<本上まなみ コメント>

――ナレーション収録はいかがでしたか?

(介護の)当事者が日々直面してる現実を知る機会は多くないため、非常に大切なテーマの番組だと思いました。介護という問題を取材する際は、家庭に入っていくことになりますが、3年間という長い年月をかけて取材されているとのことで、ご家族の本当の日常が映っていると感じました。

介護されているご主人が「愛情ではなくて情」とおっしゃったのが印象に残っています。奥さんのご様子から、症状は進行しているものの、お人柄はそのまま残っているんだろうなと思います。サポートをすることが増えているけれど、ご夫婦の関係性そのものが変わったわけではない。そんな夫婦のかけがえなさが映っていて、心に響きました。

――介護離職という問題についてどう思いますか?

人生を重ねていくと、いつか誰かの助けを借りなくてはならない。このことは、みなに等しく訪れるものだと思います。家族の中だけで解決できる問題ではない介護を、制度として国や行政が下支えをしていくべきだと感じました。

高齢化が進むなかで、決して他人事ではなく、ますます身近になっていくテーマです。介護に悩む方たちのサポートに国が舵(かじ)を切るよう促すために何ができるのか、考える機会になりました。

介護が家族に丸投げになっているお宅はすごく多いと思います。まして、ご主人の康弘さんは働き盛りで、まさにこれからというところで離職をされたのですから、本当に重い決断だったでしょうし、社会全体で見ても経済的損失も大きいはず。このような方が職を手放さなくてもいい世の中になってほしいです。介護離職は、経済成長の面でもマイナスです。だからこそ、支援を通じて国全体が豊かになるという視点で真剣に考えるべきだと思います。

――視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。

かけがえのない日常の大切さが感じられる作品です。私自身、去年体調を崩して療養した経験があるので、介護離職されたご主人に体調不良が見つかる場面は、他人事とは思えませんでした。

「自分が支えなければ」と奮闘されるご主人が病を得たとき、支えてくれる人があまりに少ない現実はつらいものがありました。しんどい人・つらい状況を“ないもの”にしないで、手を差しのべられる温かな社会であってほしいと願います。ひとりひとりが見て、考えることがやさしい社会への一歩になるのではと思います。ぜひ多くの方にご覧いただきたいです。