若い才能を活かしたい「第5話がその最たるもの」
生方さんからは、風間監督に質問が。
生方:今(収録時点で)できている、第9話までの中で「好きな回はどれか?」みたいな話をして。
風間:村瀬さんと?
生方:そうです。私たち、一致して。(風間監督に)何話ですか?
風間:遠慮なく言えば、第5話。
生方:お!(拍手)
村瀬:3人一致。(拍手)
生方さんは、「紬と湊斗が別れるだけで1時間」(村瀬さん)という、第5話の初稿を「バカなふりして出しました」と語りました。
村瀬:正直、通らないと思ったでしょ?
生方:村瀬さんとか、村瀬さんの上のおじさんたちがダメって言うんだろうなと思って(笑)。
村瀬:(笑)。
風間:何ですかね。(第5話は)すごく、脱力しながら撮れたんですよ。
村瀬:ほぉー。
風間:生方さんの本とフィットした感じがすごくした。各々が自分と向き合っていく話だったじゃないですか。特に紬が。何かそういったものが丁寧に、1時間かけて描けるって贅沢(ぜいたく)だし、そういうのやりたいと思っていたところが。
村瀬:生方は「第5話は、ダメって言われるかも」って(思って)書いたじゃない。風間も、第5話は最初の長い1カットとか、例の伝説になった、電話をしている紬をずっと1カットで撮るみたいなのは、なかなか、テレビドラマではなくてさ。
風間:村瀬さんならOKしてくれるだろうと思ったし、感じ取ってもらえるだろうなと思って、撮ってました、あれは。
生方:だから、私も初稿を出しました(笑)。
風間:あはははは!
それを受け、村瀬Pは「今回、何がヒットした原因だと思いますか?って聞かれるんだけど…」と切り出しました。
村瀬:正直わからないじゃない、そんなの。長年やっていて、うまくいくときもあれば、うまくいかないときもあるんだけど、今回一つ言えるのは、自分が惚れた、新人の生方美久って人と、風間太樹っていう、ゴールデンやプライムは撮ったことがないって人の若い力が、この場所で。
テレビって結構若い人が出にくい場所だと思うのね。それがちょっとテレビの悪いところだと思うんだけど、例えば我々、ディレクター、プロデューサーってなかなか独り立ちするのに時間かかる。30過ぎて35、40くらいになってやっとメインプロデューサーになれたりするっていうのじゃ、遅いと思うんだよね。
そういう意味じゃ、圧倒的に僕より若い2人、しかも、まだ世に出きっていない、もちろん2人ともすごい才能なんだけど、そういう人に来てもらって、その人たちの才能をマックス活かす、ていうのをやりたいなと思ったの。それは、良かったと思う。
村瀬Pは「あの第5話は、その最たるもの」と、『silent』と2人への思いを明かしました。
地上波連ドラへの思いと最終回に向けて
村瀬Pは、サブスクメディアが台頭する中「地上波連ドラが話題になりにくかった中で、今回『silent』がこれだけ話題になったというのは、手ごたえを感じている」と語りました。
生方:私は、そもそも地上波の連ドラが好きで。自分がドラマが好きになった原体験みたいなのが、小学生のときに夕方くらいに再放送やっている月9とかを、学校が終わってすぐそれが見たいから急いで帰って、録画もしておいて、それを繰り返し見る、みたいな。
風間:うん。
生方:そのときは、再放送だから平日毎日。中学生、高校生になってから、毎週、この曜日の何時から見るというのが楽しみで見るというのが、自分が小さいころから当たり前になっていたので、そこはこだわっていきたいというか。
『silent』作っていても、第1話をどこで終わらせるかみたいな話って、結局はそこからの1週間、待つのを楽しみにしてもらったりという期間でもあるじゃないですか。それって一挙配信だったら味わえないことだから。そのリアルタイム感とか、自分が好きな脚本家さんの連ドラとか見ていても、リアルタイムでこの人の連ドラが見られるみたいなことがうれしいんですよね。
風間:うん。
生方:過去の名作とかを、今一挙に見るよりも、この時代の、今、作られたものを見られることがうれしいから。そう思ってくれる人が増えるといいなって気持ちで地上波の連ドラは作っていきたい。
風間:言われてみれば、僕もそうですね。確かに、月9だったり、そういったものが好きで。映画よりも先にドラマが好きになったかもしれないです。映像表現を志すときには、ドラマが先にあったかもしれないですね。
生方さんは『silent』でも一つのテーマになっている、「言葉」への思いにも言及。
生方:『silent』とかまさにそうですけど、日本語じゃないとつながらないものがあるじゃないですか。同じ言葉だけど、違う意味で使う、シーンによって違う意味とか、人によって違う意味でとらえられる言葉とか。あれって日本語じゃないと意味がないものを私はすごく使っていて。もし海外で翻訳されたら、海外の人には伝わらないんだっていう悲しさがちょっとあるくらい。
生方さんは、「私は、日本のドラマとして、日本語の良さとか、日本語の面白さ、ある意味残酷さみたいなものを書きたい」と、脚本家としての思いを語りました。
最後は、連続ドラマをリアルタイムで制作することについても。
村瀬:映画は、できあがって公開するときにはもう直せないけど、連ドラは大きくいえば(世間の)反応がある。風間の中で(演出に)影響したこととかってある?
風間:この反響がなければ、第5話でああいった思いきりのあるというか、挑戦的にはやれなかったかもしれないですよね。それは、村瀬さんもそうだと思うんですけど。
村瀬:まったく、そうです(笑)。
風間:演出するうえで、追い風になってくれるとか、興味をしっかりと長い1カットに対しても向けてくれるとか。そういう受け取り方はしちゃいますね。
村瀬:そうだよね。けど、最終回、いよいよオンエアになるんで。
風間:緊張しますね。本当に。
村瀬:するよね。本当に最終回は怖くて。今回は割と信じてるんだけど。どうやったって、「ああすればよかったのに」って言われるんですよ。連ドラの最終回って。どうしても、みんな、思いがあるから。
収録時点では撮影中の『silent』。村瀬Pは「きっと視聴者の方々に『silent』というドラマを見てよかったって言われる最終回になると信じている」と語り、風間監督も「2人にとっても、僕にとっても、いい最終回にできるように、撮影をがんばります」と応えました。
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