板垣李光人さんと中村倫也さんが、お互いの印象と初共演の感想、声優を務めた映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』のアフレコの様子を明かしました。
終戦80年の節目である2025年に公開される本作は、武田一義さんによる同名漫画を原作としたアニメ映画。太平洋戦争中、日本の戦局が悪化していた昭和19年9月15日からはじまった「ペリリュー島の戦い」と、終戦を知らず2年間潜伏し最後まで生き残った34人の兵士たちを描いています。
漫画家志望の青年・田丸が任命されたのは、仲間の最期を「勇姿」として手紙に書き記す「功績係(こうせきがかり)」という特別な任務。南国の美しい島を舞台に、日米合わせて5万人の兵士が繰り広げた狂気の戦場で、仲間たちが次々と命を落とす中、必死に生き抜こうとする田丸たち。本作は、凄惨な日常をかわいらしいタッチでありながらも、圧倒的なリアリティで描きます。
心優しい主人公・田丸均を板垣李光人さん、田丸の頼れる相棒・吉敷佳助を中村倫也さんが演じます。
めざましmediaでは、本作で初共演となった板垣さんと中村さんにインタビュー。史実をもとにした戦争を描いた作品への向き合い方、アフレコで印象的だったこと、そして「2人でやってみたいこと」を聞きました。
板垣李光人「亡くなった理由を美化して描くことは“正しいこと”なのか?」
――まずは、主人公の田丸が任命された「功績係」という仕事について、どう思ったのか聞かせてください。
板垣:本作に携わるまで「功績係」という仕事については知りませんでしたが、仕事の内容を聞いた時には田丸と同じようなことを思いました。果たして、亡くなった理由を美化して描くことが「正しいことなのか?」という葛藤を抱きました。国のために戦い、命を落とすことが「良し」とされていた時代に、亡くなった人を待つ家族のために、その人の勇姿をどう届けるべきなのか。正解が分からないことですし、それを負う田丸にとっても非常に残酷なことだなと思いました。
中村:「白か黒か」で言えないものはいっぱいあると思っています。本作の冒頭のエピソードで、田丸と一緒に行動していた兵士が亡くなりますが、その「功績」を田丸が作り上げていく。「僕はもしかしたら、とんでもないことをしているのではないか」と、はたと考えるシーンがありますが、このエピソードが作品の入口に置かれていることで、「功績係」に対してどう感じる主人公なのか、作品の軸足がどこにあるのかを表しているなと思い、作りの丁寧さを感じました。
――三頭身のかわいいタッチで描かれたキャラクターが印象的です。
板垣:表情もデフォルメをされているからこそ、想像の余地があるというか、観客に委ねている部分が大きいと思います。凄惨な物語ですが、この絵とのバランスがあるからこそ、より響くのだろうと。
中村:描きすぎないことで描けることがあると思っています。リアルなタッチではないため、間口も広がって多くの人に見てもらえるのかもしれない。いろいろな表現方法がされてきた現代だからこそ、こういう手法というのはありなのではと思っています。
――田丸と吉敷にどのような魅力を感じましたか?
板垣:田丸は物語の主人公ではありますが、「先陣を切って行くぞ」というキャラクターではないですし、臆病で気の小さいところがあります。反対に、吉敷は技術もあり頼れる強さを持っている。田丸は吉敷と戦火をくぐりぬけて行くわけですが、後半になるにつれて吉敷の人間らしい部分や弱さも見えてきて、しっかりとお互いに支え合うようになります。吉敷の弱さや人間らしさに愛おしさを感じます。
中村:田丸の1番いいところは、自分が弱いと知っているところなのかなと。弱いからこそ周りをよく見ていて、「功績係」という役割を与えられた時に、「あの人はこういう人だったな」と描けたのではないでしょうか。吉敷が「功績係をやれ」と言われても、そこまで人のことを覚えていなそうな気がします。リーダーシップを発揮して最適な決断をする吉敷と、それを後ろから見ている田丸という、対照的なキャラクターの魅力が分けて描かれているのかもしれません。
――若い人たちが戦火に身を投じる葛藤が描かれています。演じていてどう感じましたか?
板垣:難しいですね…。自分たちの価値観も置かれている状況も田丸たちとは違いますし、想像に及ばないものがあると思います。だからこそ、原作と脚本を読み込んで、作品への思いを自分の中で何倍にもするしかできない。「想像し難い」というのが全てです。
中村:例えば殺人犯を演じる際に、僕らの仕事は「経験したことのないことも想像力で補い、物語の中で見られるような芝居をする」ことになります。この作品に対して誠心誠意リスペクトをもって、アフレコブースで出した声には、嘘じゃないものはあったのではないかと思っています。
――演じるうえで難しかったことはありますか?
中村:吉敷は、人に銃剣を刺したり、亡くなるアメリカ兵が近くにいたりすると動揺しますが、それ以外の部分では表情が大きく変わらないこともあり、淡々としているように見えます。でも、「若者らしくいろいろと抱えるものがあり、葛藤している」というディレクションがあったので、そのように演じました。
板垣:アフレコ初日は本当に難しかったです。田丸というキャラクターを声でどう表現するのかもそうですが、頭がパンクしそうにもなって、短いセンテンスを何回も録り直しました。でも、2日目以降は楽しめてスムーズにできるようになったので、最終日の3日目には、初日にパンク状態だったところを全部録り直しました。
「功績係」という仕事、戦火に身を投じる若者を演じて感じた難しさについて語った板垣さんと中村さん。続いては、初共演の印象について明かします。
