若い頃から悩んでいる人も多いむくみ。更年期になり、ますますむくみがひどくなった、朝からすでにむくんでいるという悩みも耳にします。そこで本記事では、更年期とむくみは本当に関連性があるのか、多くの人が持っている疑問を解決。セルフケアで改善しない、むくみがつらいと悩んでいる場合には、ほかの疾患の可能性も考えてみましょう。
更年期特有のむくみはない

むくみはどの年代にも見られ、どちらかというと更年期よりPMS(月経前症候群)の症状として出やすいものです。そのため、むくみと更年期との直接的な因果関係はないと考えられます。
女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の量の変化により水分がたまりやすくなる、加齢による筋肉量の低下や運動不足からむくみが出やすいという解説もあります。
むくみに悩んでいる人は、むくみの原因を知ったうえで適した対処法を実践する必要があるといえるでしょう。
むくみのメカニズムと肥満との違い
むくみが起こると見た目も太くなり体重も増加するため、太ったと勘違いする人もいます。むくみが起こるメカニズムや、むくみと肥満との違いを解説します。
むくみのメカニズム
むくみは“細胞間液”という水分が過剰になることで起こります。細胞間液の役割は、動脈では血液によって運ばれる酸素や栄養素を含んだ水分を細胞へ届け、静脈やリンパ管では老廃物を含んだ水分を回収することです。
リンパ管に入った水分は、ふくらはぎなどの筋肉が動くことにより心臓に向かって流れていきます。動脈や静脈とは異なり心臓のポンプ作用では流れないので、足の筋肉の働きがとても大切です。
運動不足や自律神経の乱れなどの原因で静脈やリンパ管の流れが悪くなると、水分の回収がうまくいかなくなり細胞間液が過剰に。その結果、皮膚が膨張して“むくみ”の状態になります。
むくみと肥満の違い
むくみは見た目に膨張して体重も増えるため、肥満と混同しがちです。しかし脂肪の増加による肥満は、水分が過剰になるむくみとは別物。過剰な水分によって起こるむくみはすぐに体重が増加するのが特徴ですが、ほとんどの場合が一過性のものです。
むくみが起こりやすい理由

むくみが起こりやすい理由としては、以下のようなものがあります。
- 塩分の摂りすぎ
体には体内の塩分濃度を一定に保つ機能があります。塩分を摂りすぎると、塩分濃度を薄めるために体内に水分を溜め込むことで、むくみが生じます。
- アルコール
血中のアルコール濃度が高くなると血管が拡張し、血管から水分が漏れ出してむくみの原因となります。
- 女性ホルモンの影響
女性ホルモンの変動が起こり、体内に水分をためやすくなります。
- 血流の低下
長時間の座位、冷え性などで血流が低下すると、静脈やリンパ管の流れが悪くなりむくみやすくなります。
みんなのむくみ対策!1位は“マッサージ・ストレッチ”

全国の40〜65歳の女性300人に“更年期の症状に関する調査”を独自に行ったところ、160人が“更年期に何らかの症状を感じたことがある”と回答。そのうち、約38%にあたる61人がむくみを感じていることがわかりました。
また、同アンケートでむくみの対処法(複数回答あり)を聞いたところ、1位が“マッサージ・ストレッチ”で28人が効果があると回答し、続いて2位“入浴”、3位は僅差で“足を上げて寝る”という結果に。ほかにも“適度な運動”や“体を温める”ことでむくみ対策をしている人もいました。
更年期にむくみやすい人はほかの疾患の可能性も?
むくみで悩む女性は多いですが、閉経の前後5年間における更年期と、むくみの間に直接的な因果関係はないと考えられます。ただしむくみがなかなかとれない、むくみ以外の症状があるという場合には、ほかの疾患が隠れている可能性もあります。
日常生活を送る中で突然むくみだした、片方の足だけがむくんでいるという場合には、足に血栓ができているなどの可能性があるため、急いで受診することをおすすめします。むくみの症状が出る疾患は、腎不全や甲状腺疾患などが代表的です。不安を取り除くためにも、病院で診てもらいましょう。
この記事の監修者
クレアージュ東京 レディースドッククリニック 婦人科顧問|大島 乃里子 医師

— プロフィール —
婦人科腫瘍のほか女性医学の専門医でもあり、思春期から老年期までの女性の生涯におけるヘルスケアを担う。一人ひとりの患者さんに向き合った治療を行っている。
— 経歴 —
医学博士
日本産科婦人科学会専門医
日本婦人科腫瘍学会専門医