――中村さんは、プロデューサーでありながら艦長として圧倒的な存在感を放つ大沢さんを間近で見ていてどう感じましたか?

中村:現場での大沢さんは、艦長・海江田四郎としてとてつもなく大きな背中を僕たちに見せてくださったので、皆で必死にしがみついていったという感じです。

シーズン1に続いて、壮大なスケールで新作を撮るというのは本当に大変なことだと思いますし、見えないところで実に多くの皆さんがこの作品に尽力してくださっているのだと思いました。

中村蒼

大沢たかお 中村蒼ら、やまと乗組員は「意識が高いチーム」

――前作は1ヵ月半の撮影で艦内を7歩しか歩かなかったことなど、心身ともに微動だにしない海江田の姿が話題になりましたが、今回の撮影ではどんな思い出がありますか?

大沢:我々、やまとの乗組員が登場するブロックは潜水艦内のシーンなので集中して一気に撮るのですが、シーズン1のときと同じように、実際に潜水艦に乗っているような密閉感、圧力みたいなものを感じる撮影でした。

今回は中村くん演じる山中をはじめ、乗組員の人間性を少しずつ掘り下げていく流れになっていて、海江田が感情を顔に出さない分、乗組員の表情で何が起きているのかを観ている方に伝えなければいけない。

『沈黙の艦隊 北極海大海戦』より

しかも、乗組員は「怖い」や「危ない」なんていう感情を表現する言葉はいっさい口に出さず、口にするのは業務や任務に関することだけ。

皆が目の前の計器やモニターに向き合いながら、そのときの感情や思いを繊細に表現していく姿が、僕にとってはすごく新鮮で楽しい時間でした。

一人一人に説明しなくても、しっかりとお芝居をつくり上げてくる意識の高いチームで、経歴が長い、短いに関係なく、皆が同じベクトルで向き合っていることがとても有意義で、素晴らしい時間だったんです。

ただ、とても暑くて過酷な状況であったことは申し訳ないんだけど、そんなことを誰も顔にも口にも出さないから、改めて素晴らしいチームだなと感じました。

『沈黙の艦隊 北極海大海戦』より

中村:大沢さんがおっしゃったように、海江田さんの出す指示がどういう意味をもっているかを一瞬の表現に込めるお芝居にはやりがいを感じましたし、前作では登場しなかった乗組員の新たな表情が見られたことは僕にとっても印象的でした。

シーズン1、シーズン2と続く中で、海江田さんをはじめ、僕たちのポジションはほとんど変わりませんが、そこを、よりダイナミックに表現した吉野耕平監督ならではの映像センスには感心することばかりでした。

――海江田の右腕である山中をどのような心境で演じましたか?

中村:副長という立場は、乗組員みんなの精神的支柱でもあるとうかがったので、前作以上にやまとが危険にさらされる中、乗組員のちょっとした日常みたいなものが描かれる場面では、山中がもつ優しさが少しでも表現できたらという思いで臨みました。

――圧倒的なカリスマ性がある海江田を演じるうえで意識したことを聞かせてください。

大沢:原作を読んだときにまず感じたのは、海江田というのはある才能とある確信とある狂気を持ち合わせた人物ということでした。

制作にあたり、防衛省の皆さんや潜水艦の艦長などいろいろな方に対面し、話をうかがったのですが、印象的だったのは、常に一定でいるという艦長の佇まいについて。

海江田の場合は無表情でしたが、中には朗らかな艦長もいらっしゃるそうで、皆、何が起きても一貫して表情を変えないのだとか。どうして一定でいるのかというと、表情に出すとまわりの人たちが「何かおかしいぞ」など恐怖を感じてしまうから。異変に気づかせない、恐怖を感じさせないためにフラットな状態でいるのだそうです。

艦長としてあるべき姿、その表情に秘められた理由をうかがったときに、海江田四郎のイメージがなんとなく見えた気がして、そのことを意識してカメラの前に立っていました。

撮影:YURIE PEPE