出産直後から足や手がむくみ、心配になった経験がある人もいるのではないでしょうか。産後のむくみが発生するメカニズム、産後のむくみの特徴や原因、改善方法などを解説します。受診した方がよいケースも紹介するので、自分の症状を確認してみてください。

産後のむくみの特徴は?

産後のむくみは、多くの女性が経験する一時的な体の変化です。産後のむくみは通常のむくみとどう違うのか、詳しく解説していきます。

産後のむくみのピークは出産直後から1週間

産後のむくみは一時的なものであり、出産直後から1週間がピークとされています。

個人差はありますが、むくみは自然に軽減していくのが一般的。1ヵ月以上続く人もいますが、1ヵ月健診で異常がなければ大きな問題はありません。

なお、帝王切開をした人は、手術中に輸液を投与する影響で水分をため込みやすく、むくみやすい傾向があります。

産後にむくみやすいのは足や指先

産後のむくみが特に現れやすいのは、足や指先です。

足がむくむと、靴が入らない、歩きづらいといった症状が出るケースがあります。足首のくびれがなくなり象の足のようになったり、靴下のゴム跡が長時間残ったりする場合も多いです。

指先がむくむ場合は、指が曲げにくい、手を握りにくいなど、日常の動作に影響を及ぼすケースがあります。また指輪を外そうと思っても抜けず、不便に感じることもあるでしょう。

産後太りとの違い

産後太りとむくみはどちらも体重が増える要因ですが、仕組みが異なります。

産後太りは、脂肪の増加による体重増加が特徴。一方、産後のむくみは血管から漏れ出した水分が体内に溜まっている状態を指します。

産後太りとむくみの違いを見極めるポイントは、皮膚を指で押したときの反応です。指で押した跡がなかなか消えない場合は、むくんでいると判断できます。

産後のむくみの原因

産後のむくみは、ホルモンバランスの急激な変動や体質の影響によって引き起こされます。なぜ産後に体がむくみやすくなるのか、詳しい原因を見ていきましょう。

ホルモンの急激な変動

産後のむくみは、ホルモンの変動によって水分の調節がうまくいかず、余分な水分や老廃物を排出しにくくなることが原因です。

妊娠中に分泌されていた女性ホルモンは、出産後に急激に減少。さらに、母乳の分泌を促すプロラクチンというホルモンが増えると女性ホルモンの作用が抑えられ、水分調節が難しくなります。

体質や妊娠高血圧症の兆候

産後のむくみは、体質や妊娠中の健康状態によっても影響を受けます。特に、妊娠中にタンパク尿やむくみの症状が現れる妊娠高血圧症と診断されていた人は、産後もむくみが残りやすい傾向があります。

産後のむくみに加え、血圧が高い状態が続く場合は要注意。むくみがひどく、日常生活に支障をきたすようであれば、1ヵ月健診を待たずに医師に相談しましょう。

産後のむくみ改善方法

むくみ自体は水分バランスの乱れが主な原因なので、生活全体の見直しが必要です。産後のむくみは自然に解消される場合が多いですが、セルフケアを取り入れると早めの改善が期待できます。

生活に取り入れやすい方法を実践しながら、産後のむくみを無理なく解消しましょう。

塩分に気を付けて水分を多めに摂る

産後のむくみを和らげるためには、塩分の摂取を控えつつ、適度に水分を補給しましょう。

塩分を過剰に摂ると、体の塩分濃度を薄めるために水分を溜め込みやすくなります。加工食品や外食の多い食生活では、知らず知らずのうちに塩分を摂りすぎてしまうため注意しましょう。

また、むくんでいるからといって水分を控えるのは間違った認識です。むくみは血管内が脱水状態に陥っているときに起こるため、適度な水分補給が不可欠。特に授乳中の人は、1日あたり2,000〜2,500mlの水分摂取が推奨されています。常温の水やカフェインを含まない飲み物をこまめに飲み、体内の水分バランスを整えましょう。

ストレッチやヨガ

産後のむくみを和らげるには、無理のない範囲でできる簡単なストレッチやヨガを取り入れるのがおすすめ。血流がよくなると体内の余分な水分や老廃物が排出されやすくなり、むくみの軽減につながります。

赤ちゃんのお世話をしながら、まとまった運動の時間を確保するのは難しいかもしれません。しかし、隙間時間を活用してこまめに体を動かすことで、血流を改善しやすくなります。

着圧ソックス

足のむくみが気になる人は、着圧ソックスの使用がおすすめです。足を適度に圧迫すると血流が促進され、余分な水分が足に溜まりにくくなります。

血栓の予防にもつながるため、長時間座りっぱなしや立ちっぱなしの時間が多い人は活用してみましょう。

ただし、ダイエット用の強い着圧ソックスや、腹部を締め付けるガードルの使用は避けた方がよいでしょう。過度な締め付けは血流を妨げ、むくみを悪化させる可能性があります。

適度な圧力で快適に使えるタイプを選び、日中や就寝時に着用してむくみの改善を目指しましょう。

【アンケート】産後にむくんだ時に効果のあった対策は?

産後のむくみ対策について、編集部では全国の出産経験がある25~40歳の女性300人を対象にアンケートを実施。

産後にむくみを感じた人は157人(52%)、むくみを感じなかった人は143人(48%)となり、半数以上が産後のむくみを経験していることがわかりました。

また同アンケートでは、“効果のあった対策”についても調査。
1位は“足を上げて寝る”、2位は“着圧ソックスを履く”でした。血流を促進すると足のむくみが和らぎやすくなるため、多くの人が実践しているようです。

3位は“軽い運動”、4位は“水分を摂る”、5位は同率で“塩分を控える”と“体を温める”でした。

実際に試して効果を感じた人が多い対策を参考にしながら、自分に合った方法を取り入れてみましょう。

医療機関を受診した方がよいむくみは?

産後のむくみは一時的なものであり、多くの場合、時間の経過とともに自然に解消されます。1ヵ月健診で問題がなければ、特別な治療を必要とするケースは少ないでしょう。

ただし、むくみとともに血圧の上昇がみられる場合は注意が必要です。血圧が下がらない、尿に細かい泡が立ち1分以上消えない(タンパク尿が疑われる)といった症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修者
勝どきウィメンズクリニック院長| 松葉 悠子

—プロフィール—

これまで周産期センターでの勤務を中心に産婦人科診療に研修、従事。東京大学医学部付属病院、日立製作所日立総合病院、恩賜財団母子愛育会 愛育病院などの勤務を経て、2015年に勝どきウィメンズクリニックを開業。2024年には晴海ウィメンズクリニックも開業し、理事長に就任。

— 経歴 —
金沢大学医学部医学科卒
東京大学医学部付属病院・日立製作所 日立総合病院・東京都保健医療公社 豊島病院・恩賜財団母子愛育会 愛育病院などに勤務