<清水有生(脚本)コメント>

このドラマは、酒場を舞台にしたれっきとした「医療ドラマ」です。 

スナックのママや接客係は、看護師や介護士、マネジャーはケアマネジャー、バーテンダーは管理栄養士とそれぞれが酒場と医療現場の二刀流。点滴の瓶がボトルキープされていて、「とりあえずビール」の前に平行棒で「とりあえずリハビリ」を終えてからというのが店のルール。 

そんな話を人に話すと、たいていは「ありえない」と冷たく笑われてしまう。本当にありえない話なのだろうか。取材をしてみると、こんな話に出会った。ビールが大好きな脳疾患のお年寄りのために、ビールにとろみをつけるとろみ剤が薬局で市販されているのだという。

嚥下(えんげ)機能が低下していると、水分でむせってしまい誤嚥性肺炎になってしまう危険があるので、とろみをつけるのだそうだ。その患者さんは、元気なときに通ったスナックでわずかでいいから酒を飲み、カラオケで歌うこと
を目標に、日々の治療とハビリに励んでいるのだという。

願わくば、介護保険のサービスの中に、お散歩介護やお買い物介護と並んで「酒場介護」を作ってほしいと語る患者さんの目は真剣だった。 

「ありえない」ではなく「あってほしい」という夢のようなお店の話を書かせていただきました。