最近寝つきが悪くなった、夜中に何度も目が覚めるなど、更年期になって睡眠のトラブルが増えた人も多いでしょう。この記事では、更年期におきる不眠の理由と対処法を解説します。更年期も質のよい睡眠をとるために、ぜひ参考にしてみてください。

更年期の不眠の特徴は?夜中に目が覚めることも

更年期に入ると、多くの女性が睡眠の質の変化を実感します。寝床に入ってもなかなか眠れない“入眠困難”や、夜中に目が覚めてしまう“中途覚醒”といった症状が代表的。これらの症状により長年の生活リズムが乱れ、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

更年期特有の症状であるホットフラッシュも、睡眠を妨げる大きな要因のひとつです。夜間のホットフラッシュで発汗や体温上昇が起きると、目が覚めたり深い睡眠が得られなかったりすることもあります。

さらに、更年期は精神的にも不安定になりやすく、不安やストレスを感じやすい時期。仕事や家庭でのストレス、将来への不安など、さまざまな心理的負担が睡眠の質を低下させてしまうことがあります。

不眠の症状が長期間続く場合は、単なる更年期症状ではなく、うつ病などの可能性も考えられます。特に眠れない日が続いたり、日中に強い眠気や疲労感を感じたり、気分の落ち込みが顕著な場合は、早めに専門医への相談を検討するなど、注意が必要でしょう。

みんなの不眠の症状は?

全国の40~65歳の女性300人に“更年期の症状に関する調査”を独自に行ったところ、約53%の人が不眠に悩んだ経験があると回答しています。

不眠の症状を詳しく聞いたところ、最も多かったのは“夜中に目が覚めてしまう”という回答で64人。続いて“寝つきが悪く入眠に時間がかかる”という声も多く聞かれました。さらに“眠りが浅く、早朝に目が覚めて再び眠れない”、“熟睡感が得られない”という回答もありました。

更年期の不眠の原因

更年期に起こる不眠は、卵巣機能の低下による女性ホルモンの減少に加え、精神・心理的因子、環境因子が複雑に関係することで生じます。

全身に作用する女性ホルモンの減少は、心身にさまざまな影響を及ぼす一因です。仕事や家庭でのストレス、生活環境の変化なども、症状を悪化させる要因になります。
更年期の症状は人によって大きく異なり、他の病気と見分けることも必要です。気になる症状がある場合は、専門医への相談を検討してみましょう。

不眠に効く漢方薬

更年期の不眠に対しては、“加味逍遥散(かみしょうようさん)”や“抑肝散(よくかんさん)”といった漢方薬による治療も選択肢のひとつとして考えられます。
ただし、漢方薬は個人の体質や症状によって合う薬が異なるため、医師や薬剤師に相談しましょう。

更年期への対処法!3つのSTEPを紹介

適切に対処すれば、更年期症状による不眠などの不調が軽減する可能性があります。以下の3つのSTEPで、対策を始めてみましょう。

【STEP1】生活習慣を見直そう

規則正しい生活リズムを整え、バランスの取れた食事と適度な運動を心がけることが基本です。
特に、決まった時間に起床・就寝することは、体内リズムを整えて心の安定を得るためにも重要。寝具や室温の調整など、環境を整えることも意識してみましょう。無理のない範囲で始めることがおすすめです。
またリラックスできる時間を確保し、ストレス解消法を見つけることも大切。夕食後に短時間散歩をするなど、毎日取り入れやすい習慣を見つけてみてください。

【STEP2】セルフケアをしよう

生活習慣を見直してみてもなかなか症状が改善しない、でも病院に行く時間もないという場合には、ドラッグストア等で購入できる漢方薬やサプリメントを試してみるのもひとつの方法。

更年期症状は女性ホルモン(エストロゲン)の減少が関係しているため、女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きをするエクオールの摂取がおすすめです。
エクオールとは、大豆イソフラボンから作られ、女性ホルモン(エストロゲン)と似た働きをする成分です。体内では、腸内細菌の働きによって大豆イソフラボンから作られますが、このエクオール産生菌を持っている人と持っていない人がいます。
大豆や大豆製品を食べても、エクオール産生菌を持っていない人の体内ではエクオールは作られず、通常の大豆の栄養成分として吸収されるだけ。

そのため、適切な量のエクオールのサプリメントを服用することで、エクオール産生菌の有無に関わらず効果が期待できます。

【STEP3】病院を受診しよう

生活習慣の見直しやセルフケアを行っても症状が改善しない場合は、医療機関の受診をおすすめします。

特に更年期症状に詳しい婦人科では、ホルモン補充療法や漢方薬による治療など、自分に合った治療法を提案してもらえるでしょう。つらい症状はひとりで悩まず、専門医に相談することで適切な治療法が見つかるかもしれません。

この記事の監修者
婦人科医・医学博士|鈴木 美香 医師

—   プロフィール  —
産婦人科医・医学博士。婦人科、女性医学、漢方医学を専門とし、予防医療や労働衛生にも精通。多数の専門医資格を持ち、聖隷健康サポートセンターShizuokaの所長として活躍。国際学会での受賞歴もあり、共著書「フローチャート女性漢方薬」を出版。静岡県立大学客員教授も務め、女性の健康管理と予防医学の普及に尽力している。

— 経歴 —
浜松医科大学医学部卒業
浜松医科大学大学院修了
米国カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部がんセンターなどの勤務を経て
現在、聖隷健康サポートセンターShizuoka所長
特定非営利活動法人くすり・たべもの・からだの協議会副理事長も務める