母親が認知症を患っていることを公表したお笑い芸人の、にしおかすみこさん(50)。
認知症になった母のため、今は実家に戻り、家族のサポートと仕事を両立させる日々を送っています。
にしおかすみこ:
4人家族で、母が認知症で、姉がダウン症で、父が酔っ払いで私が一発屋っていう、その家族構成。
著書の「ポンコツ一家 2年目」では、そんな家族4人の生活が描かれています
11月に行われたトークショーの中では、母親が日常生活で部分的な介護が必要となる「要介護1」の認定を受けたことに触れ…。
にしおかすみこ:
要介護1ってことは、母、すごく頑張っているなっていうのがまず一個あったのと、結構やっぱり(症状に)ムラがあって、すごくしんどい時もあるから、(要介護認定)「いち~!?」って思ったのもあったし。
高齢者の約3.6人に1人が認知症、もしくは予備群といわれている今、もし自分の家族が認知症になったらどうすればいいのか?
にしおかさんに自身に起きた体験と、向き合い方を聞きました。
「背負わない」認知症の母への向き合い方と支援センターの助け
にしおかさんが、母親の異変に気がついたのは、2020年6月。
実家に帰省した際、家がゴミ屋敷になっており、掃除をしようとすると母親が「死んでやる」と発言。病院につれていくと、「初期アルツハイマー型認知症」の診断を受けました。
にしおかすみこ:
(家が)ちょっとしたゴミ屋敷になっていて、その中に座椅子があって、そこに母がぽつんと座っていて。私が掃除しようとすると「頭かち割って死んでやる!」と2階に上がっていくんです。そのとき、ダウン症の姉も一緒に連れて行くので、本当に死んだらどうしようと思って私も2階に上がると、寝ているっていう…。それを30分~1時間ごとに何回も「はじめまして」みたいな感じで繰り返すことが、“おかしい”と思いました。
(以前は)死ぬとかネガティブな言葉は決して使ってこない母だったので、すごくびっくりしました。
――お母さんだけでなく、お姉さんやお父さん、3人を見なくてはいけないというのはとても大変なことですね
だから最初から「背負わない」というのがありました。無理だろうと。もう本当に自分ができる範囲のことしかしないと思って(実家に)戻っています。
認知症や要介護認定のことなど分からずに生活する中、2021年1月に友人から、地域住民の援助をしてくれる「地域包括支援センター」への相談を進められたといいます。
にしおかすみこ:
何に悩んでいるかも分からなかったんです。でもすごく毎日疲れていて、何を相談したらいいか分からないと言ったら、友人が「それをしゃべればいい」と。何を解決したということはないんですけど、“小さなストレス”や“小さなやらなくてはいけないことがいっぱいあること”に私は疲れているんだということが、自覚できた。
認知症の母と生活を続ける中で、にしおかさんは、“自分ファースト”を心がけているといいます。家族を見守るために仕事を辞めるという選択肢はとりませんでした。
にしおかすみこ:
自分が元気で自分が一番幸せじゃないと、家族も幸せにできないと思っていますし、私の場合仕事は、生活費を稼ぐ、家族を養うだけでなく、仕事と好きなことが直結しているんですよ。
だからこれを手放したくないと思っているので、介護離職をしたくないと思っていますし、母もそれを望んでないと思います。だから、仕事は大事にするし、「自分ファースト」でと思っています。
また、母親を見守る際にはあえて、「これはダメ」「あれやっちゃダメ」などは言わないよう心がけているといいます。にしおかさんが仕事に行くときも、「外に出ないでね」とは言わないそうです。
にしおかすみこ:
絶対に言わないですね。母の人生ですから、一緒に暮らしているとなんとなく不安で「あれやっちゃだめ」といいそうになるんですけど、私の不安のために母の残りの人生の範囲を狭めたくないなと。
極論、どこかに行って迷子になって戻ってこられなくなった、あるいは行った先で亡くなってしまったとしても、それは母の人生ですから、私は後悔しますけど、でもダメとは言わない。母の好きにしたらいいと思っています。
そのくらい腹をくくらないと、外には出られないと思います。
そんなにしおかさんでも、ストレスがたまり、つい母親に対して強い言葉をかけてしまうことも。そんなときは、気持ち切り替えのための“息抜き”として、ウォーキングやランチをしてみたり、野菜などを龍の形に掘る「カービング」などをしているといいます。
にしおかすみこ:
自分の時間というのは、なかなか頑張って作らないと作れないんですけど、やはり自分の時間を大事にして、常に元気でいることが大事かなと思います。
MC谷原章介:
誰かのために、相手のためにで、「自分が犠牲になっている」みたいな思いって、そう思っていなかったとしても、「ために」が「せいで」に変わることもあるかもしれないじゃないですか。
介護と自己実現を両立させるために大事にしていることはなんですか?
にしおかすみこ:
とにかく、自分を優先ということですね。ちょっと病んだらすぐ戻すという。すごい病むと戻ってこられなくなるから、こまめに元気を確認すると。
友達にいっぱい愚痴を聞いてもらったりもしています。
これからも続く生活「とにかく自分の元気に気をつけて」
要介護認定の申請後、調査員が訪れる際に、母親が普段より元気に見せたり、あえてぼけたように振る舞うことを危惧した、にしおかさん。
そこで、支援センターの職員からアドバイスをもらい、日常で困っていることを箇条書きにメモをして調査員に渡すことにしたといいます。
にしおかすみこ:
“見えを張る”ということは、あるあるだから、本当に困っていることを箇条書きでメモに書いてこっそり職員さんに渡したらいいよと。そうすると正しい判定が出やすいと。
――要介護認定1を受けたときはどんな気持ちの変化が?
それが、4年たって要介護1だったので、「母すごい頑張った!」って気持ちもあったし、毎日結構疲れるので「1~?」っていう気持ちもあったし。でも、要支援かなと思ったら要介護1だったから、まぁまぁそんなものかなと。不満は一つもないです。やはりメモを書いて出して良かったなと。
MC谷原章介:
4年間ずっとお母さまと暮らしたことで、刺激を与えるということが、認知症の進行度を遅らせたりもするので。ただ、今4年ですけどもなかなか先は見えないし、終わりは望まないじゃないですか、家族としては。これから続く介護を、何を大事に生活していきたいと思っていますか?
にしおかすみこ:
今は家にいますけど、でもそれが正しいとも間違っているとも思っていないですし、施設を選択するでも、遠くから通うでも、自分の考えた選択しだし、私はもう全部捨てて、逃げてしまうというのも選択肢の一つだと思っているので、とにかく自分の元気に気をつけてと自分で思っています。
MC谷原章介:
縛られないことですね、「私がなんとかしないと」と。「私だけは絶対に逃げてはいけない」ではなく、どういう選択をしてもいいんだよと思うことは大事ですね。
にしおかすみこ:
本当に、頑張ろう!ではなくて、頑張らないようにしよう!とすごい思います。
(『めざまし8』 2024年12月5日放送より)
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