産後に肌荒れで悩んでいる人も多いでしょう。産後に起こりやすい肌トラブルは、体の変化と生活の変化が大きな要因です。まずは自分の肌荒れの原因を知り、ライフスタイルを見直してみましょう。子育て中に自分のことに時間を割くのは難しいこともありますが、無理なくできることからはじめることが大切です。
産後の肌荒れはなぜ起こる?

産後だからといって特別な肌荒れが起こるわけではありません。しかし、出産による環境・食事・睡眠状況の変化で肌荒れを実感することがあります。
特に、産後のホルモンバランスと生活環境の急激な変動、ストレスなどにより肌荒れが起こりやすくなるでしょう。
ホルモンバランスの急激な変動
出産すると、肌のツヤやハリを保つ女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少し、肌荒れの原因となることがあります。急激なホルモンバランスの変動は、産後に肌荒れしやすくなる原因の1つです。
女性ホルモンのバランスが戻ったサインは、出産後に再開する生理(排卵)。授乳していない場合は産後1〜2ヵ月で生理が再開しますが、授乳中は生理が再開しにくいです。
長い場合、生理が再開するまで産後6ヵ月〜2年かかる人もいます。
生活や環境の変化
育児による生活・環境の変化がストレスになり、肌荒れを起こすこともあるでしょう。
出産という大仕事を終えても、休む間もなくすぐに子育てを始めなければなりません。夜泣きのためにまとまった睡眠が取れず、家事・育児のストレスなどがたまっていきます。特に、赤ちゃんがいる生活を初めて経験する初産の場合は、慣れないことの連続です。
日々を無事に終わらせることに精一杯で、自分のスキンケアどころではなくなるママも多いはず。手短にスキンケアを済ませようとして肌に摩擦を与えてしまったり、小さな肌トラブルを見過ごしたりすると、肌荒れしやすくなります。
食事の内容
産後は赤ちゃんのお世話で忙しく、自分の食べ物はつい手軽なものになりがちです。しかし、脂質・糖質の多い食事やビタミン・ミネラルが少ない食事が続くと、どうしても肌荒れしやすくなります。
また、授乳期間中も食事の内容が育児に直結します。バランスのよい食事を作ることは大変ですが、できる範囲で気をつけてみましょう。
授乳している人は、カフェインやアルコール、刺激の強い香辛料などは母乳のため控えることをおすすめします。
便秘
産後の育児で忙しいと食事や睡眠がしっかりとれず、便秘になりがちです。便秘になると腸内で悪玉菌が増え、肌荒れを引き起こす原因になります。
いきみや硬い便によって、痔になってしまう場合もあるでしょう。トイレでいきむことなく便を出せるのが理想的です。
元々便秘になりやすい人は、食物繊維や十分な水分を摂るなど、産後もしっかり対策をすることをおすすめします。
産後の肌荒れ対策

産後も美容に気を使いたいけれど、忙しくてそれどころではないママも多いでしょう。ここからは育児中でも実践しやすい対策を紹介します。できることから始めてみましょう。
細切れでも睡眠をとる
睡眠不足は、肌荒れだけでなくストレスや憂うつな気分にも関係します。まとまった睡眠時間が確保できなくても、細切れの睡眠でよいので休息を心がけましょう。
厚生労働省は、成人の適正な睡眠時間として「少なくとも6時間以上」を推奨しています。まとめて6時間以上睡眠がとれない場合には、以下の方法で細切れにでも睡眠をとってみるのがおすすめです。
・赤ちゃんの安全を確保しながら一緒のタイミングで寝る
・パートナーや親にみてもらう間に寝る
・自治体のシステムなどを利用する
夜泣きが激しい赤ちゃんも、生後1ヵ月程度で徐々に長く寝るようになります。赤ちゃんの睡眠リズムは次第に整うので、あまり思い詰めないことも大切です。日中は明るくして夕方以降は暗くなるように部屋の明かりを調整し、赤ちゃんの睡眠リズムを作ってあげましょう。
バランスのよい食事をとる
バランスのよい食事は、ママの体や肌、母乳に必要な栄養を補給するためにもぜひ意識したいポイントです。
三大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質)をバランスよく摂りながら、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維を意識した食事を心がけましょう。食物繊維をしっかり摂ると、便秘対策にもつながります。
特に授乳している場合は、普段より多めのカロリーを摂取しても問題ありません。
バランスのよい食事が難しい場合は、マルチビタミンなどのサプリメントで足りない栄養を補っても大丈夫です。妊娠中にもよい葉酸のサプリメントやマルチビタミンのサプリメントを、産後も飲み続けてもよいでしょう。
肌の保湿をしっかり行う
産後は、赤ちゃんのお風呂と保湿ケアを優先してしまって、自分のスキンケアは疎かになりがちです。
肌のバリア機能は乾燥すると低下するため、少しでも乾燥する時間を作らないように保湿を心がけましょう。
お風呂上がりや洗顔後はすぐに化粧水や保湿クリームを塗れるよう、あらかじめ準備しておくのが大切です。保湿スプレーを部屋に置いておき、こまめに顔に吹きかけるだけでも保湿できます。
ピーリングなどの刺激の強いスキンケアは、産後の肌が敏感な時期には避けた方がよいでしょう。
肌荒れがひどい場合は皮膚科へ
肌荒れが長引いてストレスを感じたり、日常生活に支障が出たりする場合には、皮膚科の受診がおすすめです。
皮膚科では、産後であることや授乳中かどうかを必ず伝えましょう。
皮膚科では炎症を抑えるためにステロイドの塗り薬が処方されることがあります。産後にステロイドを塗ることは特に問題はありませんが、赤ちゃんに薬がつかないように注意しましょう。
この記事の監修者
勝どきウィメンズクリニック院長| 松葉 悠子

—プロフィール—
これまで周産期センターでの勤務を中心に産婦人科診療に研修、従事。東京大学医学部付属病院、日立製作所日立総合病院、恩賜財団母子愛育会 愛育病院などの勤務を経て、2015年に勝どきウィメンズクリニックを開業。2024年には晴海ウィメンズクリニックも開業し、理事長に就任。
— 経歴 —
金沢大学医学部医学科卒
東京大学医学部付属病院・日立製作所 日立総合病院・東京都保健医療公社 豊島病院・恩賜財団母子愛育会 愛育病院などに勤務