生理前になると眠くてだるい、イライラするといったPMS(月経前症候群)の症状に悩む女性は少なくありません。本記事では、生理前に起こりがちな症状について、アンケート調査を交えて徹底解説。不快な症状を緩和するために、ぜひご一読ください。
生理前の不快な症状はPMS(月経前症候群)かも?

生理前に体調不良やイライラ感といった不快な症状がある場合、PMS(月経前症候群)の可能性もあります。PMSは生理の3~10日前から始まり、生理が来ると自然に症状が落ち着きます。具体的な身体的・精神的症状は、下記のとおりです。
身体的症状
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腹痛
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腰痛
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乳房の張り
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おなかの張り
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頭痛・めまい
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吐き気
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むくみ
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食欲の増減
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倦怠感
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発熱
精神的症状
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イライラ
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抑うつ
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不安
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眠気
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情緒不安定
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集中力の低下

PMSの主な原因は、エストロゲンとプロゲステロンの変動です。エストロゲンは乳房や子宮の発達にかかわり、プロゲステロンは妊娠しやすい状態を維持する女性ホルモン。生理前になると2つのホルモンの分泌量が低下し、脳内のホルモンや神経伝達物質の働きに変化が生じてPMSになると考えられています。
生理前にどんな不調を感じる?みんなのPMS事情をアンケート調査

全国の15~60歳の女性300人に、生理前の症状に関するアンケート調査を実施しました。最も多く挙げられた症状は“イライラや怒り”の約6割。“気分の浮き沈み”“眠気”も4割を超えており、精神的な症状を感じる女性が多いことが伺えます。
身体的な症状では“肌荒れ・ニキビ”、“乳房の張り”、“腹部の張りや痛み”がそれぞれ約4割という結果に。PMSの症状が現れるタイミングについては、“2~3日前”が最多で約4割を占め、次いで“4~6日前”が3割弱でした。
調査結果から、PMSの症状は精神的・身体的な不調が複合的に現れることが多く、女性の生活に影響を及ぼしていることがわかります。
いくつ当てはまる?生理前症状をチェック

生理前のPMSの症状は人によってさまざまで、200種類以上あるといわれています。1人ひとりが感じる症状は異なり、同じ人でも月によって症状の種類や強さが変化するケースもあります。ここでは、多くの女性が経験する代表的なPMSの症状を説明していきます。
感情のコントロールが難しくなる
生理前に、感情のコントロールが難しくなると感じる人は少なくありません。気分の落ち込みやイライラには、女性ホルモンの変動が深く関わっています。女性ホルモンが変動すると、心の安定に重要な役割を果たすセロトニンという物質の分泌量も低下するためです。
セロトニンには、喜びや快感を感じるドーパミンや、恐怖や驚きを感じるノルアドレナリンといった脳内物質の働きを調整する機能もあります。セロトニンが低下すると感情のバランスが乱れ、普段より怒りっぽくなったり、不安を感じやすくなったりするといわれています。
ズキズキと頭痛がする
生理前に頭がズキズキと痛くなる症状は、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの急激な減少によって引き起こされます。
エストロゲンが減少すると、セロトニンの分泌も低下。セロトニンには血管を収縮させる働きがありますが、減少すると脳内の血管が拡張します。血管の拡張によって頭部の神経が刺激され、ズキズキとした頭痛が起こる仕組みです。
生理前でも下腹部痛がある
生理前から下腹部に痛みを感じる女性も少なくありません。痛みを感じるのは、子宮を収縮させる作用があるプロスタグランジンという物質が関係しています。
プロスタグランジンには、痛みや炎症を誘発する働きもあります。生理に向けてプロスタグランジンの分泌量が増加すると、生理前から下腹部がじわじわ痛むような症状が現れます。
吐き気がして食欲が湧かない
生理前の吐き気や食欲不振は、プロスタグランジンの分泌増加が主な原因です。
プロスタグランジンは体内で必要以上に分泌されると、子宮だけでなく周辺の臓器や筋肉まで収縮させます。胃の不快感や吐き気が起こるのは、胃腸にも影響が及ぶためです。食欲が湧かず、食事がつらくなる人もいます。
体温が上昇して熱っぽい・だるいと感じる
生理前は体温がいつもより高くなり、だるい・熱っぽいと感じることがあります。
体温上昇を引き起こすのは、排卵後から生理が始まるまでの黄体期に分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)。個人差はありますが、体温が37℃近くになる場合もあります。
生理が始まると、プロゲステロンの分泌量が低下。体温が下がり、だるさや熱っぽさも緩和されます。
眠くて作業に集中できない
生理前は眠くなりやすく、仕事や勉強に集中できない状態が続くこともあります。朝までしっかり眠ったつもりでも疲れが取れず、日中に眠気を感じてしまう人も多いでしょう。生理中の日中の眠気には、体温の上昇による睡眠の質の変化が関係しています。
通常は1日の中で変動する体温が、生理前はプロゲステロンの影響で高いまま変化しない状態が持続。質のよい睡眠が取りにくくなるのは、夜になっても体温が下がりづらいことが一因です。
胸が張って痛みがある
生理前はプロゲステロンの増加により、胸の張りを感じることがあります。プロゲステロンが増えると乳房に血液が流れやすくなり、乳腺も刺激を受けて活発化。胸全体が張ったような感覚があったり、触れると痛みを感じやすい状態になったりします。
おりものが白・黄・茶・ピンクになる
生理前は、おりものの色や量が変化することも珍しくありません。色は白く濁るケースが多く、下着に付着すると黄色っぽく見えることもあります。生理直前には少量の経血が混ざり、茶色やピンク色になることもあります。
また、排卵後の黄体期に減少していたおりものは、生理が近づくにつれて徐々に増加。粘り気が強くなり、においも普段より強く感じられます。
食欲が増して体重が増える
生理前には食欲が増加し、体重も増えやすくなる傾向があります。生理中にプロゲステロンの分泌量が増えると血糖値を下げるインスリンの働きが低下し、上昇した血糖値をコントロールしにくくなるためです。
血糖値が上がると、血糖値を下げるためにすい臓から大量のインスリンが分泌されます。甘いお菓子や炭水化物を欲しくなるのは、血糖値の急激な低下による空腹感が原因です。
さらに、プロゲステロンには体に水分をためやすくする働きもあります。食欲の変化と水分の保持が重なり、体重が増える女性も多く見られます。
生理前症状(PMS)と上手につきあう方法

PMSは多くの女性が経験する症状ですが、適切な対処法を取り入れることで、症状を軽減しやすくなります。自分に合った方法を見つけ、PMSと上手につきあっていきましょう。
みんなが実践している対処法

全国の15~60歳の女性300人を対象に行った生理前の症状に関するアンケート(※)では、PMSへの対処法として“十分な睡眠をとる”が約4割という結果に。
続いて“体を温める”“ストレス軽減のためリラックスする”という回答もそれぞれ2割以上見られました。体調や気分を整えるために、具体的な工夫を行っている人が多いようです。
一方で“特に何もしていない”という回答も約3割あり、対処法がわからずそのまま不調を抱えている人も少なくないことがわかりました。
アンケートでは少数派でしたが、症状がつらいと感じるときは我慢せずに婦人科や心療内科を受診することをおすすめします。症状は人それぞれ異なるため、自分に合った対処法を見つけていきましょう。
リラックスして過ごす
生理前の症状を軽減するためには、リラックスして過ごすことが大切。例えば、ぬるめのお湯にゆっくり浸かりながらアロマキャンドルを灯したり、寝る前のスマートフォンの操作を控えたりなど、おやすみ前の過ごし方を工夫してみてはいかがでしょう。
ほかにも音楽を聴いたり、読書や編み物といった趣味に興じたりと、リラックスできる過ごし方は人それぞれ。普段から自分に合うリラックス法を見つけておき、つらい症状の緩和に役立てましょう。
薬でつらい症状を緩和する
生理前の不快な症状を和らげるには、医師に相談して薬による治療を選ぶ方法も有効です。薬を用いたPMSの治療法には、主に排卵抑制療法・漢方療法・対症療法があります。
排卵抑制療法
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排卵を止めて女性ホルモンの変動を抑えることで、PMSの症状を軽減する方法
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低用量ピルや低用量エストロゲン、プロゲスチン配合薬を使用し、少ないホルモン量で排卵を抑制する
漢方療法
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1人ひとりの症状や体質に合った漢方薬を選んで治療する方法
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使用される漢方は当帰芍薬散や加味逍遥散などが一般的
対症療法
- PMSの症状に合わせて薬を使い分ける治療法
- 痛みには鎮痛剤、むくみには利尿剤、精神的な症状には精神安定剤などの薬を使用する
サプリメント(医薬品)
- 市販されているPMSの症状を緩和してくれる医薬品
- 医療機関や調剤薬局で購入できるPMS用サプリメント
つらい症状が続くときは婦人科を受診し、自分に合った治療法を見つけましょう。
1人で悩まないで!PMSがつらいときは婦人科を受診しよう

心の不調が強く仕事・学業に集中できないといったつらい症状が続くときは、PMSの中でも精神的な症状が特に重いPMDD(月経前不快気分障害)の可能性もあります。生理前の症状で日常生活に支障を感じるときは、1人で悩まず早めに婦人科を受診しましょう。
婦人科では、症状の程度や体質に合わせて低用量ピルや漢方といった治療法を提案してもらえます。受診の際は、毎月の症状や基礎体温をメモしたノートやアプリのデータなどを用意しておくと、より適切な診断につながるでしょう。
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アンケート調査内容:生理前の症状に関する調査
調査期間:2025年1月16日
調査対象:全国の15~60歳の女性300人
調査方法:インターネット調査
この記事の監修者
勝どきウィメンズクリニック院長| 松葉 悠子

ープロフィールー
これまで周産期センターでの勤務を中心に産婦人科診療に研修、従事。東京大学医学部付属病院、日立製作所日立総合病院、恩賜財団母子愛育会 愛育病院などの勤務を経て、2015年に勝どきウィメンズクリニックを開業。2024年には晴海ウィメンズクリニックも開業し、理事長に就任。
— 経歴 —
金沢大学医学部医学科卒
東京大学医学部付属病院・日立製作所 日立総合病院・東京都保健医療公社 豊島病院・恩賜財団母子愛育会 愛育病院などに勤務