木曜劇場『愛の、がっこう。』の脚本・井上由美子さんと、演出・西谷弘監督が、今の時代だからこそ感じるドラマづくりの難しさや、流行りについて語りました。
数々の話題作を手がけてきた井上さんと西谷監督が、『白い巨塔』や『昼顔』、『シャーロック』に続きタッグを組んだのが、現在放送中の『愛の、がっこう。』。

まじめすぎる高校教師・小川愛実(木村)と、文字の読み書きが苦手なホスト・カヲル(ラウール)が大きな隔たりを越えて惹(ひ)かれ合うラブストーリーです。毎週、放送時にはXでトレンド入りを果たし、多くの反響が寄せられています。
井上さんと西谷監督に、今時のドラマの視聴スタイルや、それに伴う作品づくりの難しさ、またタッグを組んで作りたい作品について聞きました(前後編の後編)。
西谷監督 後輩指導の面でも「難しい」と思う、令和の視聴スタイル
――お二人は平成初期からドラマづくりに携わっていますが、令和の今、どんな変化を感じていますか?
西谷:物理的なことで言うと、今は何かをしながら片手間に、ドラマや映画などがスマホで見られますよね。
この前も、若い方がお店でランチを食べながら、テーブルに置いたスマホでドラマか何かを見ていて。その様子を横目でちらっと見たら、ドラマがロングショット(人物をアップではなく引きで撮るショット)になった瞬間、画面から目を離してご飯を食べていたんです。
井上:それはショックですね。
西谷:ロングショットって、僕たちとしては力を入れて撮っているんですよ。ロケハンして、良い場所を探し回って、そこでどう撮るか考えて。
でも今時のドラマ視聴を考えるなら、役者の寄りのカットだけで切り替えて、キスシーンはツーショットにする、みたいな作りでもいいんじゃないかとも思います。僕は、そうはしませんけれど…。
後輩の監督が、役者にすごく細かな芝居をつけていても「スマホでは、そこまで見えないよ」とは言えないじゃないですか。細やかな演出で作品をつくる力は、鍛えていかないといけないし。そういう意味では難しいですよね。

井上: 最終話の内容を確認して、面白かったら第1話から見るっていう人もすごく多いですよね。漫画の大人買いのような見方でしょうか。
どんな見方でも観ていただければ嬉しいですが…私自身は「来週どうなるんだろう?」と、ドラマを見る楽しみを十分に味わってきた世代なので、淋しさはありますね。
でも、そういう現状に対して、「来週どうなるんだろう?」「この登場人物たちはどんなことを考えていくんだろう?」と、楽しみに思ってもらえるよう作っていくしかないと思います。やっぱり私はロングショットも見たいですし、飛ばしたり早送りしたりせずに見ていただけるものを目指したいですね。