――本作は、一心が試練を乗り越える姿が描かれています。奈緒さんは「この経験で強くなれた」と思う出来事はありますか?

逆境と出会ったときもですが、一人で過ごす時間も自分を強くしてくれていると最近感じています。

今回の『大地の子』も、稽古場でみなさんと一緒に過ごす時間以上に、一人で台本と向き合う孤独な時間がとても多くなると思います。ですので最近は、「あぁ、みんなこうして孤独を味わって、それを持ち寄って作品を作っていくのかな」と感じていて。

また、上京した直後は誰かといるより一人で過ごす時間のほうが長かったので、いま思い返すと、あの孤独な時間も今の自分を支えてくれているのかもしれません。

奈緒 舞台は「自分の未熟さと向き合い続ける、苦しい時間」

――奈緒さんにとって舞台はどういうものですか?

一番苦しいものです。映像のように編集がない分、自分の実力をより直視しないといけないところがあって、落ち込むことも多いです。

考える時間があるというのも、一つ理由かもしれません。映像は「明日は次のシーンの撮影があるから」と、自分の中で区切りをつけて向かっていくのですが、舞台は稽古の段階から、毎日同じものにひたすら向き合うので、自分の人間としての未熟さと向き合い続けることになります。それはそれはすごく苦しい時間ですが、超えていきたい苦しみでもあると思っています。

――反対に、どんなところに楽しみや魅力を感じますか?

苦しみを超える魅力が本当にたくさんあると感じます。やっぱりお客さんと一緒に時間を共有できるというのは、舞台でしか味わえない楽しさですし、「この時間をみんなで一緒に生きてるんだ」というのをすごく実感できます。

その日の舞台でお客さんがどう感じるか、私自身も何を学ぶか、毎日何が起こるかわからないところも、舞台ならではの魅力だと思います。

――舞台に出演する上で大切にしていることはありますか?

物語という一つの虚像の中で演じるからこそ、本当に心が動く瞬間を感じたいと思っています。また、役者として、思考を固めてしまうことはすごく恐ろしいと思っているので、毎日新しい気づきを得て柔軟でいられるように、というのも大切にしています。

撮影:YURIE PEPE
ヘアメイク:竹下あゆみ
スタイリスト:岡本純子

『 大地の子 』公演概要

原作:山崎豊子『大地の子』(文春文庫)

脚本:マキノノゾミ

演出:栗山民也

出演・井上芳雄、奈緒、上白石萌歌、山西惇、益岡徹 ほか

公演日程:2026年2月26日(木)〜3月17日(火)

会場:明治座

主催 ・製作:明治座、東宝