産後なかなか元の体重や体型に戻らず、ダイエットしたいと思う人は多いでしょう。ただし産後の体にはさまざまな変化が起こっており、どんなダイエット方法が推奨されているのか気になりますよね。赤ちゃんの育児で忙しいママだからこそ、赤ちゃんに影響のない範囲で無理のないダイエットをしましょう。この記事では、産後のダイエットの効果的な時期や方法などを紹介します。

産後のダイエットはいつ始める?

産後のダイエットを始める時期は、体の状況に応じて判断することが大切です。

産後すぐは“産褥期(さんじょくき)”と呼ばれる、体が妊娠前の状態に戻るための大切な期間。この時期は運動や食事制限を避け、体をしっかりと休めることが最優先です。赤ちゃんの世話をしながら、体を整えてください。

1ヵ月健診で特に問題がなければ、少しずつ通常の生活に戻していきましょう。軽いストレッチや短時間のウォーキングなど、無理のない範囲ならダイエットを開始できます。

ただし、帝王切開で出産した場合は傷の回復を最優先とし、過度な運動は控えてください。腹圧をかけなければあまり問題ありませんが、無理のないように気を付けて生活しましょう。

授乳するだけでもエネルギーを消費する!

授乳中は自然とエネルギーが消費されるため、食事制限をしなくても体重が減る可能性があります。

女性の体は出産後に胎盤が排出されると、プロゲステロンという女性ホルモンが急激に減少。赤ちゃんが乳首を吸うと、プロラクチンというホルモンが分泌されて母乳が出るようになります。

母乳は血液から作られるため、ママが十分な栄養を摂ることが大切です。授乳中の1日の推奨摂取カロリーは約2500kcalとされており、通常よりたくさん食べても問題ありません。

極端な食事制限をすると母乳の出が悪くなり、赤ちゃんの成長にも影響を及ぼす可能性があるため、栄養バランスのよい食事を取るよう心がけましょう。

おすすめの産後ダイエットの方法

産後のママにおすすめの、無理なく取り組めるダイエット方法を紹介します。食事や睡眠、骨盤底筋トレ-ニングのポイントを理解し、健康的に体型を整えていきましょう。

バランスのよい食事と睡眠

産後の体型を戻しやすくするには、バランスのよい食事と十分な睡眠が欠かせません。

産後は赤ちゃんのお世話に追われ、自分の体調管理が後回しになりがち。特に初めての育児では、数時間おきの授乳や慣れない生活リズムにより、ストレスが溜まりやすくなります。

食事は、炭水化物・タンパク質・脂質の三大栄養素に加え、ビタミンやミネラルを意識的に摂取しましょう。授乳中はエネルギー消費が増えるため、必要な栄養をしっかり補うことで、健康的に体を整えられます。

睡眠は、細切れであっても取ることが大切。長時間の睡眠がとれなくても、疲労を軽減できます。

また赤ちゃんと一緒に添い寝をする際には、ママの寝返りで赤ちゃんに覆い被さることなどがないよう、安全を確保しながら休むようにしましょう。

骨盤底筋を鍛える

産後は、骨盤を支えている骨盤底筋を鍛えましょう。骨盤の歪みを整えることでぽっこりお腹への効果が期待でき、尿漏れ予防にもおすすめです。

骨盤底筋を鍛えるために、尿を我慢するように肛門周辺をキュッと締める動作を繰り返しましょう。ベッドで横になったままでもできるため、隙間時間に数十秒ずつ取り組んでみてください。

出産後、痛みがなければいつでも骨盤底筋のトレーニングを始められます。骨盤を支えるインナーマッスルは長期的な体型維持や健康に影響するため、継続して取り組みましょう。

産後ダイエットのポイント

産後ダイエットの際に押さえておきたい重要なポイントを紹介します。ママ自身や赤ちゃんの健康的な生活のために、内容をしっかり確認しておきましょう。

産後は自然に元の体に戻ろうとする時期

出産による体重の増加や見た目の変化は、体に起こる自然な現象です。産後の体は、時間をかけて元の状態へ戻ろうとします。自分の体の変化を認め、健康的な生活を続けて、焦らずに体型が元に戻るのを待ちましょう。

なお、骨盤ケアのために骨盤ベルトを使用するのは問題ありませんが、商品選びには注意が必要です。過度な締め付けを伴う骨盤ベルトは血流を妨げる可能性があるため、締め付けが強すぎない商品を選びましょう。

隙間時間にできることを無理なく行う

産後は赤ちゃんのお世話に追われ、まとまった時間を確保することが難しくなります。無理なくダイエットするには、隙間時間を活用するのがおすすめ。産後の体は妊娠前の状態に戻ろうとしており、軽い運動をするだけでも体重が落ちやすい状態です。

ジムに通う、ウォーキングするといった大がかりな運動ではなく、日常生活の中でできる“ながら運動”を取り入れましょう。生活の中で自然に取り入れられる動きを意識することで、体に負担をかけずにダイエットを進められます。

炭水化物の制限はしない

産後に体型を戻したいからといって、炭水化物を制限したダイエットはやめましょう。育児中は想像以上に体力を使うため、体の主要なエネルギー源である炭水化物が不足すると、疲れやすくなります。

特に授乳中の人は、栄養不足になると赤ちゃんにも影響する可能性があるため、極端な制限は避けてください。

ご飯やパン、麺類などの主食を適度に摂取しながら、バランスのよい食事を心がけ、健康的に体型を整えましょう。

脂質や刺激物は避けよう

乳腺が詰まる可能性があるため、脂質や甘いものを多く摂りすぎないようにしましょう。また、アルコールやカフェインは赤ちゃんの健康に影響を及ぼす可能性があるため、授乳前は控えてください。

刺激が強い食べ物、極端に辛い食べ物にも注意。胃腸に負担がかかり、下痢や胃痛の原因になることがあります。母子ともに健康的な生活を送るために、食事内容に気を配りましょう。

【アンケート】みんなの産後のダイエット方法は?

編集部では、全国の出産経験がある25~40歳の女性300人に“産後に関するアンケート”を実施。

“産後にダイエットをしましたか?”という質問に対し、“はい”と答えた人は107人(36%)、“いいえ”と答えた人は193人(64%)でした。産後は体調を整えることが優先されるため、無理にダイエットをしない人のほうが多い傾向があります。

また同アンケートでは、“産後のダイエットとして意識したこと”についても調査。1位は“食事制限”、2位は同率で“バランスのよい食事”と“運動”、4位は“母乳育児”、5位は“睡眠時間の確保”でした。

“食事制限”は約半数の人が回答していましたが、育児中はエネルギーを使うためやりすぎは禁物です。

産後のダイエットはバランスのよい食事や運動を中心に、体調や生活スタイルに合わせて行うことが大切。無理のない範囲で体を整えていきましょう。

この記事の監修者
勝どきウィメンズクリニック院長| 松葉 悠子

—プロフィール—

これまで周産期センターでの勤務を中心に産婦人科診療に研修、従事。東京大学医学部付属病院、日立製作所日立総合病院、恩賜財団母子愛育会 愛育病院などの勤務を経て、2015年に勝どきウィメンズクリニックを開業。2024年には晴海ウィメンズクリニックも開業し、理事長に就任。

— 経歴 —
金沢大学医学部医学科卒
東京大学医学部付属病院・日立製作所 日立総合病院・東京都保健医療公社 豊島病院・恩賜財団母子愛育会 愛育病院などに勤務