5月30日(金)、『ザ・ドキュメント 出口なき部屋~介護離職 救いはどこに~』が放送されます。
番組では、若年性認知症の妻を介護するために仕事を辞めた男性の約3年間に密着。その歩みを通して、家族の犠牲によって成り立つ日本の介護のあり方に疑問を投げかけます。
ナレーションは、本上まなみさんが担当します。
年間約10万人にのぼる「介護離職」の実態に迫る
高齢化が急速に進むなか、誰もが直面する可能性のある介護。
2015年、当時の安倍内閣は、家族などの介護を理由に仕事を辞めることがない「介護離職ゼロ」を掲げました。しかし、2022年の総務省の調査では、直近1年間で介護などのために離職した人は10.6万人にのぼり、5年前から7000人増えています。介護離職者は、依然として年間10万人前後で推移しており、解決には至っていません。
番組で約3年間密着した大阪市に住む藤井康弘さん(61歳)は、若年性認知症と診断された妻・三恵子さん(62歳)の介護のために2021年に大手電機メーカーの子会社を退職しました。

三恵子さんは身体機能に異常がないため要介護度は低く、その条件で仕事との両立を可能にする介護保険サービスは存在しませんでした。康弘さんは、三恵子さんのために遠隔で見守りができるカメラを自宅に設置したり、デイサービスを利用したり、会社の介護休業を期限いっぱいまで取得したりと手を尽くします。
しかし、三恵子さんに徘徊(はいかい)の症状が出始めると、家で見守るためには退職以外に道はありませんでした。「もっと、手ぬるい仕事であれば残れたかもしれないけれど、どうしてもフルタイムではできない。社会がそこまで許容しないと思う」と、あきらめにも似た言葉を口にする康弘さん。
離れて暮らす一人娘に迷惑をかけたくないと、退職金と貯金を取り崩しながら在宅介護を続けています。康弘さんは、家族として介護を背負い続ける心境を「愛情じゃなくて情ですよ」と淡々と語ります。

しかし、取材を始めておよそ2年が経った昨年の夏、状況はさらに困難に。康弘さんに軟部肉腫と呼ばれるがんが見つかったのです。手術で腫瘍と一緒に筋肉も切除したため、康弘さんは左腕が動かしにくくなりましたが、康弘さんに要介護認定はおりず、誰かが日々の介護を手伝ってくれるわけではありません。

康弘さんは、「これでいいのか日本」と問いかけます。
専門家によれば、戦後日本の介護における“家族の役割”は「政府が財政難の際、“家族愛”を盾に、本来社会全体で支えるべき福祉の負担を家庭に押しつける」ことで形作られてきました。
出口の見えない介護、経済的な不安、そして自身のがん発覚という困難に直面しながらも妻に寄り添い続ける康弘さんの約3年間を通して、家族の犠牲の上に成り立つ日本の介護と、その象徴ともいえる介護離職の現状について問いかけます。


『ザ・ドキュメント 出口なき部屋~介護離職 救いはどこに~』(関西ローカル)は、5月30日(金)25時15分より、カンテレで放送されます。