<並木彩華 コメント>
かすみという人物は、どこかベールに包まれていて、簡単には心の奥まで入り込めない子だと感じました。でもそれは、彼女がこれまでに傷ついてきた時間があってこそ生まれた距離感なんだと思います。
だから私は、その過去や背景をウソとして扱いたくなかったし、かすみのすべてを「本物」として表現したいと思いました。実際に、かすみのいた場所へ足を運び、目で見て、肌で感じることを大切にしました。彼女が選ぶ行動や、ふと口にする言葉の一つひとつが、決して嘘に見えないように。そのために、かすみと真正面から向き合う時間を何よりも大切にしていました。
かすみと似ていると感じたのは、本音を表に出すのがあまり得意ではないところです。なので、強く共感できて、少し冷たく見えてしまったり、クールに振る舞ってしまう部分は、本当に重なるところだと思っています。
一方で、決定的に違うと感じたのは「逃げる場所」の存在です。かすみは、自分がどこに逃げたらいいのか、その場所がどこにあるのかを、本人ですらわかっていないように感じました。そのせいで、薬やお酒に頼ってしまうのではないかなと思います。
私は、家族や友だちのおかげで、気持ちの発散の仕方を少しずつ知ることができました。でも、かすみはそれが不器用で、うまくつかめないまま、すべてを一人で抱え込んでしまう。その違いが、演じていても、客観的に見ていても、とても切なく感じる部分でした。
私の中で一番印象に残っているのは、薬やお酒に手を出してしまうシーンです。実際にそういう経験はありませんが、かすみにとっては、そうすることでしか、自分を思いきり解放できる術がなかったんじゃないかなと感じました。
お芝居は、日常の一瞬を切り取るものだと思っています。でも、私自身の日常には、薬やお酒が出てくる場面はなく、あの世界はとても非日常でした。その非日常を、どう日常に近づけるかを考えたとき、「感情を全部解放すること」が一番大切なんじゃないかと思ったんです。
頭で考えるよりも、かすみの気持ちに身を委ねて、抑えてきたものを一気に外に出す。その感覚は私にとって新しい挑戦で、役者として大きな学びにもなりました。大変でしたが、それ以上に、演じていて楽しいと感じられました。
