――傑の甘くささやくような声が印象的です。どのようにしてキャラクターをつかんでいったのでしょう。 

最初は、監督やスタッフさんから「画面のここにタイムが表示されます。このシーンになったら話し始めてください」といったように、初歩の初歩ぐらいのアドバイスをいただいて、実際にやってみて。そこから徐々に「ここはもうちょっとささやくように」とか「ここは惑わすように」とディレクションしていいただきながら、キャラクターを作っていきました。つかみどころがない、ミステリアスな雰囲気で演じたいというのは意識しました。

現場ではみなさんが、とにかく褒めてくださいました。たぶん、右も左も分からない僕の緊張を和らげて、調子を乗せようとしてくださったのかなと。

――河森監督の印象はいかがですか? 

もともとアニメを見ることは好きで、河森監督の作品には“音楽と映像”というイメージを持っていました。実際にお会いしたら、とにかく物腰が柔らかくて、優しい方で。お人柄は穏やかだけれど、作品は攻めている、そういうギャップを感じました。

寺西拓人 アニメの芝居は「舞台や映像と全然違う」

――河森監督はもともと、寺西さんが舞台で見せる演技の幅広さに感銘を受けていたそうですね。今回、舞台の経験は活きましたか?

声だけとは言え、お芝居はお芝居なので、役を演じる上では活かせたと思います。ただ、ほかのお仕事と違い、キャラクターの口の動きに合わせて言ったり、セリフの間が決まっていたりと、いろいろな兼ね合いもあるので、舞台や映像でのお芝居とは全然違うと感じました。

――ほかに、アニメと舞台の違いや難しさを感じたところがあれば教えてください。

舞台稽古を重ねて役作りをしていくことに慣れているので、アニメはこんなに短い日数で録り終えるんだ、ということにビックリしました。監督から言われたことを、その場でいかに的確に表現できるか、瞬発力が求められます。初めてながら、とても刺激的で楽しかったです。

また、舞台や映像では、どんな役を演じていても姿形は僕ですが、アニメーションでは僕ではなくキャラクターそのもののビジュアルが映るので、没入感がより強いというか。そういう部分も楽しかったですね。

――河森監督は、寺西さんを「複雑な心情を魅力的に表現してくれた」と絶賛しています。自身の声が入った映像を初めて見たときは、いかがでしたか?

ちょっと恥ずかしかったですが、面白いな、楽しいなという気持ちになりました。あとから「ここはもっと、こうできたんじゃないかな」と思う部分もあったので、監督やスタッフさんの「良かったです」というお褒めの言葉に甘えることなく、これからも声優に挑戦したいと強く思いました。