──声優としてのお話も聞かせてください。後輩の皆さんとの関わりについて聞きたいのですが、先日、島﨑信長さんにインタビューした際、山寺さんの印象を「人に嫉妬するけど、それを自分の力に変えて高めているところが素晴らしい」と、話していました。
まず、嫉妬する時点で“ダメな奴”だろうという気がしますけど(笑)。素晴らしい人は嫉妬しないですから。
信長は、同郷(宮城県塩釜市)の可愛い後輩だから、きっと優しい心で受け取ってくれているんだろうなと思います。うれしいです。ありがとうございます。
──中村悠一さんは、「努力をしなければと思わされる(ヒーローのような)存在」と話していました。
アジアで最も影響力の強い声優である中村くんのその言葉を、世界中に発信してください。本当にうれしい。中村くん、そういうことはもっと言ってよ~という感じ(笑)。
ベテラン山寺宏一が抱く声優への思い「いい作品を誰よりもたくさんやりたい」
──後輩の皆さんが、それぞれに尊敬の眼差しで山寺さんを見ていますが、逆に後輩の皆さんのことをどのように見ていますか?
まずは、皆さんのそういう言葉で僕は声優として長生きできるなと感じています。皆さんの記事を見て、「そうなんだ!」と思ってお仕事をくださる方もいるかもしれませんからね(笑)。
逆にみんなのことをどう見ているか…『TO BE HERO X』に参加しているメインキャストのみんなは、20代から40代くらいまでの方が集まっていると思いますが、全員リスペクトしています。

よく大塚明夫さんと「この時代にデビューしなくて良かったな」と話すのですが、今の声優さんを取り巻く環境は僕らの若い頃とは全然違いますよね。特に作品が複雑化していて、小さい子どもはもちろん、大人の鑑賞にも耐える作品が増えているので、そこに対応できる表現力が求められますし。そういう環境でニーズに応え続けて、トップを走り続けている皆さんの対応力はすごいなと思います。
僕らデビューが10年、20年遅かったら、埋もれていましたよ。そんな話を明夫さんとして、お互いに「そんなことないよ」って慰め合うのが恒例になっています(笑)。
──皆さんの活躍に刺激を受けることもあるのでしょうか?
それぞれ個性があるので、一概には言えないですが、刺激を受けることもあります。
長くやっていると「徐々にいろいろなことに追いつけなくなっているな」と感じることもあって。世の中に何を求められているのか、そういうものをちゃんと把握して対応できる力がないと、今は活躍できないんじゃないかなと思うんです。だから、みんなの活躍を見ると、ちゃんと時代を読まなくちゃと思わされますね。

──「負けたくない」というような思いはありますか?
勝ち負けではないんでしょうけど、いい作品を誰よりもたくさんやりたいという思いはあります。まだまだ仕事をしたいですし、作品を理解する気持ちや、声優としての技術、心は無くさずにいたいですね。
でも最近の作品は、絶叫するものが多いのが気がかりです。この歳になると、絶叫する役はちょっと厳しいですから。「大変なのに、よくやってる」と思いながらみんなのことを見ていて…あ、野沢雅子さんは今でも絶叫していますね。あの方は規格外で、ちょっと比べてはいけない方です(笑)。
絶叫だけではないですが、体も心も鍛えて、どんな作品にも常に対応できるような声優であり続けたいなと思います。