実は約7割の女性が、生理中に下腹部痛や貧血などの症状に悩まされています。そこで今回は、症状の原因や気をつけたい症状をご紹介。受診の目安も解説するので、あなたの症状が正常範囲なのか受診が必要な症状なのか、ぜひ確かめてみてください。
生理の症状に悩んでいるのは約7割!

全国の15~60歳の女性300人に、生理の症状に関する調査を実施(※)。生理中に不調を感じる人は約7割にのぼることがわかりました。
不調を感じる日数については、“2~3日”と答えた人が約8割を占めており、多くの女性が生理のたびに数日間の影響を受けているようです。特に、日常生活に支障をきたす症状として、“身体的な不調(腹痛、腰痛など)”が8割以上と最多でした。
また、“疲労感・無気力感”“イライラ”“集中力の低下”など、メンタル面での悩みを抱えている人も2~3人に1人と高い割合を示しています。仕事や学業、家事などのパフォーマンスに大きく影響が出ている人も少なくないでしょう。
生理中に多い不快な症状は?

生理中に多い不快な症状には、下記のようなものがあります。
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下腹部痛
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腰痛
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便秘・下痢
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頭痛
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貧血
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食欲の増減
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イライラ
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気分の落ち込み
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眠気
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吐き気
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むくみ
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発熱
編集部では、全国の15~60歳の女性300人を対象に、生理の症状に関する調査を実施(※)。アンケート結果をもとに特に多かった症状を取り上げ、その原因を解説します。
下腹部痛で悩む人は最多の約8割
生理中の不快な症状の中でも、下腹部痛や腰痛に悩む人は非常に多いようです。アンケート調査によると、下腹部痛を感じる人は約8割、腰痛を訴える人も約5割にのぼりました。
下腹部痛や腰痛には、子宮から分泌されるプロスタグランジンが関係しています。プロスタグランジンとは、経血を外に出すために子宮を収縮させる働きを持つ物質。過剰に作られると子宮が強く収縮して下腹部痛につながり、血行が悪化して腰痛も起こりやすくなります。
痛みが強い人や、生理2~3日目のような量が数日続くほど経血量が多い人は、子宮筋腫やポリープの可能性もあります。よくあることだからと放置せず、婦人科を受診しましょう。
便秘・下痢がある人は約5割も
生理中は、お腹の調子も悪くなりやすい傾向があります。アンケート調査では、約5割の女性が生理中に便秘・下痢の症状を経験していると回答しました。
便秘・下痢になる原因は、プロスタグランジンの働きによるもの。子宮を収縮させるだけでなく、胃腸にも影響を与えて便通が滞ったり、お腹が緩くなったりします。
頭痛がつらいと感じる人は3割以上
生理中の頭痛に悩む人は3割以上にのぼることが、アンケート調査からわかりました。ズキズキとした痛みや、ガンガン響くような痛みを感じる人もいるなど、頭痛の症状は人それぞれ。特に生理2日前から生理開始後3日目までの期間に、頭痛を感じやすい傾向があるようです。
頭痛に関係しているのは、女性ホルモンのエストロゲン。子宮内膜を厚くして妊娠に備える重要なホルモンですが、分泌量の増減が片頭痛の引き金になることがあります。
3割弱の人には貧血の症状も
アンケート調査によると、生理中の貧血症状に悩む女性は3割弱という結果に。経血量が多いと顔が青ざめたり、立ち上がったときにふらついたりすることがあります。
また、貧血で鉄分が足りなくなると赤血球に含まれるヘモグロビンが酸素を運べず、体が酸素不足に。めまいや頭痛などの症状があらわれるケースもあります。
生理痛が起こるのはなぜ?4つの原因

生理痛が起こる原因としてよく挙げられる、4つの原因を解説します。原因を知って生理痛への理解を深め、対策を考える参考にしてください。
プロスタグランジンの過剰分泌は痛みのもとに
生理痛の主な原因は、子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンの働きによるもの。プロスタグランジンは子宮を収縮させて経血を排出しますが、分泌量には個人差があります。分泌量が多いと強く収縮し、痛みが増すという仕組みです。
生理痛用の市販薬には、プロスタグランジンの分泌を抑える成分が配合されています。薬を服用すれば子宮の過剰な収縮が和らぎ、生理痛緩和の効果が期待できるでしょう。
子宮の出口が狭いと痛みが出やすい
子宮の出口が狭いと、経血を排出する過程で子宮を強く収縮させる必要があるため、生理中に強い痛みを感じやすい傾向があります。特に、10代の若い女性に多いとされる原因のひとつです。
すべての人に該当するわけではありませんが、出産を経験すると生理痛が軽くなるケースもあります。子宮の出口が広がり、経血がすんなりと排出できるようになるためです。
冷えによる血行不良で痛みが悪化しやすい
生理中は体温が下がり、痛みが悪化しやすい状態になります。また、子宮を収縮させるプロスタグランジンには、血管を収縮させる働きもあります。体が冷えて血液が流れにくくなると、プロスタグランジンが骨盤内に溜まりやすくなり、下腹部痛や腰痛などが引き起こされます。
体が冷えるほど痛みが増す傾向があるため、お腹や腰を温めたり、温かい飲み物を飲んだりといった血流を促進する対策をしましょう。冷たい飲み物や生野菜の食べすぎは控えめにして、体を冷やさない工夫を取り入れてください。
心身のストレスは自律神経バランスを乱す原因に
ストレスも生理痛を悪化させる大きな要因のひとつです。仕事や人間関係などによるストレスは、ホルモンバランスや自律神経の働きを乱し、血液の流れを悪化させます。
自律神経のバランスが乱れると、体温を調整する機能も低下。体が冷えやすくなり、血行不良が進行して生理痛が強まる悪循環に陥ります。
ストレス解消には、適度な運動や趣味の時間を取り入れましょう。十分な睡眠時間を確保することも、ホルモンバランスを整える助けになります。リラックスできる時間を意識的に取り入れてください。
放っておかないで!生理中の気をつけたい症状

生理に伴う症状の中には、早めに対処が必要なサインがいくつかあります。特に注意が必要な症状を紹介するので、心当たりがあったら放置せずに婦人科を受診しましょう。
生理痛がひどい・月経量が多い
生理で毎月強い痛みに悩まされる人や、月経量が多い場合は、月経困難症の可能性があります。月経困難症のタイプは、器質性月経困難症と機能性月経困難症の2種類です。
器質性月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気により引き起こされます。一方、機能性月経困難症は特定の疾患ではなく、子宮や血管の過剰な収縮が原因です。
どちらのタイプなのかを自己判断するのは難しいケースも多いため、婦人科で一度検査するとよいでしょう。痛みや症状を和らげる、適切な治療法を提案してもらえます。
生理が何ヵ月もこない
生理が何ヵ月もこないときは、体に何らかの異常があるおそれもあります。特に妊娠の可能性がある場合やピルを服用していないのに生理がこない場合は、原因を特定するために婦人科で検査を受けましょう。子宮や卵巣に問題がある可能性があります。
検査を受けて具体的な原因が明らかになれば、適切な治療を進めることが可能です。早めに婦人科を受診し、症状の悪化を防ぎましょう。受診の目安は生理がこない期間が“3ヵ月”です。
妊活中だが生理周期が安定しない
妊活中に生理周期が安定しない場合、排卵やホルモンバランスに問題がある可能性があります。
数日程度の周期のずれは珍しくありませんが、毎月大きく周期が変わるときは、多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)のおそれもあります。卵子が入っている卵胞の成長が止まる病気で、不妊の原因になります。
また、経血量が少なすぎる人は無排卵周期の可能性もあります。正常に排卵できていないと妊娠が難しくなるため、まずは一度検査しましょう。
つらい生理の症状は無理しないで!市販薬や婦人科を頼ろう

全国の15~60歳の女性300人に行った生理の症状に関する調査(※)において、生理痛対策についてアンケートを実施。約6割の人が、体を温めてセルフケアしていることがわかりました。
しかし、ホルモンの乱れを日々の生活習慣でコントロールするのは難しいもの。つらさを感じたら我慢せず、市販の鎮痛剤を飲みましょう。生理中の数日間だけ鎮痛剤を服用しても、くせになるということはありません。
また、痛みが強いときや違和感があるときは、婦人科への相談をおすすめします。生理を治療薬などでコントロールすることは、体にとって悪いことではありません。自分に合った対処法を見つけて、負担の少ない生活を送りましょう。
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アンケート調査内容:生理前の症状に関する調査
調査期間:2025年1月16日
調査対象:全国の15~60歳の女性300人
調査方法:インターネット調査
この記事の監修者
勝どきウィメンズクリニック院長| 松葉 悠子

ープロフィールー
これまで周産期センターでの勤務を中心に産婦人科診療に研修、従事。東京大学医学部付属病院、日立製作所日立総合病院、恩賜財団母子愛育会 愛育病院などの勤務を経て、2015年に勝どきウィメンズクリニックを開業。2024年には晴海ウィメンズクリニックも開業し、理事長に就任。
— 経歴 —
金沢大学医学部医学科卒
東京大学医学部付属病院・日立製作所 日立総合病院・東京都保健医療公社 豊島病院・恩賜財団母子愛育会 愛育病院などに勤務