脚本家の井上由美子さんが、火9ドラマ『さよならノワール』のキャストの印象や、作品に込めた思いを語りました。
本作は、警視庁西池袋署に新設された「犯罪被害者支援室」(※)が舞台の、警察ヒューマンドラマ。元刑事・黒木夏海(小池栄子)と心理学者・白石絵梨子(北香那)が、犯罪被害者や遺族らが再び人生の歩みを進めることができるように寄り添い、初動としての支援をしていく姿を描いています。
(※)警視庁内に実在する部署。本作では、警視庁西池袋署という架空の警察署の中に新設された設定。
井上さんに、本作の制作秘話や犯罪被害者支援室への印象、タイトル誕生の経緯、見どころなどをたっぷり聞きました。
犯罪被害者支援室の物語は過去に「時期尚早」と見送っていた
――本作が誕生した経緯を教えてください。
狩野雄太プロデューサー、河毛俊作監督と私の3人で「警察を舞台にした新しいドラマを作ろう」と集まったのが始まりです。捜査一課以外の部署を舞台にしたいと考え、いろいろ検討するなかで、これまでドラマではあまり取り上げられてこなかった「犯罪被害者支援室」を描く物語に辿り着きました。
私はこれまでたくさんのドラマを見たり、書いたりしてきましたが、刑事ドラマは犯人逮捕まで、法廷ドラマは判決までが主な舞台です。でも、その裏には必ず被害者がいます。その方人たちの心情や、事件の背後の出来事に焦点を当てた物語を書きたいと考えました。
――犯罪被害者支援室は、以前からあたためていたテーマだったのでしょうか。
随分前に一度、企画したことがありました。ただ、当時はそれほど知名度が高くなく、少し時期尚早かなと。
そこから時を経て、近年は交通事故の被害者支援が注目されるなど、支援の仕事に対して世間の関心が高まっていると感じます。2026年の今なら視聴者の方々にも受け入れてもらえると思い提案しました。
――そうした社会の変化をキャッチするために、日頃から意識していることはありますか?
私が意識しているのは一つ、アンテナを立てすぎないことです。脚本家やドラマ制作者の目でニュースを見ると、「これは受けそう」「話題になりそう」と、バイアスがかかってしまうからです。そうではなく、一人の女性として、純粋に気になること、知りたいことに目を向けたい。そう努力しています。なかなか難しいですけれど。
犯罪被害者支援室の仕事のほとんどは「話を聞くこと。忍耐が必要」
――ドラマ制作にあたり、犯罪被害者支援室の仕事について改めて感じたことはありますか?
実際に支援をされていた心理士の方にお話を聞いたり、考証の面でもお力を借りたりしながら制作を進めたのですが、人生を一変させるような悲劇に遭った人々に寄り添う、本当に大変だけれど尊い仕事だと率直に感じました。
印象的だったのは、被害者の方が自ら話すよう無理に促したり、こちらから積極的に働きかけたりするのではなく、時間をかけてでも自分の力で立ち上がるのを見守る、という仕事のあり方です。仕事のほとんどは話を聞くことと、待つこと。ものすごく忍耐が必要ですが、人がつらい時に本当に求めているのは、自分の話を聞いてくれる誰かなんですよね。
