暑い季節でもないのに大量の寝汗をかき、そのせいでよく眠れないという悩みは、更年期のホットフラッシュが原因かもしれません。ホットフラッシュとは、のぼせやほてり、発汗などがあらわれる症状のこと。
十分な睡眠が取れないと日常生活にも支障をきたすようになるため、早めに原因を見つけて対策をしましょう。この記事では、寝汗の原因と具体的な対処法まで詳しく説明します。更年期の不快感を解消して、すっきりした日常を取り戻しましょう。
更年期の寝汗はホットフラッシュ!生活にどんな影響がある?

人は寝ているときにコップ1杯分(200~250ml)の寝汗をかくといわれています。ただし、寝ているときに更年期によるホットフラッシュが起きると、大量の汗をかいてしまい途中で目が覚めることもあります。生活への具体的な影響を見ていきましょう。
夜中に何度も目が覚める
寝汗をかくことで寝具やパジャマが濡れると、睡眠中に何度も目が覚める“中途覚醒”の状態になりやすくなります。
朝起きたときにすっきりせず疲れが残っていたり、目が覚めた後に寝付けなくなったりするほか、ひどくなると睡眠障害をきたすリスクもあります。
寝汗をかいて冷える
手足の冷えは更年期の症状の代表的なものですが、同時に暑くて汗が止まらない状態にもなります。大量の汗によって寝具やパジャマが濡れると体が冷える原因になり、風邪をひきやすくなるなど、体調不良の原因にもなります。
においが気になる
エストロゲンの分泌量が低下している更年期は、体臭が気になる年代でもあります。寝汗をかいて長時間ベッドの中にいると、夜お風呂に入ったにもかかわらず、朝からにおいが気になることもあるでしょう。再度シャワーを浴びたり、頻繁な寝具の交換が必要となるなど、洗濯も大変になります。
寝汗の原因は?
寝汗の原因は、更年期症状によるホットフラッシュだけではありません。ホットフラッシュにも関係する、寝汗の具体的な原因を解説します。
女性ホルモンの減少による自律神経の乱れ
寝汗をはじめとする更年期症状の原因は、エストロゲンという女性ホルモンが作れなくなること。加齢に伴い、脳の視床下部でコントロールされているエストロゲンの分泌は低下します。
視床下部は自律神経のコントロールも担っているため、機能が低下すると卵巣にも影響が及ぶ仕組み。体温調整がうまくいかなくなり、急に大量の汗をかいたり体の末端が冷えたりします。
ストレスや緊張などによる自律神経の乱れ
過度なストレスや緊張などによって、交感神経と副交感神経がうまく切り替わらず自律神経が乱れ、体温調整ができずに大量の汗をかくこともあります。
更年期は、管理職など社会的に責任のある立場になる人が増え、子どもの受験や親の介護、パートナーとの関係など、多くのストレス要因が重なる時期。それらのストレスと更年期特有の変化が複雑に絡み合ってホットフラッシュが起こり、大量の寝汗に悩む人がいます。
更年期の寝汗の対処法

寝汗の主な原因には自律神経の乱れが挙げられるため、自律神経を整える生活を心がけることが大切です。ここでは、更年期による寝汗の具体的な対処法を紹介します。
規則正しい生活習慣を心がける
更年期に寝汗をかくのは、ホットフラッシュという症状のひとつ。女性ホルモンのバランスの変化による体温調節機能の乱れが原因です。
直接的に寝汗を止めるというより、根本的な原因に着目して対処するとよいでしょう。
そのためには、体温調節を担う自律神経を整える生活を意識することが重要です。以下の3つを見直してみてください。
- バランスのよい食事
炭水化物・タンパク質・脂質の三大栄養素をバランスよく摂りながら、ビタミンやミネラルもしっかり補う食事を意識。アルコールや辛い食べ物を控えることも大切です。
- 適度な運動
ウォーキングやヨガなど、無理のない範囲で適度な運動を取り入れましょう。例えば1時間のウォーキングを週4回程度行うと、よい睡眠にもつながります。
- 良質な睡眠
寝室の環境を整備して、寝る前にパソコンやスマートフォンなどの明るい画面を見ることを避けましょう。アルコールやカフェイン、喫煙もよい睡眠の妨げに。起床時間、就寝時間を同じにして、規則正しいリズムを守りましょう。
寝具と室温を調節する
更年期のホットフラッシュが原因とはいえ、寝汗をかく大きな原因は暑さです。
シーツやふとん、パジャマなどの直接肌にあたるものは、汗をかいても不快に感じにくい綿やリネンといった通気性のよい素材がおすすめです。
室温は涼しめに設定し、湿度は40〜60%に保つことで過剰な寝汗を予防できます。
がまんしないで!クリニックで行う主な治療法
更年期による寝汗がひどい場合には、クリニックでも治療できます。つらい症状はがまんせずに、婦人科で相談してみましょう。
ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法(HRT)とは、女性ホルモンを薬で補充する治療法。更年期の症状であるのぼせやほてり、発汗などのホットフラッシュに効果が期待できます。
寝汗がホットフラッシュの症状だった場合は、ホルモン補充療法(HRT)の効果が期待できるでしょう。寝汗が原因で不眠気味の人は、婦人科で相談することをおすすめします。
漢方薬
既往症などでホルモン補充療法(HRT)が受けられない人やホルモン補充療法(HRT)に抵抗がある人には、漢方薬が処方されることがあります。症状によってはホルモン補充療法(HRT)より高い効果が得られることもあるようです。
ただし効果には個人差があるため、医師と相談しながら適切な治療法を選びましょう。
この記事の監修者
クレアージュ東京 レディースドッククリニック 婦人科顧問|大島 乃里子 医師

— プロフィール —
婦人科腫瘍のほか女性医学の専門医でもあり、思春期から老年期までの女性の生涯におけるヘルスケアを担う。一人ひとりの患者さんに向き合った治療を行っている。
— 経歴 —
医学博士
日本産科婦人科学会専門医
日本婦人科腫瘍学会専門医