と収録が始まってしまってからではもう遅いですね。
──少し余裕が必要なのですね。
そうなんです。だから、僕から質問することは何もないけど、周りの誰かが「一ついいですか?」と質問をしていても、僕はもうその言葉は耳に入っていません(笑)。すでに集中していますから。それなのに、ガチッと入らなかったときが怖いんですよね。

──そういうときもあるのですか?
ありますね。「じゃあ、お願いします」とスタートの合図が出たときにガチッと入っていないと、僕は「はい」って言っちゃうんですけど、その瞬間にゲージが下がっちゃって。また気持ちを入れ直さないといけなくなるんです。
最初にしゃべらないシーンなら、自分の出番が来るまでになんとかゲージを上げて、間に合うこともあります。でも、1カット目から自分のセリフがあるのにガチッとできていないときは「あーダメだ」「やばい、やばい」「(気持ちが)乗らない…」とすごく焦りますね。
ただ、もう16年くらいこのお仕事をやらせていただいているので、その状況でも及第点のお芝居は出せるんですよ。でも、求めているのはそこじゃないですから。日本語は声に乗った小さな感情の動きによって、聞き取り手の感覚が変わりますし、より良いものを届けたいので、直前の“ガチッ”は大事にしています。