――第2話で、犯人の男性が女性を口説くセリフをAIに考えさせる、というエピソードがありました。井上さんご自身は、仕事でAIを活用していますか?

調べ物で使うことはありますが、AIで調べた後に裏取りのために検索するので、かえって時間がかかることもあります。シナリオ制作にはまだ使ったことはありません。

『さよならノワール』第2話より

――AI時代の今、脚本家に求められるものは何だと思いますか?

あまりAIに詳しくないのですが、私が知る限り、現段階でAIが提案できるのは、過去の作品から学習したものが中心だと思います。ですから、これまでになかったアイデアや組み合わせ、描写を生み出せるのは、まだ人間だと思っています。ただ、そういう新しいものを生み出せば出すほどAIに学習されていくので、これからの時代は大変だなと思います。

私は30年この仕事をしてきて、同じ設定やセリフは書かないように意識してきました。時代が変わり、自分自身も変わっていくなかで、新しいものというのは必ずあります。そこを目指して、これからも書いていきたいです。でもどうでしょう、来年には「全部AIに任せた」と言っているかもしれません(笑)。

昨年放送のドラマ『愛の、がっこう。』がターニングポイントに

――井上さんが脚本を担当した、2025年7月期の木曜劇場『愛の、がっこう。』は大きな反響を呼びましたが、今の創作に影響していることはありますか?

『愛の、がっこう。』は私にとってターニングポイントになった作品です。誰もが応援したくなる“いい人”ではなくても、ドラマの主人公として魅力を感じてもらえるんだと、知ることができた。今回の夏海と絵梨子も、長所よりも欠点やネガティブな面をたっぷり持たせています。人間くさい、だから愛される、ということを大切に書いています。

――最後に、視聴者へのメッセージをお願いします。

このドラマには、さまざまな事件で傷ついた犯罪被害者が登場しますが、夏海と絵梨子がどんな寄り添い方をするかがポイントです。「話を聞く」といっても、聞き方は毎回同じように見えて実は違います。そこはスタッフとともに一生懸命作り込んだので、ぜひ注目してほしいです。

『さよならノワール』第3話より

「犯罪被害者支援室」と聞くと、真面目でシリアスな印象を持つ方も多いと思います。もちろん事件をディープに掘り下げる面はありますが、夏海と絵梨子のやり取りは見ていてとても楽しいです。フレッシュでエネルギーにあふれている2人だからこそ、人を救える。どうか「暗そう」と思わず、食わず嫌いせずに見ていただけると嬉しいです。

『さよならノワール』公式サイト

<『さよならノワール』最新放送回などはTVerFODで、期間限定で無料配信>