実は今、岡山の大学が開発した、特殊な「水」による、画期的な養殖技術が話題なんです。
その驚きの特徴が…
横山ルリカ情報キャスター:
同じ水槽に金魚(淡水魚)とニモ(海水魚)がいるんですけど一緒に入れて大丈夫なんでしたっけ?
本来ありえない、淡水魚と海水魚が一緒に生息できる魔法のような水。
この魔法の水が、水産養殖業の新たな光となるかもしれないのです。
“魔法の水”で養殖「おかやま理大うなぎ」
やってきたのは、岡山市内にあるスーパーマーケット。店内の鮮魚売り場、ここで人気なのがうなぎ。そこには「理大」の文字が!
実はこれ、岡山理科大学が養殖したもので、蒲焼き1尾で約3000円。
横山ルリカ情報キャスター:
立派なうなぎですね。しかも特上って書いてますよ。
株式会社グランドマート 取締役 岡本和恵さん:
毎年この時期になったら販売を開始して、皆さん楽しみに待っている商品になります。
一体どういうものなのか、一般的な養殖うなぎと食べ比べてみました。
おかやま理大うなぎは…
横山ルリカ情報キャスター:
身のぶ厚さが全然違いますね。くさみが全く感じられない。
このおかやま理大うなぎを、スーパーに買いに来たお客さんも。
客:
くさみがないので子どもも喜んで食べてくれます。
一味違う岡山理科大学の養殖。その技術とはどのようなものなのか? 特殊な養殖技術を開発したという、山本俊政准教授の研究室を取材!
魚の生存率アップも!「好適環境水」
早速、養殖の様子を見せていただきました。
岡山理科大学 生命科学部 生物科学科 山本俊政准教授:
これニホンウナギが入っています。
横山ルリカ情報キャスター:
たくさんうなぎが泳いでますよ。とっても元気そうですね。
山本俊政准教授:
うなぎはますます資源が希少になってきてシラスウナギがなかなか取れない。特にアジアでは減っていますね。
国内のうなぎ生産量は右肩下がり。約40年で半分以下にまで落ち込んでいます。
絶滅危惧種にも指定されるニホンウナギ。そんなウナギにも有効だという新たな養殖を可能にしたのが、この水。
山本俊政准教授:
好適環境水って名前をつけました。
“魔法の水”とも呼ばれ、注目されている「好適環境水」。
山本俊政准教授:
あらゆる魚がストレスもなく早く大きくなって、薬にも頼らないでコンスタントに旬の魚を育てることができます。
一般的なうなぎの養殖は農業用ハウスの池で行うことが多く、水の汚れなどが原因でうなぎが病気になることがあるといいます。しかし、この好適環境水を使えば、魚が病気になりにくく、生存率が高くなるんだとか。
山本俊政准教授:
水にも臭いがついてないし、うなぎに泥臭さがつかない。非常に食べやすいうなぎです。ありがたいことにこのうなぎうまいっていう意見がね、たくさん寄せられています。
さらに、大学内にある水槽では、なんと淡水魚の金魚と海水魚のカクレクマノミが同じ水槽で泳いでいました。
山本俊政准教授:
淡水魚と海水魚が一緒に入ってます。好適環境水はこれができる。
どうやって、この好適環境水を作るのかというと…
山本俊政准教授:
主なものはナトリウム、カリウム、カルシウム。ある一定の量を水に混ぜて入れる。
粉末を水に入れて混ぜるだけで完成。このナトリウムやカリウムなどの濃度を調整し、淡水魚、海水魚、どちらにも適した水を作り出したそうです。
――淡水魚・海水魚どちらもが生きていける絶妙なところを探し当てた?
山本俊政准教授:
いろんな条件がありますから、砂漠の中の1粒のダイヤモンドを探すようなもの。
海を構成する60以上の様々な成分から魚の生存に不要なものは省いていったとのこと。人が飲むことも可能です。
この水を養殖に使うことで、海や川の水を引き込んだり運んで来ることもなく、どんな場所でも養殖が可能だといいます。
この好適環境水を使って、マグロやフグ、エビなど、様々な魚介類の養殖が行われ、現在は民間企業や各地の漁業協同組合などから注目が集まり、今後、利用が広がっていくと期待されています。
世界初!ベニザケの陸上養殖に成功
さらに、養殖が難しいと言われていたベニザケの陸上での養殖に世界で初めて成功。
ベニザケは生まれて数年間川で過ごしその後、海で約3年過ごすという生態。
山本俊政准教授:
淡水と海水を行き来してるんですが、ものすごく病気に弱いんですよ。好適環境水の魚病への抵抗力はこういったところが成果になっている。アニサキスというのは海由来の寄生虫なので、好適環境水で出荷まで行うということはアニサキスに感染するリスクはゼロになります。
本来、生で食べることが難しかったベニザケですが、養殖することでアニサキスなどの寄生虫に感染するリスクがなくなり、刺身でも食べられるようになったんです。
好適環境水を使った養殖は現在、岡山理科大とNTTが共同し、福島や宮崎などでも行われています。
2023年、福島ではこのベニザケが販売され、刺身など生食用のものが人気で完売。
さらに宮崎県では、世界最大級のハタ「タマカイ」の養殖が行われ、2024年2月に世界初の陸上養殖成功を発表。タマカイは主に熱帯域に生息する高級魚で、乱獲によってその数が減少。絶滅危惧種に指定されています。そんな希少なタマカイも養殖で誰でも食べられるようになるかもしれません。
山本俊政准教授:
安く高級な魚を作っていくというのはこれからどんどん始まる。海がなくても海の魚を育てて、いつでも旬、いつでも大漁。食料危機の切り札になればと思っています。
(『めざまし8』 2024年4月16日放送より)
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