――プロデューサーとしては興行収入も気にせざるを得ませんね。

大沢:俳優としても、いつもイヤなものです。恐怖で眠れないんですよ。公開初日に大体の数字が出てくるので、それがキツい。

興行に携わる皆さん、配給の皆さんが集まってきて「これくらいの方向です」と伝えられるんだけど、俳優をしている人でこの日を「楽しい」と言える人はいないんじゃないかな。

自分たちの生み出した子どもが世の中から好かれているのか、好かれていないのかを目の当たりにさせられる恐怖の瞬間ですよ。

大沢たかお 中村蒼は「空気がきれいな俳優さん」

――現場で垣間見えたお互いの意外な行動や、新鮮な気づきなどはありましたか?

大沢:中村くんは誠実で真面目で、本当に素晴らしい人だと思います。そういう人間性の方はやっぱりいいお芝居をするし、いい役をとり込めると思う。日本にはなかなかいない、空気や発するエネルギーがきれいな俳優さんですね。

日本ってクセが強いことがいいみたいな風潮があって、それはそれでいいんだけれど、中村くんの場合は、純粋なエネルギーをもったまま仕事をし続けるんだろうなって。それは撮影中だけじゃなく、休憩時間など何かをしているときの横顔を観察しながらも感じました。

――中村さん、今の言葉をうけての感想を聞かせてください。

中村:観察されていたんですね(笑)。嬉しいです。自分のことは自分でわかりませんし、「この先、どうなるのだろう」など、最近そんなことばかり考えてしまって。

大沢:この先に対する不安をずっと言っているんですよ。言われているうちにこっちが不安になってきて、「いやいやいや、不安になるのは俺のほうが先だから」って(苦笑)。

でも、こういう性格だからこそ、不安に感じてしまうんだろうな。なぜなら彼は嘘がなく、真摯に生きている人だから、それが役柄に出てくるのだと思う。素晴らしいことだから大切にしてほしいと僕は伝えたんだけど、本人がとにかく不安がるんですよ。

中村:普段は誰かに悩みを共有することがほぼなく、自己解決してしまうタイプなのですが、大沢さんと長期間をご一緒することなんて滅多にない機会なので、将来の不安を打ち明けたところ「そう感じていない人のほうがおかしい。きっと、誰もが不安に思っている」と話してくださって、大沢さんから発せられる一言にかなり勇気づけられました。

大沢:それなのに「ごはん行こう」と言いながら、全然連絡がないんですよ。

――完成報告会で中村さんが話したサンドイッチのエピソード(※)のように、「今は体重制限をしている時期なのかも」などと考えてしまったのではないでしょうか。

※大沢さんが現場でおいしそうなサンドイッチを発見するも体重制限中だったため躊躇していると、近くに中村さんがいたので半分を食べてもらったというエピソード。

大沢:サンドイッチだって、彼は素直だから食べてくれるんですよ。本当は食べたくなかったかもしれないのに。

中村:いえいえ、嬉しかったですよ(笑)。これまでで一番おいしいサンドイッチでした。

『沈黙の艦隊 北極海大海戦』より

――では、中村さんからみた大沢さんの印象を聞かせてください。

大沢:僕の話はいいでしょ。

――ぜひともお聞きしたいです。

中村:人間としての豊かさみたいなものをお持ちで、それはきっと普通の人がなかなかできないことを経験してきたというキャリアが影響しているんでしょうけど、なんでもない日常をしっかりと生きていて、小さな幸せにちゃんと気づける、些細なことも拾い上げられるアンテナをずっと張っていらっしゃるんですよね。

芸能界にいるとどうしても業界関係者とばかり過ごしがちですが、大沢さんは撮影当時に行われていた選挙の速報をスマホで確認するなど、お芝居以外のことにも目を向けている。だからこそ、人間性が豊かだと思いますし、自分としても追いかけていきたいところです。

意外な一面でいうと、とてもフランクです。最近の若手俳優事情について話したり、他愛もないことでケラケラ笑っていたりする姿はすごく意外でした。

――中村さんの言葉をうけてどのように感じましたか?

大沢:年齢差もありますし(大沢さん=57歳、中村さん=34歳)、彼にしてみたら気を使うことも多いと思うんです。それは申し訳ないと思うけど、その空気感が役柄にも投影され、我々とリンクしてくると、『沈黙の艦隊』はより本物に近づくのではないでしょうか。

――めざましmediaのコンセプト“好きでつながる”にちなんで、それぞれ好きなものを教えてください。

中村:僕はラジオが好きです。

大沢:AM?

中村:芸人さんが話しているようなおしゃべり系です。ラジオって、テレビで見て好きになるより、さらに深く好きになれるイメージがあって、リスナー同士にも強いつながりが生まれる。ラジオを聞くことが僕のリフレッシュ法で、ストレス発散法でもあります。

大沢:以前は寝なくてもどうでもいいとさえ思っていたんだけど、最近は寝る時間がすごく大事になってきて、やっぱり睡眠をちゃんととったほうがいいパフォーマンスができるし、集中力も持続できる。

この数年間、ハードなトレーニングをやり出して、体力的に現場がしんどくなることもあるから、今はきちんと睡眠をとることを意識するようになりました。

オリンピック選手など、いろいろな方にお聞きすると、皆さん共通して睡眠の大切さを訴えるんですよ。自分の中での気づきもあって、心と体をちゃんとリカバリーして日々を過ごすことを今は大事にしています。

撮影:YURIE PEPE