――本作の演出・栗山民也さんとは舞台『恭しき娼婦』(2022年)で出会い、大きな影響を受けたそうですね。 

私はこの仕事を好きで始めたものの、「私がやっていて良いんだろうか?」という思いを抱えていた頃、栗山さんと出会いました。栗山さんの言葉やお稽古で過ごす時間に背中を押され、この仕事をしていこうと思えましたし、するからには覚悟を持って立ちたいという強い勇気をいただきました。

「無知は余白」知らない自分を責めても、学ぶことを止めてはいけない

――本作の製作発表で奈緒さんが、「無知」であることは「余白」でもあると表現していたのが印象的でした。

昨年は戦後80年ということもあり、戦争を題材にした作品と向き合う機会が多い1年でした。今も世界では戦争が起きていて、苦しい思いをしている人たちがいるという現実を受け止めることは、非常に心が痛みました。

人って、学んでいる物事があまりに苦しいものだと、知らないままでいることを選択しそうになったり、知らない自分を責めてしまったりすることもあると思うんです。でも、そこで学ぶことを止めてはいけない。そんな思いが自分の中に芽生えました。

じゃあ、どんなふうに物事を捉えたら、私は学び続ける姿勢を保てるだろうと考えたときに生まれたのが、「無知は余白だと考えよう」という発想でした。

昨年、戦時下でシベリアへ渡り大変な思いをされた99歳の方に取材をさせていただく機会があったのですが、「若い世代に伝えたいことはありますか?」とお聞きしたら、「とにかく学んでください」とおっしゃっていたのがとても印象的で。どうすれば、私たち若い世代が学ぶことに対して怖がらずにいられるのか、みんなで考えていきたいと改めて思いました。

――戦争孤児を描いた物語を、いまの時代に上演することに対して、どんな思いを抱いていますか? 

その99歳の方以外にも、戦争を経験した方々にたくさん取材をさせていただいたのですが、皆さん90代の方ばかりでした。5年後、“戦後85年”になったとき、私たちは皆さんからどれだけ直接お話を聞けるのでしょう。私たちは今、とても貴重な時間を生きているんじゃないかと改めて感じました。

だからこそ私は「正しく伝えていかなければいけない」という思いを強く持っています。伝えていく先には「戦争を繰り返さない」という多くの人の願いがあるので、戦争をテーマにした作品に携わり、伝えていくことには、大きな意義と責任があると思っています。