産後の抜け毛は、多くの女性が経験する症状です。手で髪をとかした際に大量の抜け毛があったときの衝撃は大きいでしょう。ここでは、産後に大量の抜け毛が起きる原因を解説します。また、毛が抜ける時期や再び生えてくるかなどの解説、抜け毛の対策も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

産後の抜け毛の特徴

産後の抜け毛は“分娩後脱毛症”、“産後脱毛症”と呼ばれる出産後特有のもの。妊娠から産後にかけて女性ホルモンの変動で、産後に一気に抜けるのが特徴です。

もともと抜ける予定だった髪が妊娠中に抜けず、産後にまとめて抜けているだけなので、薄毛になっているわけではありません。

産後2〜3ヵ月で抜け始めることが多い

個人差はありますが、産後2〜3ヵ月頃から抜け毛が多くなります。

1日50〜100本の抜け毛は正常とされていますが、産後の抜け毛の場合は100本以上抜けてしまい、普段より多い抜け毛に驚くことになります。

しかし、これは妊娠中に抜けにくくなっていた髪が一気に抜けてしまっただけです。実際に産後の抜け毛は多くの人が経験するため、心配しすぎないようにしましょう。

産後3〜6ヵ月がピーク

抜け毛は産後6ヵ月くらいから落ち着き始めますが、産後3〜6ヵ月の間は大量の抜け毛が発生する可能性があります。

この頃には赤ちゃんもハイハイや伝い歩きができるようになり、床に落ちる抜け毛に自然と目がいってしまうママも多いでしょう。

産後6ヵ月〜1年で落ち着く

産後3〜6ヵ月のピークを迎えた後はヘアサイクル(毛周期)が正常に戻るため、抜け毛の量は徐々に減少していきます。

ほとんどの場合、産後1年くらい経過すると大量に髪が抜けることがなくなるため安心してください。

産後に抜け毛が起きる原因

産後はシャンプーしただけで排水口が抜け毛だらけになったり、手で髪をとかすだけでごっそり毛が抜けたりして、ショックを受けた人もいるでしょう。

産後に多くの人が経験する抜け毛はなぜ生じるのか、その原因を解説します。

妊娠中の女性ホルモンの影響

産後特有の抜け毛である“分娩後脱毛症”、“産後脱毛症”は、妊娠中の女性ホルモンの変化が影響しています。

髪には、成長期から退行期、休止期を経てまた成長期へ戻るヘアサイクル(毛周期)があります。成長期に髪が生えて太く長く成長し、退行期で成長がストップして髪が自然と抜ける休止期に入るという流れです。

妊娠中は、女性ホルモンの働きによって成長期が通常より延長されるため、本来休止期に入って抜けるべきだった髪が抜けずに頭皮にとどまります。

産後に女性ホルモンが急激に低下すると、頭皮にとどまっていた髪が一斉に休止期に入るため、大量の抜け毛が発生するという仕組みです。

ストレス

産後の抜け毛の大きな原因は女性ホルモンの分泌量の変化ですが、産後のストレスによって悪化する可能性も少なくありません。

出産による体への大きな負担と、慣れない育児や睡眠不足がストレスとなり、産後の抜け毛を悪化させることもあります。

特に、授乳している人は食事と水分摂取がしっかりできていないと、栄養・カロリー不足になりがちです。頭皮や髪にまで栄養が行き渡らなくなると、抜け毛が悪化してしまうでしょう。

無理なダイエット

授乳をしていないママでも、産後のダイエットをがんばりすぎてしまうと栄養不足になりがちです。必要な栄養が頭皮や髪にいかなくなり、産後の抜け毛を悪化させる原因になります。

栄養不足は髪だけでなく、授乳中であれば赤ちゃんの発育にも悪影響を及ぼす可能性があります。特に糖質制限のような無理なダイエットをしないように、健康第一で過ごしましょう。

産後の抜け毛対策

産後の抜け毛は女性ホルモンの影響が大きいため、ある程度は仕方ありません。それでも抜け毛を見るたびに心配になってしまうなら、生活の中でできる対策をしてみましょう。

セルフケアを試してみても心配な場合には、早めに皮膚科を受診するのがおすすめです。

栄養バランスのよい食事をする

産後にかかわらず常に意識したいところですが、三大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質)とビタミン類、ミネラル類がまんべんなく摂れるバランスのよい食事が大切です。

髪や頭皮の主成分はタンパク質ですが、産後は母体の回復と母乳づくりに栄養がとられるため、どの栄養素もバランスよく摂りましょう。

睡眠の質を上げる

産後は赤ちゃんの夜泣きもあり、どうしてもまとまった睡眠がとれません。睡眠不足に悩まされるママも多いでしょう。

睡眠中に分泌される成長ホルモンは、髪の成長にとても大切。睡眠不足が続くと髪もなかなか育ちません。

細切れの睡眠でもよいので、睡眠の質を上げることで髪を育てましょう。

低刺激のシャンプーを選ぶ

産後は女性ホルモンのバランスが大きく変化するため、肌荒れを起こしやすいとされています。頭皮の健康のためにも、できるだけ低刺激のシャンプーを選ぶとよいでしょう。

洗浄成分がマイルドなアミノ酸系シャンプーは、頭皮への刺激も少なめです。また、ヘアケアとして女性用の育毛剤を使用するのも問題ありません。その際は、育毛剤が赤ちゃんにつかないように注意してください。

抜け毛のピークとされる産後6ヵ月以上が経過しても抜け毛の量が気になるようなら、1度皮膚科を受診してみましょう。

【アンケート】産後の抜け毛に効果のあった対処法は?

全国の出産経験がある25~40歳の女性300人に“産後に関するアンケート”を取ったところ、産後の抜け毛を経験した人が多いことがわかりました。

産後に髪が大量に抜けたと回答した人は、300人中194人(65%)。106人(35%)はそのような症状はなかったようです。

同アンケート内で“産後に抜け毛があった”194人に“効果のあった対策は?”と聞いたところ、118人が“特に何もしていない”と回答しました。

その他、“バランスのよい食事をとる”“ストレスをためない”“シャンプーを変えた”などの声もありました。

産後の抜け毛に驚くこともありますが、しばらく経つと抜け毛はおさまります。過度に心配せず、必要に応じてセルフケアをしてみましょう。

この記事の監修者
勝どきウィメンズクリニック院長| 松葉 悠子

—プロフィール—

これまで周産期センターでの勤務を中心に産婦人科診療に研修、従事。東京大学医学部付属病院、日立製作所日立総合病院、恩賜財団母子愛育会 愛育病院などの勤務を経て、2015年に勝どきウィメンズクリニックを開業。2024年には晴海ウィメンズクリニックも開業し、理事長に就任。

— 経歴 —
金沢大学医学部医学科卒
東京大学医学部付属病院・日立製作所 日立総合病院・東京都保健医療公社 豊島病院・恩賜財団母子愛育会 愛育病院などに勤務