今や、すっかり仮装祭り的なイベントとして認知されているハロウィンだが、本来は魔除けの祝祭だった──なんて説明するのは、野暮な話。ともあれ、密を避けたいご時世だけに、少なくとも今年の10月31日は仮装して繁華街に繰り出すのは控えるべきか。浮かれて騒いだ日には、それこそバチが当たりそうな予感さえある。

そんなの迷信だろ、と思う気持ちもわからないではない。けれども、時に摩訶不思議なことが起こったりするのが、この世界だったりもするのだ。

そんな体験をした人たちの話をドラマで見せていく『ほんとにあった怖い話 2020特別編』が、まさにハロウィン=10月31日の夜にオンエアされる。言わずもがな、20年超の歴史を誇る“リアルホラーエンターテインメント”。今年は2本の新作&視聴者からリクエストの多かった「もう一度見たい名作」のリマスター版、という構成と相成った。

このレビューを書くにあたって、ひと足先に新作を見せてもらったのだが、今回も全編に安定の怖さが漂う(と表現するのも妙ではあるが)。さらに言うなら、それぞれが別個の心霊体験でありながら、どこかで連作的にリンクしているように思えて、そこにゾワゾワッと背筋を抜けていくような恐怖を感じずにはいられなかった。

上白石萌音の等身大たる実在感と、片岡愛之助の浮世離れしたたたずまい

まずは、上白石萌音が工務店の現場監督に扮した「あかずの間を造った話」。宴会場を改築したいという老舗旅館の依頼を受けた佐々木彩(上白石)だが、現場へ行くと居丈高な設計士・木島宗次(片岡愛之助)が待っていた。彼から渡されたのは、三重の廊下で取り囲まもれた和室、すなわち“あかずの間”の設計図だった。不審に思いながらも工事に取りかかるが、職人が体調を崩すなど、不可解な出来事が連発する。

改修工事が終わり、木島に最終確認を任された彩は、「くれぐれも和室を開けて見ないように」と忠告されたにもかかわらず、禁を破ってしまう。好奇心から襖を開けた彩だったが、その光景に思わず息をのむ。古くから、“そういう部屋”が存在してきたと言い伝えられてはいるが、なかなかお目にかかれるものじゃない。

ある種、都市伝説と化してもいる“あかずの間”だが、この話が興味深いのは、災いが起きた部屋を封印するのではなく、わざわざ新設するところにある。その目的が呼ぶことになる思わぬ展開と結末が、『ほん怖』ならではと言えるだろう。また、上白石の持ち味である等身大たる実在感と、片岡愛之助のどこか浮世離れしたたたずまいのコントラストも印象的。一見、混じり合わないように見える彩と木島の関係性が変化していくさまも、注目点のひとつだ。 

岡田健史が端正な顔を惜しげもなく崩し、芝居の幅広さを証明

続いて、岡田健史がメインを務める「訳ありのカラオケ店」。いわくつきの物件であるカラオケ店で働く大野陽平(岡田)の身のまわりでは日々、奇妙な現象が起こっていた。ある夜、元店員の吉岡翔(亜生/ミキ)が客として訪れ、「後から連れが来る」と大野に伝えると、先に部屋へと入っていく。しばらくすると、吉岡のいる部屋へ通してほしいと長い髪の女がやってくるが、彼女はただならぬ雰囲気を漂わせていた…。

今回の新作では、オーソドックスな“怖い話”と言えるかもしれない本作。見どころのひとつは、誰もいないはずなのにヌルッと手で触られた時におののく、岡田健史の表情だろう。作品ごとに新たな顔を見せてくれる彼だが、『ほん怖』でも恐怖と直面して不安げに感情を表出させる場面では、端正な顔を惜しげもなく崩し、芝居の幅広さを証明。役者としての成長線を見ることができるという意味でも、ファンにはうれしい一篇となっている。

土曜の夜だけに、ハロウィンで騒ぎたい人が多々いることは想像に難くない。が、今年はグッと我慢するのが吉。テレビをお供に秋の長い夜を過ごすのも、オツじゃないか。

text by 平田真人