<ストーリー>
「ようこそ、ベルサイユへ」。
店のママ・上杉まりえ(宮崎美子)が、やさしい笑顔で出迎える。
東京郊外にある「介護スナックベルサイユ」。
客の大半は、要介護認定を受けた高齢者だ。

一見、どこにでもあるスナックのようだが、ここは立派な介護現場。
ボックス席では血圧測定が、ステージでは体操の指導が行われている。点滴をうってもらったり、とろみ剤入りのビールを飲んだり、介護が必要だった客がみるみるうちに生気を取り戻していく。ベルサイユには、魔訶不思議な世界が広がっている。

「今夜は、あのワインをご希望です」。
この日、やってきたのは常連客の菱沼五郎(片岡鶴太郎)。大衆演劇の元役者で、医師からもってあと1週間と宣告されている。まりえが提供するのは「魔法のワイン」。五郎の前におかれたグラスにゆっくりとワインを注ぐ。 「会いたい人はお決まりですか?」

ワインが飲めるのは生涯でたった一度、しかも一人一杯だけ。客は人生最後の夢を叶えたいと、注文するのだ。五郎が会いたかったのは、大衆演劇のトップスター市村雪之丞(清水美砂)。その理由とは…。
ベルサイユには、毎夜、魔法のワインを求めて客が訪れる。服飾デザイナー・安原すみえ(多岐川裕美)、 土木工事会社社長・本多伸夫(柄本明)、元新聞社論説委員・飯田園子(かとうかず子)…。

念願の再会を果たした客人たち。 長年の思いをせつせつと語り出すが、願いは叶うのか…。

「お客さん、あのスナック変ですよね?」 。客の送迎を担当する、21歳の大学生・神代大輝(杢代和人)は、店の不思議な現象に戸惑うばかりだった。

身体が思うように動かず不自由な思いをしているけれど、最期まで人生を楽しみたい――。そんなささやかな希望を叶える「介護スナックベルサイユ」まもなくオープンです!
