<草彅剛&風吹ジュン 対談コメント(前編)> 

左から)草彅剛、風吹ジュン

――お2人は、映画『僕と妻の1778の物語』(2011年)以来の共演。お互いの印象は?

草彅:相変わらず、かわいらしくて素敵でやさしい方なので、風吹さんと一緒にいるとすごく安心します。今回の作品は、風吹さん演じる、こはるさんが第1話からとても重要な役割を担っているので、その役を全身全霊で演じている姿を間近で見ていると、やっぱりすごいなと思います。風吹さんの偉大さを感じますし、同じ役者として心からリスペクトしています。

風吹:そんなに褒められると、なんだか照れちゃう!私が、草彅さんと初めて共演したのは『降霊~KOUREI~』(2001年)という映画だったんですけど、当時20代後半で多忙を極めていた草彅さんは、空き時間になぜか床で仮眠されていて(笑)、その姿を見た私は、思わず「ワンちゃんみたい…」とキュンとしてしまったんです。

でも、いざ本番になると、まるで魂がスッと入ったように見事なお芝居をされて、「すごい」と驚いたことを覚えています。以来、大好きな役者さんとして、陰ながらずっと成長を見守ってきて、実は今回も、最初にお話をいただいたときはタイミング的にお引き受けするのが難しいかなと思っていたんですけど、主演が草彅さんと聞いて「それは、何としてもやらなきゃ」と。久しぶりにご一緒できて、本当にうれしいです。

草彅:風吹さんに褒めていただいて光栄です。僕、大丈夫ですか?ちゃんと成長できてますか(笑)?

風吹:大丈夫。とっても素敵ですよ。主人公の鳥飼樹さんは、激しい感情の起伏があるタイプではなく、草彅さんもどこか淡々と演じているように見えるけど、不思議なことに、見ていてまったく飽きないの。物静かな感じすらする話し方なのに、その言葉は受け取る側の人間に、メッセージとしてちゃんと届いている。そこが素晴らしいと思います。

草彅:僕も、今回の鳥飼樹はすごくおとなしい人物、過去の(草彅さんが主演した)“復讐シリーズ”に比べると、だいぶおとなしいテイストだなと思ったんです。でも撮影が進んでいくうちに、実はこの作品はすごく大きなエネルギーを持っている力強い作品なんだなと気づいて。

遺品整理と聞くと、シリアスなイメージを抱く方が多いかもしれないけれど、演じている僕自身はむしろ、1話ごとに感動を覚えています。毎回、遺品から亡くなった方の人生が見えてくるシーンがあるんですけど、そのシーンがすごく感動するんですよ。これはもう人間ドラマ。すごく重厚で大人のドラマだなと思っています。

風吹:本当にそうね。遺品整理=ただの終末ということではなく、“ロンド”というタイトルのごとく、この作品では、亡くなった方の人生が温かく、丸く描かれていると思います。死生観をこんなに温かくとらえた作品は、今までなかったんじゃないかと思うくらい。

それに、学ぶことも多いですよね。死生観はもちろん、人が亡くなったときのまわりの人の受け止め方まで、いろいろな情報を得ることができて、新しい意識が生まれるんじゃないかと思えるドラマです。

草彅剛「余命を宣告されても焦らずに、普段どおりに最後まで生きられたらいい」

――お2人は、娘の真琴(中村ゆり)に余命を伝えないと決めた、こはるの生き方に共感できますか?

風吹:こはるは愛に生きる人なので、会えばケンカばかりしてしまう娘でも、そこには母親としての愛情しかなくて、それが彼女の決意、ひいては“死に様”につながっているんだと思います。私にも娘がいるので、こはるに共感するところはあるし、愛する対象がいるからこそ、最後まで人生をまっとうできるんじゃないかしら。

草彅:そうですね。自分がこの世に別れを告げる日がわかっていて、そこから逆算してどう生きるかを考えられるならいいんでしょうけど、人間そうはいかないもの。だからこそ、自分がやりたいことに対して素直に生きたいですよね。余命を宣告されたから焦って何かをするわけじゃなくて、普段どおりに最後まで生きられたらいいなと思います。

そういう意味では、僕、生前整理はちょっとできそうにないかも。必要以上に部屋から物をなくすと、なんだか寂しくなりませんか?

風吹:ミニマリストになれるかっていうこと?私も仕事柄、特に衣装とかはなかなか捨てられないでいます。10年ごとに整理はしてるけれど、それでも増えていくのはしょうがないかな。でも、生前整理って、いい意味でクリエイティブな生活ができそうじゃない?

草彅:確かに、身動きはとりやすくなりそうですよね。でも、実は僕、一度ミニマリストを目指してみようと試したことがあって。やっぱり部屋に物があふれてると、ストレスになるじゃないですか。きちんと整理したほうが頭も整理されると思いますし。だから、1回全部なくしてみようと思って、家にあるものを次から次へと人にあげたんです。

でも、結局ダメだったんですけどね。結果、そのときはすごく清々しい気持ちになったんですけど、しばらくしたら同じものがまたほしくなっちゃって。「なんで、あれを手放したんだ!?」って、同じものをまた買い直し。そのとき、僕にはミニマリストは向いてないなって悟りました(笑)。

風吹:ちょっと、極端すぎたのかもしれないわね(笑)。

草彅:そうなんですよ。やっぱり、何事もさじ加減は大事です。でも、遺品整理人という仕事に関しては、普段の僕と少し重なるなと思う部分があったんですよ。

風吹:どういうこと?

草彅:僕、ビンテージや古着が好きで、自分が持っている服のしわとかを見て、「この人は農作業をやってたんだな」「これはマッチをすったあとだな」って分析するのが好きなんです。それが、遺品から亡くなった人の気持ちを汲みとる樹と似ているなと思って。

風吹:演じる前から、自然と役作りができていたということね。素晴らしい!

後編に続く

撮影風景
撮影風景