“寝つきが悪くなった”、“急に汗が出やすくなった”などの症状があり、“これって更年期?”と戸惑っている人も多いのではないでしょうか。更年期は多くの女性が通る道ですが、その症状は人によって大きく異なります。ここでは、更年期が始まる年齢や具体的な症状、対処法を詳しく解説。更年期を少しでも快適に過ごすためのアドバイスをお届けします。

更年期とは?いつから始まる?

更年期の症状や経過は個人により大きく異なり、体と心にさまざまな変化があらわれます。いくつかの症状が複雑に絡み合ってあらわれるため、卵巣機能の低下だけが主な原因とはいえません。

また、更年期によく見られる症状でも、他の病気が原因となっている可能性もあります。気になる症状は見て見ぬふりをせずに、医師に相談することが大切です。

更年期とは閉経の前後5年間のこと

更年期とは、月経が止まる閉経前後のおよそ5年間(計10年間)を指します。閉経を迎える年齢は平均50歳で、この前後5年間を更年期といいます。

ただし、閉経する年齢は人によって異なります。40代前半から更年期症状があらわれる人もいれば、50代後半になってから症状を感じる人もいます。

なお、更年期に体や心の不調が起こることを“更年期症状”、普段の生活に支障が出るほど強い症状を“更年期障害”と呼びます。

更年期とは生活習慣を見直すチャンス!

更年期は心身に不調があらわれやすい期間ですが、生活習慣を見直す絶好のチャンスでもあります。

更年期に体調の変化が起きるのは、エストロゲンという女性ホルモンの減少が主な原因。エストロゲンとは、下記のような体のあらゆる部分に作用している重要なホルモンです。

・血管運動神経系

・精神・神経系

・運動器官系

・泌尿器・生殖器系

エストロゲンは全身に影響しているため、更年期で分泌量が減ると、さまざまな部分に症状が出ます。

体調への影響を少なくして健康な状態を維持するには、生活習慣の見直しが欠かせません。バランスのよい食事や適度な運動、十分な睡眠など、毎日の生活習慣を整えることから始めましょう。

体調の変化を単にネガティブなものとして捉えるのではなく、自分の生活習慣を見直すきっかけとして前向きに捉えると、更年期を乗り越えやすくなります。

更年期にはどんな症状がある?

ここでは更年期の症状を4種類に分けて、それぞれの特徴を詳しく解説していきます。女性ホルモンの変化によって引き起こされるさまざまな症状について、理解を深めていきましょう。

みんなの更年期の症状は?

全国の40~65歳の女性300人に対し“更年期の症状に関する調査”を独自に実施したところ、300人中160人が“更年期の症状を感じたことがある”と回答しました。

最も多かった症状は“のぼせ・ほてり”です。5割以上の人が、のぼせやほてりを感じる“ホットフラッシュ“という症状を経験していることがわかりました。

次に多かったのは“イライラ・怒りっぽさ”、さらにその次が“疲労感”という結果に。他にも“気分の落ち込み”や“頭痛”を感じている人もいました。

更年期の症状は人それぞれです。不調を感じたら、無理をせずに病院を受診してみましょう。

血管運動神経系の症状

更年期に起こる血管運動神経系の主な症状は、下記のとおりです。

・ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)

・発汗

・手足の冷え

多くの女性が経験するホットフラッシュでは、突然顔が赤くなったり、大量の汗をかいたりします。血行不良により、手足が冷えることもあります。

血管運動神経系の症状が起こるのは、エストロゲンの減少による自律神経バランスの乱れが原因です。

精神的な症状

精神的な症状も、更年期に起こる代表的な悩みのひとつです。

・不眠

・不安感

・イライラ

・憂うつ

夜眠れない、途中で目が覚めるといった不眠に悩まされる人もいます。また、些細なことでイライラしたり、漠然とした不安を感じたりすることも増えるでしょう。

身体的な症状

更年期には、下記のような身体的な症状があらわれます。

・肩こり

・関節痛

・頭痛

・めまい

・動悸

・むくみ

筋肉が緊張しやすくなることで、肩こりが引き起こされます。肩こりは更年期世代に限らず、デスクワークをしている人にもあらわれやすい症状です。

また更年期になると、手指の関節が痛んだり、腫れたりする症状がでてくる人もいます。

泌尿器・生殖器系の症状

エストロゲンの減少により、下記のような泌尿器・生殖器系の症状があらわれやすくなります。

・月経異常

・頻尿

・尿失禁

・性交痛

閉経が近くなると、月経周期が不安定になるケースは多いとされています。また、骨盤底筋の筋力低下によりトイレの回数が増えたり、尿もれが心配になる人もいます。

さらに、腟粘膜の乾燥や腟内の分泌物減少に伴い、性交痛を感じる人も少なくありません。

更年期症状の原因は3つある!

更年期症状は、卵巣機能の低下、精神・心理的因子、環境因子という3つの要素が複雑に絡み合ってあらわれます。

更年期は、体の変化だけでなく、人生の転換期とも重なりやすい時期。子どもの受験や独立、親の介護、仕事での昇進など、さまざまなライフイベントによるストレスが重なります。

更年期はエストロゲンの減少に加え、精神的ストレスや環境の変化が多い時期です。これらは全身に影響を及ぼすため、不調があらわれやすくなります。

更年期症状を楽にするには、働き方やライフスタイルを見直すこともひとつの方法です。“更年期だから”のひと言で片付けず、どのようにすれば問題を解決できるかを考えることが大切です。

更年期症状があらわれやすい人の特徴

更年期症状は、仕事や家庭環境などでストレスが多いとあらわれやすい傾向があります。完璧主義、神経質、依存心が強いといった性格や気質の人は、症状が強く出るケースもあります。

また、不規則な生活リズムや偏った食事習慣を続けている人も要注意です。乱れた生活スタイルは、更年期症状をさらに悪化させる原因となります。

たとえば、職場でのストレスを抱えながら食事を抜いたり、家事や育児に追われて睡眠時間が不足したりする生活を続けていると、更年期症状が強くなりやすいでしょう。

体調の変化を感じたら、普段の生活習慣や環境を見直してみてください。

更年期症状の対処法!3つのSTEPを紹介

更年期症状を和らげるための具体的な対処法を、3つのSTEPに分けて説明します。症状の程度に応じて、自分に合った方法を選んでいきましょう。

【STEP1】生活習慣を見直そう

更年期症状への対処は、まず毎日の生活習慣を整えることから始めましょう。規則正しい生活リズムを保ち、食事や運動、休息のバランスを整えると、多くの症状が和らぐ可能性があります。

生活習慣を見直す具体的なポイントは、下記のとおりです。

・タンパク質・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂取する

・ウォーキングやヨガなど、無理のない範囲で体を動かす

・毎日決まった時間に起床・就寝する

・入浴や読書など、リラックスタイムを設ける

できるところから少しずつ習慣づけていくとよいでしょう。普段の忙しさを言い訳にせず、自分の健康を第一に考えた時間の使い方を意識して行動してみてください。

【STEP2】セルフケアをしよう

生活習慣を見直してみてもなかなか症状が改善しない、でも病院に行く時間もないという場合には、ドラッグストアなどで購入できる漢方薬やサプリメントを試してみるのもひとつの方法。

更年期症状は女性ホルモン(エストロゲン)の減少が関係しているため、女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きをするエクオールの摂取がおすすめです。エクオールを摂取することで、更年期特有の症状の軽減が期待されます。
エクオールは、大豆イソフラボンに含まれるダイゼインが腸内細菌によって代謝されてできる成分。

ただし、大豆からエクオールを作り出せるのは“エクオール産生菌”と呼ばれる腸内細菌を持つ人のみ。日本人の場合、エクオールを作れるのは2人に1人ほどといわれています。

エクオール産生菌を持たない人は、大豆製品を摂取してもエクオールとしての効果は期待できません。このような場合は、適切な量のエクオールのサプリメントを服用するのがおすすめです。

【STEP3】病院を受診しよう

セルフケアでは症状が改善せずつらい症状が続く場合は、病院の受診を検討しましょう。医師による適切な診断と治療を受けることで、症状が緩和する効果が期待できます。

どの病院を受診するか迷うときは、まず更年期症状に詳しい婦人科を訪れるのがおすすめ。症状を伝えて、ホルモン補充療法や漢方薬など自分に合う治療の相談をしましょう。

早めに受診して適切な治療を受けることで、より快適な更年期を過ごせるでしょう。我慢は禁物なので、つらい症状があれば積極的に医師に相談してください。

この記事の監修者
婦人科医・医学博士|鈴木 美香 医師

—   プロフィール  —
産婦人科医・医学博士。婦人科、女性医学、漢方医学を専門とし、予防医療や労働衛生にも精通。多数の専門医資格を持ち、聖隷健康サポートセンターShizuokaの所長として活躍。国際学会での受賞歴もあり、共著書「フローチャート女性漢方薬」を出版。静岡県立大学客員教授も務め、女性の健康管理と予防医学の普及に尽力している。

— 経歴 —
浜松医科大学医学部卒業
浜松医科大学大学院修了
米国カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部がんセンターなどの勤務を経て
現在、聖隷健康サポートセンターShizuoka所長
特定非営利活動法人くすり・たべもの・からだの協議会副理事長も務める