“白井晃めない(諦めない)”演出から演劇の可能性を学んだ

――和田さんは白井さんの演出を初めてうけるにあたって、どのような心持ちでしたか?

和田:まわりの方から「すごい、すごい」という評判を聞いていましたし、以前からご一緒してみたかった方というのもありますが、大谷翔平選手の言葉じゃないですけど「憧れるのをやめましょう」という心境です。

「この人はすごい人なんだ」と考えてしまうと、萎縮しちゃうんですよ。同じ作品に携わる方ですし、これまでご一緒してきた多くの演出家さんと同じ心境でぶつかりたいなと。

相手が白井さんだから自分の意見を言わないなんてことはありませんし、思うことがあればきちんとお伝えし、疑問があったら尋ねる。構え過ぎずに向き合いたいです。

――崎山さんは「サンソン―ルイ16世の首を刎ねた男-」(2023年)で白井演出を経験していますね。

崎山:白井さんって、本番に入っても稽古期間のような熱量で作品に向き合われる方なんです。だから、こちらもその熱量に応えたいと思いますし、そう思わせてくださる方。

「サンソン」では、我々若手俳優を対象に、足の先から頭まで神経を研ぎ澄ませるような歩き方や歩幅のとり方などの稽古をやったんです。そこまで教えてくださる方ってなかなかいないですよね。

本番が始まってもまだまだ表現を突きつめることができるという、演劇の可能性を教えていただきました。

――実際に稽古に入り、どのようなことを感じていますか?

和田:稽古期間が結構長いということもあって、トライ&エラー以上のことをやっています。大体の稽古って、出ハケ(舞台に登場することや退場すること)やミザンス(全体の配置)というものがあって、最後までざっくりと設定してからシーンを色濃くしていくのですが、今回はその日の最後にすべてをゼロにするんです。

そうしたうえで、「自分が動きたくなったら、どこへ動いてもいい」とエチュード(即興劇)みたいにやり、「OK!そのエネルギーがいいから今日はそれを持ち帰って」と進んでいく。

白井さんは動きよりも心情を大切にされる方なので、一瞬でも気が抜けた瞬間を見逃さない。初っ端からトップスピードで来てくださることがありがたいし、役に寄りそえば寄りそうほど深くなっていくので、今後どうなるのか自分でも楽しみです。

崎山:これはいい意味での表現ですよ。栗原さんが稽古場でおっしゃったのですが、「白井晃のあとには“めない”がついて、『白井諦めない』になる」と。

本当にその通りで、初めてご一緒した「サンソン」もそうでしたし、今作でも、ずっと作品や役のことを考えていらして、例えば、横に使っていたものを「今度は縦にしてみよう」と視点を変えてみたり、一旦、でき上がったものを壊して違うものにしてみたり、その先に何があるのかをずっと追求なさっている。

当然、時間はかかりますけど、そのぶん、より強固になるといいますか、作品に深みが加わっていく。体力的にも精神的にもエネルギーは消耗しますが、そこで生まれるものをもっといいものにしようという熱意を感じます。