和田雅成 音楽人を演じるため「感情をのせたメロディ」を意識
――台本を読んだ感想を聞かせてください。
和田:かなり早い段階で台本をいただきましたが、1回読んだだけでは、理解できなかったというのが率直な感想です。ほぼセリフが入っている状態で本読みの日を迎えたんですけど、その状態だったからこそ、皆さんの声がスッと入ってきて。
自分が読んでいるときの印象と、実際にキャストの声で聞く印象がまったく違っていて、「美しいな」というのが第一印象でしたね。
崎山:自分が演じる役柄どうこうより、オルフェやエウリディケの目線でどんどん惹き込まれていって、小説のようであり、絵本のようでもある世界観に瞬時に吸い込まれました。
――演じる役の印象はいかがでしたか?
和田:オルフェって、すべての事柄が音楽でできているんです。例えば、恋人であるエウリディケと会話をしているときも自分の中では音楽が流れ、メロディを奏でている。
もちろん、エウリディケのことは心から愛しているんだけど、同時に音楽も大切なものとして自分の中に存在している。本当に“音楽の人”なんですよね。
「感情をのせたメロディってどういうものなんだろう?今、僕が抱えている感情はどんなメロディなんだろう?」というのを、常に意識しながら稽古をしています。
――白井さんからはどんなアドバイスがありましたか?
和田:「和田くんから生まれてくるものでいい」と言われました。その年代の人を生きようとするのではなく、現代を生きる自分たちの生き方でいいと。
例えるなら、1950年代あたりにおじいちゃんやおばあちゃんが着ていた服を引っ張り出して、現代の子たちが着ているみたいな感覚。
ギリシャ神話をもとにしたお話ですが、神話の時代ではなく、等身大の自分の心情に似たものを自分の中から引き出している感じ。自分の中にない場合は、新たに生み出せばいいと。
――崎山さんが演じるのは「危険でおもしろい男」と「地下の国の王」ですね。
崎山:危険でおもしろい男…。
和田:いい役名ですね(笑)。
崎山:名前ではない役柄を演じるのは、幼稚園でやった小人役以来です(笑)。「何をもって危険とするか、何をもっておもしろいとするか」を求められている気がします。
白井さんもおっしゃっていたんですけど、例えば、せつないシーンでせつない音楽を流すより、激しい音楽が流れているほうがよりせつなく感じるとか、そういうことなのかなって。
ギリシャ神話でのエウリディケは追手から逃げる最中、蛇に噛まれて死んでしまいますが、今回の作品でいうと、そのような描写はないので、僕が蛇になる瞬間があるのかもしれないし、逆に蛇を見つけて、エウリディケを助けようとしていたのかもしれない。
いろいろな解釈ができるので、稽古を重ねながら変わっていく部分、見えてくるものもあるのではないかと思って臨んでいます。
一方の「地下の国の王」はまったく想像できないんですよ。自分なりにこうしようという考えはあっても、白井さんの演出とどう合致するかわからないので。台本のト書きには「三輪車に乗っている」や「身長が3m」あると書いてあるんですけど、3mかぁ~って(苦笑)。
和田:つばさくんはいけるタイプだもんね(笑)。
崎山:お相撲さんが新弟子検査のとき、微妙に身長が足りなくて、頭にシリコンを入れてクリアするケースがあるけれども、それで3m…。
和田:2m50cmまではやったことがあるもんね。いけるな(笑)。
崎山:やりようは、いくらでもあるのかな。演劇だから、3mあるように見えるっていう表現もあるじゃないですか。いろいろチャレンジして、見つけていきたいと思います。