脚本の井上由美子さんと、演出の西谷弘監督が、木曜劇場『愛の、がっこう。』の各キャストの印象や、作品に込めた思いを語りました。

本作は、まじめすぎる高校教師・小川愛実(木村)と、文字の読み書きが苦手なホスト・カヲル(ラウール)、すれ違うことすらないはずの2人が出会い、大きな隔たりを越えて惹(ひ)かれ合うラブストーリー。

毎週、放送時にはXでトレンド入りを果たし、「切なくて涙が止まらない」「こんなに次回が待ち遠しいドラマは久しぶり」などの声が数多く寄せられています。

愛実とカヲルの関係と、2人を取り巻く不穏な展開に注目が集まるなか、井上さんと西谷監督に、本作の誕生秘話や撮影エピソードなどについて聞きました(前後編の前編)。

井上由美子“教師とホストの恋”で描きたかった純愛、格差、偏見

――井上さんと西谷監督は『白い巨塔』や『昼顔』、『シャーロック』に続いてのタッグとなりますが、どういった経緯で本作が立ち上がったのでしょう?

西谷:以前、別の企画でラブストーリーを作ろうと井上さんと話をしていたのですが、企画自体が流れてしまって。今回、井上さんともう一度話して、ゼロから再構築して始まりました。

井上:本作を提示したのは、昨年の夏です。大人のラブストーリーは観る人が減っているし、ホストと教師というのも難しい、とおっしゃるかな…と思っていたら、西谷さんが興味をもって下さって。

若い栗原(彩乃)プロデューサーにも、「どこかの片隅にいそうな二人の物語にしたい」と話したら共感してくれました。その時には『愛のがっこう』というタイトルは付けていました。

左から)栗原彩乃プロデューサー、井上由美子、西谷弘監督

――タイトルには、物語のカギとなる句読点も付いていましたか?

井上:その時は、まだ句読点は付いていなくて。でも『愛のがっこう』だけだとちょっと普通すぎて古くさいかなと。紙に何度か書いているうちに、今はメッセージのやり取りで使わない人が増えた句読点を入れてみると、逆に新鮮で。ささやかな存在の「、」や「。」に意味を込められるのは、このドラマに合っていると思いました。

――“教師とホストの恋”というアイデアはどこから生まれたのでしょう。

井上:今はボーダレスな時代に見えて、格差が広がっている気がします。聖職者とホストが惹かれ合えば、世間的にはおそらく歓迎されません。そんな分断や偏見を乗り越える2人を描きたいと思いました。

純愛って、ただプラトニックなことではないですよね。本当に人を好きになるってどういうことだろうと、私自身も考えながら脚本を書きました。

井上由美子 木村文乃&ラウールには会わず脚本を書き上げた

――主演の木村さん、ラウールさん本人の印象も、作品に織り込まれていますか?

井上:私は、お二人に一度もお会いしていないんです。通常のドラマだと、クランクイン前に台本の感触をお尋ねする機会がありますが、今回はご本人たちの麗しさや、才能に引きずられて、つい綺麗に、カッコよく書きたくなってはいけないなと思いまして(笑)。

私がもっとも信頼している西谷監督が、役者さんたちをうまく導いてくださる“西谷マジック”で、ほかにはない生々しいキャラクターになったと思います。

西谷:二人とも初めてお仕事をご一緒したのですが、集中力と瞬発力が抜群でしたね。そして、プラス冒険心が宿っているので、脚本、演出という設計図を超えていく表現に感動させられました。